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草臥れた宿屋2

「シルク、どうして途中のセリフ知っているの?」



 と、疑問に思いつつもフカフカな毛並みに癒やされ、スヤスヤ寝息を立てるのであった。

 次の朝早めに目が覚めると、数日お風呂に入っていない事に気がついた。



「クンクンクン、スンスンスン。はぁー、凄くいい薫り」



 女神サラの身体(カラダ)は、汚れている感じが何故か全くしない。

 数日経っているのに、汗の臭いすらもしないし髪もサラサラのままだ。

 寧ろ良い香りがする。これも女神様の不思議な力なのか? 

 女神の身体(ウツワ)って、もしかして汚れない様にできているのかもしれない。

 序でに、スノーとアイビーも――



「先ずは、スノーね。クンクンクン、スンスンスン……。はうー、癒やされますー。もう一生、顔を埋めていたいわ。凄く良い薫り」



 スノーは仄かに俺の身体(カラダ)――もとい、女神サラの身体(ウツワ)の薫りがするのだ。

 ……俺の本当の身体(ウツワ)も、臭くないぞ。断じて! 

 だって、妹の撫子が毎日布団に潜りこんでくるぐらいだからな! 



「今度はアイビーね。クンクンクン、スンスンスン……。ふにゃー、仄かな汗の匂いがするけれど、またそこが……もとい、これくらいなら問題ないわ」



 俺とスノーは兎に角、アイビーも気にするほどではなかった。

 因みに、シルクは嗅いでいる所を見つかると面倒なので嗅がなかった。

 それにいくら妖精だとはいえ、女の子の匂いを嗅いだら……ダメ、ゼッタイ! である。

 しかし、やはり気分的にお風呂に入りたい。


 やはり、日本人はお風呂に浸かって、「ふぅー、極楽極楽」と、言いたいのだ。

 人によっては極楽極楽の前に、【はぁー】や、【あぁー】や、【あぁ】に濁点が付く強者な方々もいらっしゃるが――まあ、そういう事だ。

 俺は部屋から出てスノー達を残し、独りで一階に降りてくると丁度そこに宿屋の女将であるライムさんとばったり出会い抱きしめられた。

そして――



「ちょっとー何? 何なの? この、可愛らしい生き物は……」


 そう言って俺は、ライムさんに揉みくちゃにされる。

 俺がいつもスノーとアイビーにしている愛情表現のように――抱きしめられ、撫でられ、頬ずりされ、顔をお腹に埋められ、頬にキスをされる。

 流石に、耳をハムハムはされなかったが……人を相手にそうされると、流石に面映い。



「ライムお姉さん、くっ付きすぎですよ」

「ごめんねー」



 そうは言うものの、全く放してくれない。

 今朝はスノー達の薫りに頭がいっぱいで、魅惑の着ぐるみセットを着替えるのを忘れていたのだ。

 仕方なく、俺は抱っこされたまま訪ねてみる。



「ライムお姉さん。お早うございます。身体(カラダ)を洗いたいのですが、お風呂とか有ります?」

「ごめんねー。お風呂は貴族様位しか、使わない高級な物なの。冒険者ギルド近くにある、あの繁盛している大きな宿屋ですら無いのよ。私達はお外にある水場で水浴びするか、寒い場合はお湯を沸かして布で身体(カラダ)を拭くぐらいね」



 妖精の村でもそうであったように、やはりお風呂は裕福な貴族くらいしか入れないのか……残念。

 そういえば、シルクも妖精の王女だからお風呂が恋しいのかな? 

 アイビーは妖精王が引き取っていたから、お風呂に入っていたのかな? 

