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朝の限定デザート3

「女神リリー様が困っているだろ。メイド長、それにお前たちも持ち場に戻りなさい」

「そうですよ。貴女達にはお仕事があるのですから、ここからは私と総長に任せなさい」



 いつの間にか第三王女が騎士団総長の隣にきていた。

 第三王女の発言もあり、メイド長率いる親衛隊は渋々持ち場に戻っていった。

 そして、騎士団総長と第三王女と城を出るまで一緒にいた。

 まあそういう訳で、二人と話していく事で打ち解け仲良くなったという事だ。

 そう! そこで、女神リリー様ではなくリリーちゃんと呼んでもらうことにしたのだ。



「お前たちは、下がって良いぞ」

「「「「「はっ!」」」」」



 騎士団総長の命令で、食堂に入ってきていた数名の騎士達が踵を返し外で待機。

 そして総長は俺を見据え緩りとした雰囲気に変わり、王家の紋章入の黄金プレートを渡してきた。



「リリーちゃん、大事なものを忘れていたぞ」



 そう言えば、王様から下賜されたものの中にあった気がする。

 でもアイテムボックスに入れる時に、紫の布に包まれていたから下に敷いている台だと思って気がつかなかったんだよね。

 なので、眼前に見えていた書状と紋章の入った革袋だけを指定して、アイテムボックスに入れたんだった。

 それに、無くても城に不自由なく入れから……

 城門前の歩哨さん達も、帰り際――「女神様、いつでもどうぞ」って言ってたからね。



「あはっ。私、おっちょこちょいな所有るから……」



 俺が、黄金のプレートを受け取るのを見た大商人達は慌てて逃げるように外に出ていった。



「ははは、確かにな」



 後で聞いた話だが、騎士団総長曰く――この黄金プレートを持つ者には、王族同等の権限が与えられる特別な物だったらしい。

 それに俺の名前が魔道具で刻まれており、魔道具の力により所持者を見極め、王家が所持を許す又は触れることを許されたもの意外は所持する事が不可能らしい。

 総長が俺にこのプレートを渡すために、自ら馳せ参じたのはそういった理由もあるとの事だ。



「騎士団総長さん、ありがとっ」



 俺が総長にお礼を伝えると、総長は笑顔で



「またな、りりーちゃん」



 と、踵を返そうとすると貴族の馬車が数台止まった。

 そして、貴族の婦人達が入ってきては一人一皿づつ注文していった。

 騎士団総長は貴族婦人達の往来が気になり、俺に話しかけてきた。



「リリーちゃん、私は城に戻らねばならないが……ここまで貴族が来ると、何か起こるかもしれない」

「そうなんですか?」

「私の部下を数名食事処の入口に配置させておくから、何かあったら伝えるといい」



 総長はそう言って、城に戻って行った。

 気がつくと、食事処が貴族の婦人達で溢れかえっており瞬く間にパンケーキが売り切れた。

 しかし、後から数名の貴族夫人達が来店しパンケーキを所望してきた。

 今日の分は全て売り切れたと伝えるが、大銀貨一枚出すからと所望する。

 夫人達がそれぞれ言い争い、最終的には小金貨一枚まで出すと言いだした。


 外に控えていた騎士団の説得もあり、事なきを得たのだが……

 それに宿屋初のデザートであり、限定品であると伝えないと収集がつかなくなる恐れもある。

 夫人達に丁寧に説明をし、改めて無い事を伝えると悔しがっていた。

 なので、明朝に百皿限定で出す旨を伝え一番早い来店客の訪れる時間を伝えると喜んで帰って行った。

 俺が入り口にいる騎士達にお礼を伝え、食事処に戻ってくると



「宿の一か月分の売り上げが、わずか一時間で……」



 と、キノットさんが呟き、ライムお姉さんは



「パパ凄いわよ。食事処(ウチ)でここまでの売り上げ何て、こんな事今までに無かったわ」



 と、燥いでいた。

 キノットさんは、ライムお姉さんに売上の事を言われ呟きが大喜びに変化した。

