閑話乃三〜閑話空間〜
○-○──ワンタン麺と半チャーハン──○-○
「……聞くまでもない気がするけど、これは?」
大きな丼と、飯を盛る茶碗が一つずつ。前者には中華麺と思しきものが入った茶色いスープ(雲のような何かも浮いている)、後者にはテカリが眩しい具沢山のライス。
「言うまでも無いと思いますが、ワンタン麺(醤油)とチャーハンをご用意いたしました」
「見りゃ分かるわい」
毎度毎度、このメイドは何処から食材を持ってくるのやら。落ち着いて見てみよう。
ワンタン麺。ワンタンは多分海老を使っているのだろうが、これ自体に難しいところはない。餡の材料も皮の小麦粉も、やろうと思えば手に入る代物である。むしろ問題はラーメン部分であって、つまり「麺もタレもスープも作りにくくない?」と言うことである。
他方チャーハン。分量的には半チャーハンと呼ばれるあれだろうか、しかし今はどうでも良いことである。チラチラと見え隠れするのは紛れもなく卵なのだろうが、鶏卵なんて一体どこから……?
「ラーメンのスープには随分苦労させられました。鶏ガラの確保が一番の難題でしたが、某所で養鶏をしていたので1羽まるっと買ってきて捌きました」
「まあ庶民なら食うかも知れんが。で、その肉は?」
「胸肉は鶏チャーシューにして、チャーハンの具材に、手羽とかはガラと一緒に出汁にしました。もも肉は普通に焼いて私の賄いにするつもりでしたが、召し上がられますか?」
「……いや、いい」
流石にそこまでは食べ切れない。というか美月君、君かなり自由に動くね。私は頭が痛くなってきたよ。大方卵も同じ所から買ったりしたのだろうか。
チャーハンは……今ので大体の疑問は解決したか。他に何か不思議食材が入っているわけでもない──仮に入っていたとしてももう追究する気力はないが──し、もの自体はシンプルである。いつレンゲや丼を用意したかは知らないが、突っ込むだけ疲れるというものである。今はなにも考えずに美味しく頂こう。
○-○──お給料のお話──○-○
「ところで、旦那様って幾らぐらい貰っているのですか?」
「唐突&直球だね。ええとそうね、確か……」
現在の私は参議正四位下、上から8番目の高級官僚である。大臣クラスとまではいかないが、それなりに高い給料が支払われる。
古代日本の給料は原則として位階に対して支払われ、これを位禄と言う。私は正四位下なので、1年間で次のものが支給される。
・田んぼが24町(約24ha)
・絹より低品質の織物である絁が10疋(=20反、約37.9cm×2,274cm)
・麻の布が50反(約37.9cm×5,685cm)
・真綿が10屯(約1.5kg)
・租税のうち庸として納められた布が350常(約13,650cm)
・馬の飼育料が7貫(銭7,000枚)
・護衛や雑用のための従者40人
これとは別に、年に2回支給されるものがある。季禄と呼ばれ、春夏と秋冬の2回分である。ただし、延喜年間以降は急速に財政が悪化したため、これは6年に1回のペースとなった。つまり「6年ごとに以下のものが2回もらえる」ということである。
・絁が8疋(=16反、約37.9cm×1,819.2cm)
・麻の布が22反(約37.9cm×2,501.4cm)
・真綿が8屯(約1.2kg)
※春夏分では糸が8絇(約5.4kg)
・鍬が30口
※秋冬分では鉄が2廷(約2,252.5kg)
さらに、参議以上の所謂公卿にはその官職に対しても俸給が与えられる。私は参議なので、次の一つだけである。
・60戸の納める地租の半分と他の税金全て
(年中行事に対して舞姫を提供した場合、特殊な支給がある。ただし私はそんな娘はいないので貰った事がない)
「なんというか……凄いですね。日本円に直すとどれくらいなのでしょうか?」
「どうだろう。大臣とかだと2億円って言われてるけど、そこから考えると私は多分4桁万円ってところじゃない? 知らんけど」
「……大学時代より貰ってませんか?」
「わかる」
なお参考までに、全盛期の藤原道長は「荘園収入を除いて」4〜5億円と言われている。流石というかなんというか。
毎度お馴染み、作者の一条で御座います。ほっほっほっ。
次回からいつも通り新章突入です。どうぞそちらも宜しく。




