着ぐるみを着た幼女
俺は、満足してフワフワのスノーとアイビーを抱いて幸せな顔をして一緒に眠るのだった。
次の日、目を覚ますといつの間にかメイド長がベットの中に入って来て俺は撫でられていた。
「ふあー、どうしたの?」
「はっ! もっ、申し訳ありません女神リリー様。起こしに参りましたが、あまりにも寝ている姿が愛らしくてつい……」
俺は眠い眼を擦ってまだ頭が回らない中、謁見の間に向かうべく準備をする。
スノーが起きてきたので、スノーにアイビーとシルクの事を任せメイド長の案内の元、王の謁見の間に向かった。
因みに、シルクはアイビーのフカフカな背中を背にしてまだ熟睡している……羨ましい。
俺は、王の謁見の間に着くまで何度も他のメイド達に抱きつかれては、女神リリー様可愛いと言って撫でられた。
「メイドさん達、今日はどうしたの?」
「「「ああー、お姿がとても愛らしいです。お口もとから奏でる声音も愛らしいです女神リリー様……」」」
すれ違うメイド達全てが、昨日とは全く別人としか思えない振る舞いや言動に困惑しつつも眠い眼を擦りながら俺は王の謁見の間を目指す。
王の謁見の間前に着くと、謁見の間を守る騎士達の顔が緩み騎士達が俺を撫でようとしてきた所を、メイド達によって取り押さえられていた。
……ここのメイドって、王国騎士より強いんだな。
俺が王の謁見の間に入ると、王妃と王女の目の色が変わり走って来て抱きついて撫でてきた。
王女が俺の顔を覗き込み、
「女神リリー様、可愛すぎます!」
と言って抱きつく。
王女に負けじと王妃も俺の顔を覗き込み、
「ああ、何て可愛いのかしら? うちの子になっちゃいなさい!」
と言って争うように王妃と王女が抱きつき俺を撫でた。
しかし、俺はまだ寝ぼけ眼で王妃と王女の二人に取っ替え引っ替えされている。
それを見かねた王様が俺の元に走ってやって来ると、
「これ、お前達。女神リリーに、失礼ではないか」
そう言いつつ撫でてきた……俺はチクチクする自身の顔に目が覚めた。
王様、顔を押し付けるのは止めてくれ髭が痛い。
王族に揉みくちゃにされている所、慌てて駆け込んできたメイド長率いるメイド達に俺は救われた。
「女神リリー様。そのお姿は、非常に危険です」
メイド長の言っている意味が不明だ。
そして、メイド長と一緒に来た数名のメイド達が声をそろえ、
「「「我らメイド長率いる、女神リリー様親衛隊にお任せ下さい」」」
そう言って俺を守護するように取り囲む。
メイド長が俺の前に来て跪き、
「女神リリー様、直ちに元の特別な大客室にご案内致します」
と、そう言って率先するように大客室に向かいだした。
俺が知らない間に、親衛隊が作られていた様だ。
俺はメイド長率いる女神親衛隊達に連れられて、元の特別な大客室に向かう。
大客室に向かっている最中に、一応この神武具を確かめた。
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着ぐるみセット (多彩色) 使用中 ●
-【専用神武具】
変幻自在魅惑の着ぐるみボディー(特殊能力)
⇖【詳細】
着ぐるみを変身させた動物や聖獣、神獣等の能力を使用可能
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またとんでもないの来たコレ、武器じゃなくて今度は能力だよ。
そして気になる説明文がある――魅惑の着ぐるみボディー?
