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第三十五話〜思わぬ後始末〜

「……兼家邸の処遇、で御座いますか」


「ええ。一族もろとも左遷したは良いのですが、主人不在の状態では荒れるばかりで忍びないので。治安維持の都合でも、誰かしらが管理すべきであろうと結論しました」


 関白頼忠からもたらされた話は多少私を驚かせはしたが、少し考えれば予測できる問題であった。

 兼家の屋敷は、多く東三条殿と呼称される。左京三条三坊一町と二町に跨るこの広大な屋敷は、古くは藤原良房(あるいは藤原基経)を始祖とする由緒正しきものである。南北に長い敷地であるが、北半分と南半分にそれぞれ屋敷が造られ、特に南半分を「南院」と称して別邸扱いする。よって、通常「東三条殿」と呼ばれるのは北半分である。以下それに従う。

 さて、3年ほど前の永観二年三月十五日(984年4月18日)に東三条殿は焼亡の憂き目を見たが、南院は無事だったので今までは主にそちらが使われていた。史実であれば、今年の七月頃に兼家が再建するのだが……


「当人がいないので北半分だけが空き地、と。お話は理解申し上げますけども、なぜこの話を私に?」


「いえ何、かの土地を折半して欲しいのです」


「────はい?」


「南院は息子の公任に譲ろうと思っているんですが、二町は流石に広過ぎますから。頼任は元服したてですから与えようがありませんし」


「そ、それでも、頼忠様がお持ち頂くのが宜しいのでは……?」


「自分で言うのも何ですけどね、あんまりこちらにモノが集中すると、ほら、色々煩い人もいるんですよ。義懐殿には断られてしまいましたし、藤氏の外に出すのも手かなって」


 だからといってこちらに渡されても、全く使い道がない。別邸を造ろうにも場所が近いし、息子はまだ数え7つだし。


「いやしかし、私が持っても手に余りますし……」


「いやいやそこをなんとか……」


 *>────<*


「お疲れ様です、旦那様。久しぶりにやつれましたね」


「ああ、うん、まあね……」


 関白殿の要求に屈さず、なんとかお帰り頂いた。美月君による醸造などを含めたバレたくない施設の集約に役立てようかとも考えたが、そんなものを京内に作っては怪しさ満点だろう。郊外の寺に任せるのが安全という、なかなか複雑な結論である。


「貰えるなら貰っても良かったのでは? 固定資産税やら不動産取得税がかかるわけでもありませんし」


「いやさ、管理がめんどいのよ。使わない土地貰ってもどうしようもないわ」


 もっと色々考えれば何かあったかも知れないが、そんなものは藤原氏(向こう)に投げるのが最善だろう。多分。

美「本当に使い道なかったのですか?」


義「挙げるだけなら施薬院的なものでも良いと思うけど……」


美「けど?」


義「人員がいない&金がかかる。世の中は世知辛いのよ」

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