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リリー達の旅立ち2

 スノーに乗って出口に向かっていると、歯車のアイコンに赤文字で新と印が出ている事に気がついた。

 歯車をクリックすると、更にアイテムボックスに赤文字で新と出ている。

 クリックすると【新しい通知が有ります】と表示された。

 そしてそのお知らせには、専用神武具の確認ができますとある……。

 俺はそれを、恐る恐る確認する。



「え? これは?」



 俺が、ぼそりと呟くと、シルクが顔を覗き込む。



「何かあったの?」

「え? 何でもないよ、只の、ひ・と・り・言・よ!」



 俺は、焦る気持ちをアイビーを触りながら落ち着ける。

 そしてクリックする……。

 すると、花魁ロリ服セット(多彩色)使用中とあり、その下には専用神武具が二つ表示されていた。

 その神武具とは――スサノオ神の大刀【生大刀】とスサノオ神の弓矢【生弓矢】だった。


 ちょ! これは、あかん奴だ……俺の第六感がざわつく。

 この神武具の名前って、どう考えても日本の神が使う伝説の武器だよね。

 もしかして、ロリコンのセットって全部神武具付いているとか? 

 ……あり得るか、元俺の世界の厨二病管理者だしね。

 恐らく、ネットやゲームの影響だろう。


 伝説の神武具付きのロリ服を、考える思考持っていそうだ。

 でも、装備したらどうなる? 考えるだけで、ヤバイ事この上ない。

 今回みたいなキメラなど、管理者案件に係わる澱みの魔獣関連なら使用はありだが――この世界にいない魔獣などが、そうポンポン簡単に出現されては困る。


 短期間で出現する場合、明らかな異変だし。

 そうそう出現するはずが無い……たぶん。

 まあ、ヤバそうな戦闘の時にだけ使うという選択肢に入れておけばいいか。

 素手で、この尋常ではない強さだからな……

 だが俺は、怖い物見たさで他の服だけ見てみる事にした。


 シュミーロの愛情セットボックスを確認すると、中に納品書と保証書が入っていた。

 保証書の期限は無期限……何かあった場合でも、持参して頂ければ無償ですとも書いてあった。

 保証書の中に作成者と書かれてあったので見てみると――

 作成者は、第二級中位管理者シュミーロ・リタ・コンプレック・ス・ヤロウだと分かった。


 そして、セット内容を示した詳細内容には、ゴスロリ服セット(黒色)・姫ロリ服セット(薄紫色)・ロリメイド服セット(青・白色)・修道ロリ服セット(赤・白色)・魔法少女エンジェルアーマーセット(桃・白色)・魔法少女服セット(黄・白色)・華ロリ服セット(紫・緑・白色)・巫女ロリ服セット(白・赤色)・忍者ロリ服セット(白・黒色)・花魁ロリ服セット(多彩色)・着ぐるみセット(多彩色)・和ロリ服セット(封印)(多彩色)・シークレットセット(封印)(多彩色)と記載されていた。


 うん。やはりロリ服に、ヤバイ神武具が有りそうだ。

 他の武器は確認しなかったが……俺に何をさせる気だ? このヤロウ。

 名前も名前だ、やはりロリコンだ! 

 女神サラ様、実は最も危険な場所にいるんじゃないか? 

 厨二病管理者に狙われている気がする……スノーに後でまた注意を呼び掛けてもらおう。

 色々と突っ込みどころ満載だったが、考えを巡らせていたら迷いの森の出口に着いた。



「スノー、お疲れ様。綺麗な川も目の前にあるし少し休みましょ」

「うにゃん!」



 俺の意見に、シルクとアイビーが賛成する。



「私も賛成! ふー、疲れたわね。ねえ、アイビーもそう思わない?」

「ワン、ワオーン、ワン、クウーン?」

『女神様に、賛成です。僕もシルクも、スノー様に乗っていただけなのに?』



 俺はシルクとアイビーの何気ないやりとりに気分をよくする。



「まあ、良いじゃない。朝一番で出てきて、もうお昼近いしね。食材を妖精料理人達から沢山貰ったからアイテムボックスに入っているし。それに、昨日食べた残り物と飲み物もまだ沢山あるから、皆で食べましょ」



 川に手を洗いに行くと、水面に映る自分の髪の色に気がついた。

 あ! そう言えば安易に考えて、リセット機能使ったよな? 