これか! 誰もが皆、おかしくなっているのは……。
俺はメイド長率いる親衛隊達に守護する様に囲まれ、特別な大客室に無事辿り着いた。
「我々女神親衛隊が見守りますので、どうぞお着替えを」
そう言って扉の隙間から覗く親衛隊達……。
何名かのメイドが尊いと呟いているが、俺はサッサと着ぐるみセットをアイテムボックスの洋服専用修復ボックスに収納。
シュミーロの愛情セットボックスに手を入れて、別の服を取り出す。
取り出した服は、華ロリ服セット(紫・緑・白色)だった。
華ロリ服セットは、薄い紫色と薄い緑色を基調とした美しい刺繍が入った短い丈のチャイナドレスだ。
そして、これにも中国の伝説的神武具が付いている……。
専用神武具 大刀 青龍偃月刀と 槌 雷公の槌と楔である。
ロリコンヤロウは俺を無双させる気か。
自然が織りなす美しい景色――黄金のように輝く棚田状に広がる湖の上に俺は立っていた。
湖より黄金色に輝く龍が俺を優しく包み込み光りとなって消え去る。
すると、華ロリ服セットを纏った俺が出現する。
毎度おなじみの、美幼女変身シーン終了。
この服も身体に力が漲る感覚がある。
やはり、専用神武具に適した能力が向上する機能があるのだろう。
因みに髪型は、上に少しまとめられたお団子である。
着替え終わった俺は、再びメイド長率いる女神親衛隊に守られて王の謁見の間に到着した。
やっと王様達と普通に話せそうだ。
騎士達では無く、親衛隊が王の謁見の間を守る中俺は入室する。
「王様、王妃様、王女様、遅くなり申し訳ありません」
「いや女神リリーよ、済まぬ私達が悪かった。あそこ迄取り乱したのは、初めてであった」
「いえ、お気になさらないで下さい。昨日はお食事と特別なお部屋を貸して頂き、有り難う御座いました。とても美味しかったですし、お部屋も快適でした」
「それは何よりだ」
「突然ですが、王様お聞きします」
「うむ、何かな?」
「第二王女様が、病に伏せっているとお聞きしました」
「うむ……。我が娘のホワイトバイオレットは南の森の湖の畔に、護衛と共に出かけた後から謎の病にかかり床に伏せっておるのだ。悲しい事に原因不明で、王国の回復術師や薬調合師が診ても治せずに皆匙を投げたのだ。そして西の遠国に住まう大聖女の噂を商人から訊き、直ぐ様我が国に招いた。しかし、大聖女の神聖魔法を持ってしても――。大聖女曰く、恐らく異形の者の力が働いていると……」
異形のもの? 澱みの魔獣だろうか?
しかし、大聖女の神聖魔法ですら治らない病……この薬で治せるのだろうか?
でも、折角作った神薬だ。薬品名や効能からすると、恐らく……
「昨日王様が私達にして頂いた数々のお礼に、このお薬を差し上げます」
俺は昨日作った特別な薬を、王様に直接渡した。
「虹色に輝くポーション? これは?」
「神薬の、レインボーエリクサーです」
「色々と娘のためにポーションを探したが、聞き及ぶ事も無い物であるな?」
「このポーションは、全ての病気や呪い等も含め全異常状態回復と、全ての傷、欠損、喪失部位すらも完全回復する。私が昨日作った薬です。恐らく、第二王女様の病にも改善効果が期待出来ると思います」
「なっ! ……」
「差し上げますので、第二王女様にどうぞ。それと、王様には私が作成した葡萄酒を二十本。王妃様と王女様には私作成した、昨日王女様もお食べになったクッキーとフルーツタルト、それに果汁ジュースです。 クッキーは一杯ありますし、少しなら、日持ちするのでメイドの方達とお食べ下さい。フルーツタルトはメイドさん達の事も考えて多く作りましたが、生物ですので早めに食べてくださいね。果汁ジュースも一樽作りましたが、これも早めに皆で分けて飲んでくださいね」
俺が昨日王様達の為に作った物をその場に置いていくと、王女が満面の笑みで側に来る。
「女神リリー様、あんなにも美味しい物……こ、こんなに良いの?」
「どうぞ」
王様と王妃は俺が創造した神薬に呼吸をするのを忘れるほど驚愕し、味を知っている第三王女はお菓子に飛びついた。
「――はっ! 済まぬ、女神リリーよ。夢現であった」
王様は何やら宰相を呼びつけて話しだす。
すると、一つの書状の他に新たに書状を一つ書き加えた。そして、王家の紋章付き金のプレートと、豪奢な王家の紋章の入った革袋を渡してきた。
「王様、これは?」
