湖の近くにあるフォレストムーン王国の城
それより俺は、スノーとアイビー二匹のお腹をワシャワシャ触り、顔を二匹のお腹や首筋に埋め匂いを嗅ぎ、耳や背中や尻尾をハムハムする方が忙しいのである。
美しい夕焼けに照らされた頃、俺たちは風に靡く水面の美しい湖の近くに有るフォレストムーン王国の城に到着した。
そして、王女と護衛騎士に連れられて王城内にある客室に案内され暫く客室で待つように言われた。
俺は、シルクの涙で途中までグショグショだったはずの花魁ロリ服を着替える事にした。
途中までと言ったのには理由がある。
何度も確認したが汚れが皆無であり、寧ろ新品同様でシミすらないのだ。
どういうメカニズムなのかは不明だ。いや、メカじゃないけどね。
女神サラから頂いた服同様、汚れや傷が付いたとしても一切付かない仕様なのだろう。
俺が知り得ない、不可思議な何かが働いている――そう考えるのが、ここでは自然なのかも知れない。
服……どうしようかな? 今日は街の宿に泊まると思うけれど、恐らく夕食を御馳走してくれる雰囲気なので服もそれなりの方がいいのかな?
それとも、普通の服? ……普通の服は一着しか無かった。
悩むが――女神サラの着ていた装いは、透けていて心許ない。
神秘的な装いではあるが――俺の元いた世界観で考え、もし妖艶な大人が着れば○女だろう。
まあ幼女が着れば、それも可愛いに変化するのだけどね。
頂いた装いも生地自体が、この世に存在しないのではなかろうかと思わせるほど美しい光沢を放っているし、恐らくどこにも売っていない筈だ。
アクセサリーも、あまりにも豪奢すぎて王族以上の装いになって気まずい。
ロリ服も考え物だしな……でも、初めての出会いから花魁ロリ服だったからロリ服でいいか。
今は汚れが皆無だが、一度はシルクの涙と鼻水で汚れた服だ――アイテムボックスの、洋服専用修復ボックスに収納……ポイッと。
そして、何も考えずにシュミーロの愛情セットボックスに手を入れて服を徐に引っ張り出した。
両手を広げると、白と黒の布が身体を覆うように巻き付く――全身を覆うように巻き付いた布をクナイと手裏剣が切り裂く――桜が舞い散る美しい景色から現れたのは、忍者ロリ服セットを着飾った俺だ。
そんな妄想の演出を浮かべるのは、勿論美幼女が着るのだから当然である。
俺が装着した忍者ロリ服セットは、まあ普通ではない――忍者と言っても、通常のくのいちが着そうな目立たない単色の暗い服の色ではない。
一応白色と黒色を基調とはしているが、多彩色であり――首元には一応口元を隠せる綺麗な長いマフラーの様な物がる。
勿論ロリコンヤロウの趣味を表すように――下はミニスカートの様に短く、横にはスリットがあり、全体的に繊細なフリルが付いており、至る所に可愛いリボンがついている。更に、腰の帯留めと帯も長い。
忍者の装いと言わんばかりに、両手甲部と両足には武器の攻撃を防ぐ防具らしきものが付いている……可愛いすぎるが、所謂くのいちのコスプレだな。
確かに全体像で見ると凄く似合っている。
しかも、身体に力が漲る感覚がある。
漲るにも色々あるが、花魁ロリ服とは違った感覚だ。
花魁ロリ服は、両腕と両足に力が入る感覚と背筋が強調される感覚だ。
それに比べ忍者ロリ服(白・黒)は、手先から全身にかけて感覚が研ぎすまれる感覚だ。
恐らく、それぞれのロリ服には、武器それぞれにあった能力の向上などがあるのだろう。
まあ、戦闘モードでないと意味はなさないと思うけどね。
そして、今更だが気がついた……髪が、ポニーテールになっている。
そういえばあまり気にしていなかったが、花魁ロリ服の時も髪が下の方で纏められていたような?