 この服は日本の花魁が着る服だし、やっぱり黒が似合うよね。

 俺は髪の色を黒にした。

 うん、やっぱり黒髪も似合うな。

 ゆったりと流れる大きな川辺に映る姿も、美しい幼女であった。

 俺が川から戻って来るとシルクが声をかけてくる。



「あれ? また女神様、髪色変えたの?」

「この服は黒髪が、似合うのよ」

「へー……まあ、私は何でも似合い気品ある妖精の王女で美少女だけどね」



 俺はシルクの言う事に笑顔を向けた。

 確かにシルクは、黙っていれば気品有る美しい王女様で何でも似合いそうだ。

 俺は木の木陰で、妖精達から貰った大き目の布を下に敷いた。

 そして、料理人から貰った木の食器をアイテムボックスから取り出し料理をのせて皆に配っていった。



「そうそう、良い機会だから、皆に伝えておくね。今から私は女神様とかじゃなくて、リリーで良いから」

「うにゃん」

「ワン、クーン、クウーン、ワフーン」

『女神様、恐れ多いです。とても女神様を、呼び捨て何てできません』


「そうよ。いくら中身がモフモフ好きの変態だからって、急には変えられないわ」

「いや、今普通に呼び捨てより酷い事言ったよね? まあ良いけど。呼び捨てがダメなら、リリー様でも良いから、ね?」

「ワン、ワン!」

『はい、リリー様』


「そこまで言うなら仕方が無いわね。私も妖精王女だけど、既にシルクって言われてるから了解したわ、リリー」



 迷いの森から西に抜けた所には大きな川が流れており、その先はまた森だった。

 俺達は食事も終わり一息ついたので、再び出発することにした。



「休憩もしたし、そろそろ出発するね。スノー、また乗せてもらうけれどいいかな?」

「うにゃん」



 俺はアイビーを抱いて、スノーが大きくなるのを待つ。

 すると、スノーは俺の足下に来る。

 そして、尻尾を俺の方に向けそのまま騎乗できる大きさになった。

 確かに俺がよじ登るより早いけれど……鞍はいいのか? 



「スノー、専用の鞍は良いの?」

「鞍は、騎乗者が快適に騎乗できる為のツールです。うにゃん」



 成る程……鞍は快適な乗り心地を求める騎乗者の為のツールであるが、鞍無しでも騎乗は可能なのか。

 確かに……鞍がないと一切騎乗できないのであれば不便なこともあるだろう。

 それなら――スノーのフカフカな毛並みを思う存分堪能できる鞍無しが、俺の中では快適な乗り心地といえる。

 今までの俺の行動から、スノーが俺に気遣ってくれたのだろう。



「スノー、ありがと」

「うにゃん」



 スノーに乗り、目の前を見るとそには幅の広い大きな川がある。

 しかし向かいにある森に行く方法や、この川を渡る方法も分からない。

 なので、スノーに騎乗して川沿いを北側に向かう事にした。



「ねえ、シルク? 川の向こうにある森も迷いの森なの?」

「普通の森よ。それに迷いの森は厳重な結界が貼られているから、私達以外は普通に入れないのよ」

「へー、何も感じなかったけど、結界張られてるのね」

「外来生物は、通常迷いの森に侵入する事ができないの。森に行こうとしても元の場所に戻ったり、気分が悪くなったりするの。他にも色々とあるけれど、殆どがその阻害結界で対処されるのよ。私達、妖精族と妖精狼(フェアリーウルフ)族以外はね。でも安心して、リリーは特別よ。妖精王の計らいで、阻害対象外だから入れるの」

