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冒険者ギルド1(改)

 そうこうしていると、お昼近くに冒険者ギルドに着いた。

 俺はシルクに皆で入ると悪目立ちするからと、スノーとアイビーの事を任せる。



「シルク、スノーとアイビーのこと任せてもいい?」

「え? 何でよ?」

「だって、美しい妖精が冒険者ギルドに入ると目立つでしょ? それに、小さな虎と幼い狼も引き連れてると悪目立ちするかもですし」

「そうね。私みたいな高貴な美女が入る場所じゃないわね。リリーもたまには良いこと言うわね」



 スノーとアイビーには小声で、シルクが突拍子もない事をしでかさないよう見張るように伝える。



「スノー、アイビー、シルクの事は呉々もお願いね。シルクが初めての冒険者ギルドで、とんでもないこと仕出かされたら困るし悪印象は避けたいの」

「はいリリー様。うにゃん」

「ワオーン、ワン」

『承りました、リリー様』



 俺がギルドの入口に手をかけ扉を開けて入ると――

 カラーン♪ カラーン♪ 

 と、呼び鈴が鳴り、一斉に歴戦の風貌を漂わせる冒険者達が振り向き俺を睨んだ。

 しかし、次の瞬間冒険者達の顔が孫でも見るかのような優しそうな表情になる。

 そして、その中で強面の冒険者が一名やってくると俺に声をかけてきた。



「どうした、嬢ちゃん?」



 強面の冒険者が笑顔を向けてくるが、笑顔が余計に怖い。

 その笑顔……本物の幼女が見たら確実に泣くぞ。しかも、トラウマになるレベルだ。



「ここは嬢ちゃんが来る様な所じゃねえが、何か頼み事をしに来たんか?」



 強面冒険者の言葉は辿々しいが、優しさが感じられる。

 もう少しイケメンなら、モテたであろうに……たぶん。いや、責任はモテないがなっ! 