髪型は基本スーパーロングなのだが、服装によってどうやら色々と変化するようだ。
一応、専用神武具もチェックした。
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忍者ロリ服セット (白・黒色) 使用中 ●
-【専用神武具】
十束剣 天之尾羽張
-【専用神武具】
十束剣 天羽々斬
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うん、やっぱり伝説級の神武具だ……しかも、十束剣。
形状が色々ある武器で有名だ。
天羽々斬――某有名アニメにも出てきた代物である。
形状が様々な物に変化し、敵を滅する。
「あのロリコンヤロウ。女神サラ様に、この装い着させて何させる気だったんだ!」
「リリー様? うにゃん?」
「スノー、何でもないの」
俺とシルクは、上質なクッションのソファーに腰かけて癒やされる。
「うんしょ。ソファー、ふわふわー」
「ふふ、妖精の王城の客室ソファーと大差ないわね」
スノーとアイビーも、フワフワな絨毯に癒されていた。
「うにゃーん」
「ワン、クーン」
『リリー様、気持ちいいです』
「そうねー。でも、スノーとアイビーの心地よい毛触りには敵わないわ」
「うにゃん」
「ワン、ワフ」
『リリー様、ありがとうございます』
俺は和んだ雰囲気で、ロリコンヤロウの事を忘れる。
そして優しくスノーとアイビーを抱き寄せてモフモフチャージ。
「はぁうー。癒されますー。モフモフ、ハッピー・フェスティバール」
俺が幸せな気持ちに浸っていると、不意にドアをノックする音が聞こえた。
シルクが、ノックに反応する。
「はーい。リリー、モフモフ愛情表現しているところ悪いけど呼ばれているわよ」
「はぁうー。二匹のお腹のフカフカが癒されるの。ハムハム。耳と尻尾も、気持ちが良いわ。クンクンクン。ねえ、シルクも嗅いでみる?」
もう一度、ドアのノックの音が聞こえ――
「リリー様。お食事のご用意ができました。ご案内いたしますので、どうぞ」
と、メイドさんが声をかけてきた。
俺が子供の頃ワン子とニャン子にしていた様に二匹の匂いを嗅いでいると、シルクが小声で声をかける。
「女神リリー様。メイドさんに呼ばれているから、いい加減変態じみた事はよしなさい」
シルクは俺に女神様と少し忌をこめて言った。
でも、俺はスノーとアイビーに癒されているから気にしない。
少しアイビーの匂いが気になってきたから、ブレスド ピュリフィケイション セレモニーっと――これで、よし。
アイビーは幼狼なので、どうしても汗をかきやすい。
こまめにアイビーの、臭いチェックをしないとね。
俺達は、メイドに大広間に案内された。
すると豪華な食事がテーブル一杯に広げられ、その奥から王が両手を広げ――
「ようこそ我が国へお越し下さった、女神リリー御一行様」
え? 何で女神ってバレた?
いや、実際自身では女神と思っていないけど周りから見たらね。
何て言えば良いかソワソワしていると、シルクが俺を見据える。
「高貴な私が妖精王女で、アイビーが妖精狼の王。そして貴女の従者よ」
「でも私、何も言ってないよ?」
「私達が従者という事は、貴女はそれ以上の存在。女神って言っているのと同じよ」
「もぉー、シルクがそんな事言うからぁー。目立たない様にしていたのにぃー」
俺はシルクに、少し幼い言葉遣いで愚痴を言った。
「何言ってるのよ! 王族が王族に対して、名と礼儀を見せるのは当然よ。それに、貴女の従者と言う事は妖精王からの命なんだから伝えるのは当然でしょ」
俺とシルクが言い争っていたら、王様が咳払いをする。
「オッホン! 話している所済まないが、話をしてもよいか? 女神リリーよ」
俺は素に戻り、王様に謝罪する。
「済みません、どうぞ」
「私は、フォレストムーン王国の国王オレンジ・パンジー・フォレストムーン。隣は、妃のホワイト・パンジー・フォレストムーンだ。この度は、我が娘パープル・パンジー・フォレストムーンを救って頂いた事を心から感謝する」
王が名前とお礼を述べ、その後王妃の顔をみる。
「女神リリー様、娘を救って頂いた事を深く感謝致しますわ」
王妃がお礼を伝えた後、王女が前に出てきた。
「女神リリー様。私も改めて、本当に救って頂き感謝致します」
王女が下がり、王様が話し出す。
「女神リリーよ。本当は是非、我が息子と二人の娘も紹介して全員で挨拶させたかったのだが生憎不在なのだ」
「王様、お気遣いなさらないで下さい」
王様の紹介で、第一王子の名前はアプリコット・パンジー・フォレストムーン。
第一王女の名前はイエロー・パンジー・フォレストムーン。
第二王女の名前はホワイトバイオレット・パンジー・フォレストムーンと分かった。
王様が何か他にも重要な事をペラペラと話している気がするが、大丈夫なのだろうか?