「じゃ、近くに来た時は何時でも寄る事が出来るのね」

「エッヘン! そういう事よ!」



 シルクの自慢気な答えに、アイビーが突っ込みを入れる。



「ワン、ワン、ワオーン!」

『いや、そこは、シルクが自慢する所じゃないよ!』


「そうかしら? パパの力なんだから、私の自慢よ!」



 シルクの話している事から、キメラが自由に妖精の村を蹂躙できたのには理由がつく。

 本来なら澱みの魔物は、迷いの森に侵入すらできなかった筈だ。

 だから迷いの森の入り口付近にいた。

 だが、澱みの魔石が幼狼の身体(カラダ)を乗っ取り、キメラとなった事で阻害魔法の対象外となったのだ。


 俺は迷いの森より奥の神域から来たが、普通に入れた。

 恐らく女神や女神に近い存在である俺も、初めから阻害対象外だったのだろう。

 まあ、シルクが自慢げに話しているのでそれは言わないでおこう。

 俺はシルクの自慢ついでに、シルクに確かめたい事をきく。



「シルク? どう行けば、人が住んでいる所とかに行けるの?」

「今この川に沿って北上してるよね。すると岩山が有るのだけど、険しくて誰も登れないのよ」

「えっ? 登れないなら行けないよね?」

「ふっ、ふっ、ふー、知りたい? ねえ、知りたい? どうしようかな? エヘヘヘヘ」



 シルクのドヤ顔に、すかさずアイビーが突っ込みを入れる。



「ワン! ワフ、ワフーン、ワン!」

『もう! シルクが教えないなら僕が言っちゃうよ!』


「あーん、もう待ってよ。分かったわよ。教えるから。教えるからー」

「ワン、ワン、ワオーン!」

『次に勿体ぶったら、僕が教えるからね!』


「二人とも良いコンビね!」

「私が素直に教えるなんて、滅多に無いんだからね。リリー、ちゃんと聞きなさいよ」

「シルク先生お願いします」

「ふっ、ふっ、ふー、宜しい! 話すわね。えーと……何処からだったっけ?」

「岩山が登れない所ね」

「そうそう、険しくて登れない岩山だったわね。岩山には、妖精族と妖精狼(フェアリーウルフ)族のみが侵入可能な結界が張られている秘密の抜け道があるのよ。そこを通ると岩山を超えられるの。エッヘン! 凄いでしょ、ねえ、凄いでしょー」



 すかさず、アイビーの突っ込み。



「ワン、ワオーン、ワン」

『シルク、もういいからさ、そこで黙ってて』


「イヤよ。ここまで話したんだから、最後まで話させなさいよ。ちゃんと話すからー」



 俺が、アイビーの激しい突っ込みに、シルクに合いの手を入れてやる。



「はいはい。じゃ次どうぞ。シルク先生!」

「エヘヘヘヘー、先生って言われると照れるわね。じゃー気を取り直して伝えるわね。岩山を越えると、この大きな川を渡る王国が作った橋が有るの。で、橋を渡って西に行けば【フォレストムーン王国】に着くわ。ふー、話疲れたわ。ねえ、リリー何か飲み物無いかな?」

「そうね。話しながらスノーに走ってもらっていたから、もう岩山の目の前まで来たね。妖精の村で摘んだ果物などで作った果汁ジュースもあるから、岩山越えの前に飲みましょうか」



 俺はアイテムボックスから木製の装飾されたコップを取り出すと、スキルで適度に冷えた口触りの良い果汁ジュースを注いで皆に配った。



「シルクお疲れ様。果汁ジュースよ。私がスキルで絞って作ったものだから適度に冷えて美味しいよ。スノーとアイビーも美味しいミルクがあるので飲んでね」

「リリー、ありがとー」

「リリー様、ありがとうございます。うにゃん」

「ワン、ワオーン。クウーン。ワオーン、ワオーン」

『リリー様、有難うございます。でも、シルクに甘すぎです。あんな態度の説明、少しは怒らないと』


「よかとばい! うちはアイビーとスノーのモフモフが、堪能できるだけで幸せなんやけん」



 俺は皆と美味しく程よく冷えたジュースとミルクを飲んだ。

 ……そして皆飲むのが止まらない。



「ゲプッ、本当にリリーの作ったもの、可笑しい位に美味しいわね?」

「そうね、私も自分で作ってるけど、信じられない位美味しいのよ。不思議ね?」

「イヤ、それはこっちのセリフだから。ゲプッ、セリフだから」

「ワン、クウーン。クウーン、ワフ……」

『シルク……ゲップする位飲んで、その言草はちょっとね。しかも2回も言って、妖精王女失格と思うけど……』


「アイビー小言五月蠅いわね! 見た目幼狼だけど、歳くってるんじゃない?」

「ワン、クウーン」

『リリー様、シルクが虐めるよ』


「アイビーこんね。モフモフして撫でっちゃるけん。スノーもこんね。二人とも撫でっちゃるね」

「リリーも、アイビーを甘やかしすぎよ」

「あは、ははは、うちのモフモフ好いとー趣味も入ってるけん」



 俺達二人と二匹は休憩してジュースを飲んだ。

 皆で他愛もない話でじゃれ合った後、シルクの道案内で秘密の洞窟を抜けて岩山を越えた。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字をご報告下さる皆様方も、本当に感謝致します。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

シルク「リリー、もしかして料理に何か入れてる?」

リリー「変なモノなんて入れてないよ?」

シルク「でも変ね……私はともかく、アイビーまであんなに食べるなんて」

リリー「シルク、やっぱり自覚あったんだ……。でもそう言えば、愛情が

    ……」

シルク「リリー、何?」

リリー「いいえ、何でもないの」

リリー ――――。愛情が限界突破してるって言っても、意味不明で説明

    できないしね……

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