「えっと……冒険者ギルドの受け付けは、どこですか?」

「嬢ちゃん、まだ小せえのにしっかりと話せるんだな。偉いぞ。ほら、それならこっちだ」



 冒険者ギルドと言えば、強面の人が喧嘩を吹っかけて来るイメージだった――

 しかし、いい意味で期待外れに優しい人だった。

 俺が何も無い所で転ぶと、強面の冒険者を含めて数名が駆け寄る。

 そして「嬢ちゃん、大丈夫かい?」と言って助け起こしてくれるのだ。

 助け起こしてくれた後、再び席に戻るとまた飲んだり話したりしていた。

 強面の冒険者も、受付まで案内してくれた後――



「何か分かんねー事が有ったら、俺達に何でも聞くんだぞ」



 と言って、飲んでいる席に戻って行った。

 俺は冒険者ギルドの受付嬢と思われる、受付のカウンターに居る見た目が二十歳前半の綺麗なお姉さんに声をかけた。



「あのー、済みません。お姉さん、いいですか?」

「はーい。あれー? 誰もいなーい。おかしいなー?  誰かの声が、聞こえた気がしたのだけどー」



 どうやら俺の背が低すぎて、受付のお姉さんに姿が見えないようだ。

 俺はもう一度受付のお姉さんに気付いてもらう為に、今度はジャンプして話す事にした。



「済みませーん」


 ピョーン。


「綺麗な」


 ピョーン。


「受付の」


 ピョーン。


「御姉様ー」

「あれー? 空耳では無いよねー? でも、どこから聞こえてくるのー?」



 受付のお姉さんは、キョロキョロと周りを見るが俺に気づいてくれない。

 見かねた強面冒険者が、受付のお姉さんに伝える。



「ロベリア譲ちゃん、窓口の下で必死にジャンプしている小さな嬢ちゃんが居るから出てきてあげな」

「あー、そうだったのねー。ごめんねー、私気が付かなくてー」



 ロベリアが外のテーブルと窓口では、俺の背が低すぎてテーブルまで届かないという事で、冒険者ギルドの中に有るテーブルに案内してくれた。

 子供用の背の高い椅子を用意し、俺を抱っこして座らせてくれた。

 そして、ロベリアは俺の顔を覗き込むように見据えて、



「えっとー、お嬢ちゃんは今何歳かなー?」



 年齢を確認するのは、恐らく種族間の違いで見た目と年齢に齟齬が生じるからであろう。

 俺の年齢表示には五歳と表示がある。なので正直に答える。



「五歳です」



 ロベリアは笑顔を向けて、俺の頭を撫でてきた。



「良い子ねー。お嬢ちゃん、今日は冒険者ギルドに何かご用かなー?」



 俺はロベリアに冒険者登録をしたい旨を伝え、王様から頂いた王様直筆の書状を渡した。

 すると、ロベリアの顔色が変わって慌てだす。



「エッ、エェェェェェェ! ちょ、ちょっと待って、ちょっと待っててね、お嬢ちゃまー」



 と言って噛んで、ロベリアは慌ててギルド奥に走って行った。

 俺は椅子から降りて待っていると、数分後に目つきが鋭い偉丈夫な男と共にロベリアが帰って来た。

 目つきの鋭い偉丈夫な男は「その子はどこだ?」と探すが――俺は眼前にいるのに、全く気づいてくれない。

 ロベリアに、



「ギルドマスター、足元を見てくださいよー」



 と、指摘され一瞬少し目線を下げる。しかし、分かっていないようだ。



「だからー、フロックスギルドマスターさっきから言っいるじゃないですかー。凄く小さな女の子だってー。足元見てくださいって、何度言わせるんですかー」



 更に視線を下げたギルドマスターは、俺を見て呟く。



「ん? ああスマン」

「もぉー、ギルマスー。人の話、聞かないんだからー」



 そう言ってロベリアは、俺を抱き上げて子供用の椅子に座らせた。



「ロベリアしかしだな。王様の特別な推薦状の子が、まさかこんな小さなお譲ちゃんだとは思わないだろ? しかも書状には、お嬢ちゃんを冒険者として正式に登録しろと書いて有るんだぞ。どう考えても十二歳に見えないし、寧ろ赤ん坊と言っても通る見た目だ。王命だとしても、俺にはギルドマスターとしての責任がある。見た目も強そうでもないし、流石に無理があるだろ? 何か強いという証拠にでもなりそうな物とか有れば話は別だがな?」



 言い訳するようにロベリアの方を向いて話していたギルマスが、最後に俺の方に視線を向ける。



「えっと、ギルドマスター。何かの魔物の死体でも証拠になりますか?」

「魔物の死体? そんな物どこにも無いじゃないか?」



 俺はギルドマスターに魔物の死体をどこに置いたら良いか確認する。



「じゃー、ここに置いてくれ」



 すると、何を勘違いしたのか小物の魔物とでも思ったのかテーブルを指さした。

 なので、テーブルの上に昨日討伐したボブゴブリンを三体程そのまま重ねて転がした。



「なっ! ゴ、ゴブリン? いや、これは普通のゴブリンじゃないぞ! ボブゴブリンか。しかも三体だと。こんな小さなお嬢ちゃんがか?」

「えっと、まだ有りますよ。でも、ここには置ききれないと思うのですが?」

「はぁぁぁぁぁぁ? おい、まて。ボブゴブリンだぞ? まだ持ってるのか? 何体だ?」

「残り十七体と、別の魔物が五体です」



 おいおい、冗談はよせよ。この年齢で、収納魔法だと? 見た目が若いエルフかと思ったが、エルフじゃない。いや、エルフでもこの見た目だと見た目通りの年齢だ。しかも、この嬢ちゃんの収納魔法はどうなってるんだ? 有り得ねえ量を言っているが、本当なのか? ボブゴブリン三体だけでも、強力な収納魔法だぞ? 今のこの状況からして、嘘を言っている気が全くしねえ。裏の魔物魔獣買い取り所に、連れて行く他はねえな……。



「お嬢ちゃん。悪いが裏口の魔物魔獣買い取り所まで、そのボブゴブリンを収納してから俺に付いて来てくれるか?」



 俺はギルドマスターに連れられて裏口に回ると、他の数名の冒険者まで付いてきた。

 魔物魔獣買取り所に到着して奥に連れていかれると、広い解体作業場まで案内された。

 俺はそこにボブゴブリン二十体とハイオーク五体を、それぞれ順番に出していき転がしていく――俺がボブゴブリンを十体出した時、他の冒険者が騒ぎだした。



「お嬢ちゃんの収納魔法は一体どうなってるんだ? こんな異常な量の収納魔法は、見た事も聞いた事も無いぞ!」



 と呟いていた。

 続けてボブゴブリンを十体出し、合計二十体出すとギルマスの目の色が変わった。



「おい、おい、おい。冗談だろ? ボブゴブリンのファイターとメイジが合わせて二十体だと? その数だけでも、Cランク冒険者が最低でも五パーティー以上必要だぞ!」



 ギルドマスター曰く――ボブゴブリンはゴブリンの上位種で、通常群れをなしている。

 他のゴブリンがもし居ると仮定すると、Cランク以上の冒険者パーティーを数十パーティーかき集めて大規模討伐するしかないらしい。

 しかも、



「この収納魔法の容量も異常すぎる……次は何を取り出すって?」



 と、顔を強ばらせていた。

 が、更に追加でハイオークを五体順番に出した時にはギルドマスターが驚愕した。



「ちょっとまて、バッ、バカな……有り得ん! ハイオークが五体だと?」



 俺は騒ぎを聞きつけた冒険者達がどんどん集まるので、これは不味いと思った。

 そして、誤魔化す様に王国護衛騎士達のお手伝いをした様に言ってみる。



「昨日、パープル・パンジー・フォレストムーン王女様の馬車がボブゴブリンとハイオークに襲われていました。王国護衛騎士様達が二十一名で対処され、討伐されていました。私はその時に、少しだけお手伝いさせて頂いただけです。そうしたら、お礼にくれたんですよ」



 騎士団二十人だと? ボブゴブリンだけなら分かる。しかし、ハイオークはそんな人数では到底不可能だ。いや、それより、剣で攻撃して倒された致命傷が全く無い――ちょっと探りを入れてみるか……