俺のことを女神として信用しているのは分かるが、敵国の間者がもし聞いたら危ないよと注意してあげたい気持ちになる。
「お父様、あまりお話されていると食事が冷めてしまいます」
王女が王様の長話に、口を挟んだ。
王女ナイスタイミング。
「おお、そうであったな。では皆、食事を頂こう」
俺は食事をしながら、今後の事を考えた。
この世界に来て、まだ妖精の村とこの国しか知らない。
しばらくこの国を拠点として生活する事で、この世界に慣れるのは必須事項だ。
一番重要な事――それは、この国で生活するためには、衣食住は欠かせないということだ。
幸い衣食住のうち、衣服と食事はしばらくなんとかなりそうだ。
衣服は、無駄に多いロリ服と、女神サラ様から頂いたどこで着たらいいか悩む服がある。
だが、全く何も無いよりはいい。
そして、食事――妖精料理人から頂いた食料がたんまりある。
スキルを使えば、食材がある限り美味しい食事がいつでも食べられる。
残りは住居だ――これだけは、宿屋をとるしか無いだろう。
それに、ここで暮らすにしても何か仕事を探さないと食べてはいけない。
王国に冒険者ギルドは有るのか?
冒険者になって過ごすにしても……この見た目と年齢で、冒険者の資格を得る事が出来るのか?
宿はどうしようか? と、様々な考えに至っていたら切りが無かった。
ともあれ、異世界に来たらやはり仕事は冒険者で決まりだろう。
まあ色々と偏見は有るかも知れないが、アニメやゲーム好きの俺なら当然である。
いや、それ以外は考えられない。
そう思い、俺は王様に尋ねてみる。
「王様。冒険者ギルドは、王国にございますか?」
「有るが……。女神リリーよ、何か困り事か? 必要な物があるのなら、私の方で揃えるぞ」
「いえ、冒険者に興味が有りまして……この見た目で冒険者登録出来るのか、心配しておりました」
「ふむ。簡単なお使い程度のクエスト等は、年齢に制限はない。が、通常は十二歳から正式な冒険者としての登録が可能な筈だ。では、特例として私からの書状を贈ろう。他に必要な物が有れば、何なりと申して頂いて結構だぞ」
「王様、有難うございます」
王様と王妃と話していくうちに、いくつか分かったことがある。
第一王子は、十八歳。すでに、他国の王女と婚姻関係である。
今は突如魔物と魔獣が増えた、南西の大洞窟に調査に向かっている。
第一王女は、十六歳。北にある帝国の、第一王子の妃である。
第二王女は、十四歳。
十三歳の時に南の森にある湖のほとりに出かけた後、謎の病にかかった。
今は床に伏せっており、静養中である。
そして、助けた第三王女が十二歳である事が分かった。
俺達は食事を楽しんだ後、先ほどとは違う王城の特別な貴族専用大客室で一泊する事になった。
王室メイドに案内された客室は、ベッドもソファーもフカフカで大きく装飾が豪華で煌びやかだった。
そういえば確か、第二王女が病に伏せっていると言っていたよな……
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。
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リリー「シルク、お城のソファーフカフカだったね」
シルク「うちのソファーの方が、もっと豪奢よ。それに私を包み込むような、
フカフカで暖かいソファーも有るのよ。しかも、雛鳥の可愛い
鳴き声もするしね」
アイビー『シルク、それ小鳥さんの巣だから……』
シルク「アイビー五月蠅いわね。あまりキャンキャン吠えると、耳囓るわよ」
リリー「私も、アイビーの耳ハムハムしたいよ」
アイビー「ご注文承りました。リリー様、喜んで」
シルク「どこの、居酒屋よ!」