 妖精王の城(シルクのお家)でアイビーがアワモコ天使になっている妄想に浸っていると、ライムお姉さんに現実に戻される。



「今日は天気が良くて暖かいですし、お外の水場で私が洗ってあげようか?」

「えっ?」



 これは不味い……このままでは、ライムお姉さんに俺がアワモコ幼女にされてしまう。

 ライムお姉さんが――笑顔で、「いいよ。連れて行ってあげるわね」と言った。

 相変わらず俺は撫でられ、抱っこされたままだ。……逃げられない。

 宿屋の裏口から出て、俺は大きな裏庭の水場に案内された。

 俺を降ろすとライムお姉さんは、



「あーんもう! 私のバカバカ。身体(カラダ)を拭く布を忘れてきたわ」



 そう言って、急いでライムお姉さんが宿屋に戻る。

 ……ライムお姉さんのキャラ、変わってないか? 王の謁見の間でも感じたのだが、着ぐるみセットは王様まで虜にしていた。

 しかも寝惚け眼だった俺の頭を、完全に覚醒に導いたのが王様の髭だったのは、ちょっとしたトラウマになったよ。本当に……そういう意味では、恐るべし魅惑の着ぐるみボディーである。

 俺はライムお姉さんが宿に戻っている隙に、慌てて着ぐるみセットをアイテムボックスの洋服専用修復ボックスに収納した。

 宿から拭く布を籠に入れて持って来たライムお姉さんは、俺が着ぐるみセットを脱いでも手伝おうとしてきた。

 なので仕方なく、



「ライムお姉さん、自分で洗えるのでいいです」



 と言うと、少し名残惜しそうな顔をして、



「そう、残念ね。でも、仕事が有るから戻るわね」



 と言って、宿に戻って行った。ふー、やれやれ。

 外は寒いかと思ったが、ライムお姉さんの言うとおり日差しが心地よく暖めてくれるので寒くは無かった。

 俺は、そこに置いてあった自身より大きな盥に水を入れる。



「ひゃぁー! 水、ちびっと冷たい。でも今日はポカポカ日和だから、少し時間がたてば暖かくなるかも」



 俺はそう言って近くにあった椅子に座り、足をプラプラさせていた。

 今日は風もなく、暖かい日差しに下着姿でも心地よかった。

 暫し、盥の水が日差しで温まるまで待つ……

 着ぐるみセットを脱いだ時の下着は、着ていた着ぐるみセットの姿を模した絵柄がプリントされている。

 今日はアイビーの着ぐるみセットだったので、上の半袖シャツには前面にアイビーの可愛い絵柄がプリントされており、ショーツには後方に可愛い顔がプリントされている。



「そろそろ、暖かくなったかな?」



 そう言って盥に手を入れると、水浴びができる位には暖かくなっていた。

 俺は盥で水浴びをしながら考えた――数日泊まるなら、やっぱり汗を流せるシャワーが欲しい。

 それに、ゆっくり浸かれる風呂も欲しい。贅沢を言えば温泉も……。

 アイビーも神聖魔法で洗うより、ちゃんと石鹸で洗ってアワモコにしてお湯で洗い流してあげたい。


 何か、お風呂場でも作れる職は無いのかな? そう思い、ステータスの職をチェックする。

 すると、絶級建築士を見つけた。

 この職、もしかしたらお風呂だけじゃなくて建築物を作れるかもしれない。

 俺は職から絶級建築士を【マウスLV1】で選んで【キーボードLV1】でエンター――


 【システム 絶級建築士の全スキルをコンプリート 限界突破しました】

 【システム 絶級建築士の限界突破スキルが使用可能です】


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 【絶級建築士スキル】

   ・全スキルコンプリート

   ・建築物の構造強化

   ・建築スキルの能力向上

   ・建築物鑑定


 【絶級建築士限界突破スキル】

   -

   全建築創造スキル

   - 絶級建築創造

       ⇖【詳細】

         記憶にある又は空想した建築物等を完全再現し作成創造可能

         補助機能として大まかな記憶又は空想した物を

         ミニチュア模型として眼前に展開させ確認可能

         ※作成には大まかな材料を必要とする

         魔石により、あらゆる物を管理可能

         ※管理魔石及び細かい材料は魔力消費により作成創造可能


   特殊

   -

   全絶級建築士・限界突破スキル習得

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――


 俺の頭の中にスキル名が浮かぶ。その中の一つ【絶級建築創造】を選ぶ。

 そして、アクティブとパッシブにそれぞれスキルを追加する。


 【アクティブ】

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 【絶級建築士限界突破スキル】