 しかし、思い出したかの様に材料費以外のお金を返してきたが俺は受け取らなかった。

 そうしていると、スノーとアイビーそれにシルクが眠そうに一階に降りてきた。



「皆さん、お早うございます。うにゃん」

「ワン、ワン」

『お早うございます』



 スノーとアイビーがキノットさん達に朝の挨拶をすると、キノットさん達もそれぞれスノー達に笑顔で挨拶をする。



「スノーちゃんアイビーちゃん、おはよう」



 キノットさんを見習うように、レモンちゃんもスノーとアイビーの側まで行って、



「スノーちゃん、アイビーちゃん、おはー」



 と言い、最後にライムお姉さんが笑顔で手を振って、



「スノーちゃんアイビーちゃん、お早うございます。よく寝れたかしら」



 と言った。

 スノー達は、ライムお姉さんの質問に答えるべく返事をする。



「うにゃん」

「ワン」

『はい』



 そして、少し遅れて眠そうなシルクが皆に挨拶をする。



「ふぁーあ。モニュモニュ……皆、おはよう」

「シルクちゃん、おはよう」

「シルクちゃん、おはー」

「シルクちゃん、お早うございます。眠そうね? 寝れなかったの?」



 ライムお姉さんの問いに、シルクが答える。



「ふぁー。よく寝れたわ。でも、寝過ぎたみたい……」



 キノットさん達は苦笑いしていた。

 うん。わかるよその気持ち。

 そういう俺も、シルクには苦笑いするしかない。

 俺はライムお姉さんに頼んで、お客様に見えない場所で先ほどの蜂蜜とジャムが一杯のパンケーキを出した。


 キノットさん達が朝食の後片付けを済ませ、シトロンちゃんを抱きかかえたレモンちゃんと共に来たので、暖かいロイヤルミルクティーとパンケーキをスキルで作りだし皆で楽しんだ。

 勿論、スノーとアイビー達が食べられる食事も忘れずに作り、モフモフしながら食べたのは言うまでもない。



「リリー様、美味しかったです。うにゃん」

「ゲプッ。相変わらずリリーの作る料理は異常ね。美味しすぎて止まらないわよ」

「ワン、クーン、ワオーン……ワン!」

『シルク、ゲップしながら文句を言うなら、食べなければ良いのに……太るよ!』


「五月蠅いわね。だって、美味しいのだから仕方がないでしょ」

「本当に二人共仲が良くて、名コンビね!」

「よくないわ!」

「ワン!」

『よくないです!』


 朝食の一時、俺はいつもと変わらない団欒と料理に舌鼓をうった。



「今日は王城で、冒険者学校の話を聞きにいくよ」

「はい、リリー様。うにゃん」

「ワン」

『はい』


「王城ね、了解。ふぅー、もうお腹いっぱい。でも、お腹減らしで城に行くのは丁度良さそうね」



 シルクのお腹は、今はち切れそうになっているが、ものの数秒で元に戻る。

 いつも思うのだが、食べ物の体積とシルクの大きさが噛み合っていない。

 そこだけが、妖精の王女シルクの不思議である……。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「リリー、あのパンなんちゃらって、美味しいわね」

リリー「シルク、パンケーキね。喜んでもらってよかったわ」

シルク「でもね、私あの量少ないと思うの」

リリー「シルク、私シルクだけ大皿にして十枚重ねでジャムと蜂蜜も沢山かけてあったよね?」

シルク「私なら、その二十倍は余裕で食べられるわよ?」

リリー「シルクが食べられる量出してたら、それ、もう大食い大会だから……」

シルク「皆、食が細いわね」

    俺は不可思議なシルクのお腹についてスノーに、調査依頼をおこなった。

    スノーなら、この世界の生物を全て理解しているからだ。

    しかし、未だに調査結果は不明。スノーも、調査を保留とした……

    って、シルクのお腹は未曾有の領域かっ! 

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