「一つ目の書状は冒険者ギルド宛の書状だ。王家の命により年齢に達しなくても冒険者登録が可能になる書状だ。二つ目の書状はこの王国に有る空き物件や土地なら、何でも王家が責任をもって支払うと言うものだ。そしてその金のプレートは王城にいつでも入場可能な特別証とでも思うと良い。まあ、騎士達が女神を見て、王城に通さぬわけがないがな。それに王貨を一千枚だ」
「え? そんな高額なものは頂けませんよ」
「いや、寧ろこれだけでは到底足りぬぐらいだ。王侯貴族議会を早急に開催させ、女神様への感謝の気持ちを選定せねばならん。使いの者に通達させるので、暫く王都にいて頂くようお願いする」
「はい、有難う御座います王様。暫く私はこちらの冒険者ギルドでクエストを受けて、冒険者として経験を積むつもりなので……」
「うむ、あい分かった。……では、宰相! 急ぎホワイトバイオレットの元へ向かう! 早馬を用意致せ。そして拠点にも通達し、拠点にも早馬を用意」
「は!」
「女神リリーよ、本当に感謝する。私は今から、娘の元へ参る」
「王様、行ってらっしゃい」
俺は王様から貰った書状と革袋を、アイテムボックスに収納。
王城を後にした俺達は、冒険者ギルドに向かう事にした。
俺は少し気になっていることを、スノーに確認する。
「スノー、私の作ったお薬、第二王女様に効果あるかな? だって、大聖女の神聖魔法を持ってしても治らなかったそうですし……」
「第二王女様の病は、確実に治ります。うにゃん。完治して、以前より健康になられる事も確実です。うにゃん」
「そうなのね。良かった。スノーありがとっ」
スノーのお墨付きなら、間違いないだろう。俺はホッと胸を撫で下ろす。
すると、シルクが俺の側に来て肩に乗る。
「リリーって、神薬も作れるのね」
「ああ! あれはね、職業を変更したのよ」
「え? どういう事?」
「妖精の村で、皆を回復した職業が聖女。皆に料理を振る舞った職業が、絶級シェフ。そして、最後に第二王女に渡したお薬。それを作った職業が、聖薬剤師なの」
「へーそうなんだ。リリーって、モフモフ好きな変態幼女だと思っていたけれど……。やっぱり、女神様だったのね」
「――――」
酷い言われようである……。
俺は横に居たスノーを抱っこして、肉球を触って癒やされ笑顔を取り戻す。
「スノー、ありがと」
「うにゃん」
アイビーも心配して俺の側に行こうとすると、シルクがアイビーの元に行き、気まずいことに気がついたのか話題を変え、
「それにしても、お薬一つに王様太っ腹よね」
「ワン、ワオーン? クウーン、ワフ。ワオーン、ワンワン!」
『シルク、何言ってるの? あれは妥当でも無いし、王様の言う事は正しいよ。この世に一つしか存在しない、貴重な神薬なんだよ!』
なんとなく、アイビーがシルクを叱っているように見える。
もしかしたら、アイビーは俺に対するシルクの暴言に腹を立ててくれたのかもしれない。
アイビーに優しい笑顔を向けると、アイビーも笑顔を向けてくれた気がする。
まあ、幼狼なので表情は分からないのだが……
「もう本当にアイビーは、小姑みたいに五月蠅いわね」
「ワン、クウーン」
『リリー様、またシルクが虐めるよ』
アイビーが甘えてきた。俺は心優しいアイビーに手を差し伸べるとアイビーが俺の元に来る。
俺は、いつもの名コンビであるシルクとアイビーのやり取りを見て和み。
「アイビーも、こっちこんね」
そう言ってアイビーの可愛い鳴き声に抱き上げると、スノーも一緒に抱っこして二匹を一緒にモフモフして撫でてあげる。
そうこうしていると、お昼近くに冒険者ギルドに着いた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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シルク「リリー、さっきはごめんね。少し言い過ぎたわ」
リリー「シルク、もう気にしてないよ。だって、うちはモフモフな子達と
一緒にいられると幸せなんだもん。でも、少し自粛するわね」
シルク「うん、そうね。――――。――――。……って、言った側から何で、
スノー様とアイビーの耳を甘噛みしているのよ。それよそれ!
その行動よ」
リリー「ふにゅ、ハムハム? シリュキュ、にゃに?」
シルク「もう、いいわよ。モフモフ変態幼女で……」
どっちも懲りない双方であった。