   -

   全建築創造スキル

   - 絶級建築創造

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 【パッシブ】

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 【絶級建築士スキル】

   ・全スキルコンプリート

   ・建築物の構造強化

   ・建築スキルの能力向上

   ・建築物鑑定


 【絶級建築士限界突破スキル】

   特殊

   -

   全絶級建築士・限界突破スキル習得

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――


 よし、では早速スキルを――



「【【絶級建築創造】】」



 【システム ピピー 木材と鉄材が足りません】


 あれ? このスキルは細かい材料は必要としないが、一部の材料が必要なのか。

 まあ女神の身体(ウツワ)にある職だとしても、やっぱり万能ではないよね? ……たぶん。

 だから、仕方がないよね。うんうん。俺はそう納得して、木材は少し行くと森が有るので、城に行った序でに森の木を幾つか伐採しても良いか王様に聞いてみよう。そう思うことにした。


 でも、鉄はどうしようかな? ……まあでも、急を要する訳ではないし、また今度考えればいいかな。そう、気軽に考えた。

 そして身体(カラダ)を洗い終え、身体(カラダ)を拭いている時に勘考する――

 自身では見えているのだが、恐らく魔物を倒した時のように、幼女に優しい不可思議な光が遮っている筈だと……だって、ここ裏口から出たら丸見えだもん……。


 俺は、シュミーロの愛情セットボックスに手を入れて別の服を取り出す。

 大聖堂の最も天に近いドーム状のステンドグラスから光が差し込み、一枚の美しい羽が舞い降りる。

 すると、美しく真っ白な翼を持った大天使が、光と共に舞い降り俺の前に跪く。

 俺が前に出て右手を差し伸べると、大天使は手の甲に口づけをして翼で俺を覆い隠す。


 大天使が翼を開くと、修道ロリ服を纏った俺が出現する。

 っとまあ、俺の妄想演出は終了だ。

 この服も身体(カラダ)に力が漲る感覚がある。

 なんて言えばいいのか、攻守バランスのとれた感覚だ。


 修道ロリ服セット(赤・白色)は、白を基調とした修道服で黄金の縁取りと美しいレースがあしらわれている。首元には修道服にも差し支えのない、黄金の小さな十字架のネックレスが付いている。勿論下は、ミニであるにもかかわらず両方にスリットがある。

 そして、頭には鮮やかな赤いベールに黄金の縁取りと白のフリルが付いている物を被る事もできるようになっている。


 更にベールと同色の衣を上に重ねて羽織る様になっており、下は後ろ側から前方にかけて長めに足首まで隠すようになっている。

 しかし、前は全開しているので首元からミニスカートにかけて前側が白の修道服が見える様になっている。所謂、凄く可愛いコスプレのような修道服だ。

 そして、ベールを取ると髪型はワンカールになっていた。

 因みに、これにも伝説的神武具が付いている……。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 修道ロリ服セット      (赤・白色)       使用中 ●


 -【専用神武具】

    鎚 神鎚ミョルニル

 -【専用神武具】

    盾 アンキレー

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――



「ロリコンヤロウは、私を雷神にしたいのかっ!」



 居ないロリコンヤロウに、一人突っ込みをして考えた。

 そういえば、今日はお城に行く予定だ。色々な服に、この美しい容姿! 

 髪の色も変更できるから、今日は鮮やかな赤い色の服に負けない金髪にするのも悪くはないか。

 俺は髪の色を、美しく輝いている金髪にしてみた。



「うん、金髪美幼女の完成よ」

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「リリー、朝に私の香しい花の薫り……嗅ごうとしたでしょ?」

リリー「してないよ? スノーとアイビーの薫りを楽しんだだけよ?」

シルク「最近お風呂に入れていないのだから、やめてよね。クンクン、スンスン……ねえ、リリー正直に言って、私臭かった?」

リリー「シルク、大丈夫! 強力な神聖魔法で洗浄したからね」

シルク「臭かったんだ……リリー、私今から水浴びしてくるから!」

    大急ぎで、独り水浴びをしに向かったシルクであった。

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