「お嬢ちゃん、お手伝いの褒美で魔物を貰ったのか。それは大変だったな。この数だと流石にお手伝いの時には武器が必要だっただろ? 武器はどうしたんだい?」



 武器は持っているが、伝説のあの武器を出すのは非常に不味い気がする。

 武器は持って無いと言うしか無いよな……



「えっと、武器は持って無いので王国護衛騎士の方が戦っている中、少しだけ素手でお手伝いしただけですよ」



 武器は持って無いだと……。この有り得ない爆発的な攻撃痕――信じられんが素手での攻撃なのか? 王国護衛騎士が攻撃するなら、連携での剣痕が無いとおかしい。が、剣での致命傷が全く無い。お嬢ちゃんの言う素手で、この攻撃痕という事なら……。既にB級いやA級冒険者のパーティー並みだ。もし、武器をもって攻撃したなら計り知れない……。



「えっと、少なからずですが、王国の精鋭騎士の方々と協力して魔物を討伐。そして王様の推薦状があるので、冒険者登録は可能ですよね?」

「スマンがお嬢ちゃん、少し実力を見たい。そこの箱に、中古の貸し出し武器が有る。何本か見繕ってから、それを持ってギルドの闘技訓練場の木を試し切りしてみてくれるか?」



 俺は中古武器の長槍と剣と短剣を見て、どれにするか迷った。

 仕方がないのでアイテムボックスに収納してから持ち運び、現場で決めようかと思った。

 が、槍と短剣はアイテムボックスに収納して、確かめるために剣のみ手に持って付いて行く事にした。



        ※ ◇ ※



【サラティーSIDE】



 澱みの者達の動向を、時を見る事が可能な処理空間で探っていると、澱みの者達以外の者が拘わっている事が分かってきた。

 これは、もしや? 



「ホワイト、貴女の意見が聞きたいわ」



 サラティー、(ワタクシ)の考えもおおよそ貴女の考えと同じです。

 これは、間違いなくセキュリティーホールです。

 ()()()()は、いくらセキュリティーを強化しても今のシステムでは阻まれない。

 根底からシステムの考えを改めて、セキュリティー強化しなくては駄目なようです。

 やはり、僕の考えが正しかったか。



「L、貴女の意見をお願いしたいわ」



 僕は、大きな澱みの動きが不可思議になった時点で別の可能性を考えていた。

 それが、()()()()だ。

 だから僕は、()()()()のシステム改変も同時に進めてきた。

 クックック、我の意見が抜けているぞLよ。



「M、貴女の意見も聞かせて」



 では、我の意見を付け加えよう。

 闇のシステムは、姿形を自由に変えられる。

 故に、その()()()()達の内なる部分にも進入しやすい。


 そして、我のように闇を巧妙に隠している者ほど進入されやすいのだ。

 Mの厨二病は全く隠しきれていないから、当て嵌まらないと僕は思うよ。

 クックック、Lは我の事が気になるようだな。

 もうそんな事はどうでも良いから、M早く続きを言いなよ。



「そうね、私も聞きたいわ」



 クックック、そう慌てるなサラティーよ。

 悠久の時を過ごしてきた我の考えは、こうだ。

 その身を闇に捕らわれた()()()()は、やがて澱みに侵され澱みの操り人形となる。



「つまり皆の意見を合わせると、何らかの理由で()()()()と、澱みの闇に操られた()()()()がいるわけね。それに従う者、不審に感じた者もいるはずです」



 クックック、そのとおりだサラティーよ。



「では引き続きホワイト、L、Mの三人は、根本的なシステム変更とセキュリティーの強化をお願い。私は、もう少し時を見る処理空間で澱み以外の()()()()の動向にも探りを入れるわ。だからサラ、貴女も協力してね」



 サラティー、私は勿論協力する。

 ただ平行異世界の()()()()達の動向まで調べるなら、二人だけでは範囲が広すぎます。

 ワイトの見渡す力とラックの幸運を呼び込む力も、必要だと思います。



「そうですね、お願いしましょう」



 ライラは、いざとなった時に武力行使してもらいます。

 ライラックお姉様とラティーには、引き続きこの世界全てを取り囲む結界を見てもらう事にしましょう。



「では、その方針でいきましょう」



 こうして十の精神を持つサラティー達は、澱みの思惑に対して行動を開始したのである。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「もぉー、いつまで待たせるのよ?」

アイビー『シルク、まだそんなに時間たっていないよ』

     グゥゥゥゥゥゥ! 

シルク「……お腹空いてきた。アイビー何か持ってない?」

アイビー『持ってないよ』

シルク「ホントに、役に立たない犬ね」

アイビー『シルク、さっき歩いている時にリリー様に頂いたサンドイッチ

     を僕の上で食べてたよね?」

シルク「――――。――――。――――」

アイビー 僕の指摘に、シルク話さなくなったけれど、大丈夫かな? 

     ……あれ? シルクがいない。どこ? 

     どこに行ったの? ……

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