50.私だけの師匠!
そういえば連載開始からあっという間に50話と3ヶ月。読んで頂ける読者がいるのはありがたい事です。
やっぱり男の人って難儀な生き物だと思います。彼らは人に頼ろうとせず、大変難しい問題に直面したとしても、自分一人で解決しようとしますから。
そういうのを男のプライドって言うんでしょうか?
女性は反対に、助け合って何かを成そうとする人が多い印象があります。
だから弟子を取る人も、弟子に志願する人も女性の割合が多いんでしょうね。
ま、でも殆どの方は、国が運営する学校に通って試験を受けるんですけど。
え、私ですか? 私は師匠の伝手で裏口合格を……嘘です。騒がしいことになるから身分を隠せってオルドスさんに言われて、魔法で顔の認識を阻害し、シャルティア様の弟子というのを誤魔化してもらって試験に挑戦し、歴代最高点で合格しました。
合格した暁に貰えるブローチも、ちゃんと頂きました。
ちなみにその事実は記録としては残っていますが、肝心の名前の部分とその魔法使いの詳細については黒塗りにされているようです。本当にオルドスさんは私の事が嫌いみたいですね。
でも、そのおかげで私は今静かに暮らせています。私の素性が世間に知られていれば、弟子なんて取ることは出来なかったですし、大賢者の正統後継者として毎日忙しい日々を送っていたと思います。
ティルラ・イスティル、という名の魔法使いの存在を知るのは、その時の試験官と魔法統率協会の中でもほんの一部、あとは王族が知っているかどうかでしょう。
なのでオルドスさんには少しだけ感謝しています。本当に少しだけですが……。
「…………」
私を屋敷から追い出した時に見せた、オルドスさんの嬉しそうな表情を思い出し、私はぎゅっと拳を握ります。
――感謝はしています。だけど、オルドスさんに自分の存在を消されたようで、ムカついてもいるので、いつかは私を追い出した事を絶対後悔させてやりますよっ!
そう、心に誓う今日この頃でした。
「師匠っ! ソフィーさんのお家、本当にすごい所ですね!?」
一通りエントランスを見物し終えたのか、息を少し荒げた弟子が意気揚々とやってきます。
「リベア。人様の物に許可なく触れたりしませんでしたよね? 壊したらここで一生働くことになりますよ?」
「え、それ怖いです」
私は幼い頃にそれを一度経験しました。
ソフィーと魔法を使って遊んでる時、誤ってリビングに置かれていた壺を割ってしまったのです。
その時の私には、壺を直す事なんて出来ませんでしたので、「どうしよう……今のうちに隠しちゃいますか?」とソフィーに言ったら、リーナさんに言いつけられました。
それで1週間メイドさんの刑に処され、大変な目に遭ったのを覚えています。それだけは勘弁したいです。
「壊してない……ですよね?」
「もちろんです! 師匠の方こそ、他の人に触れられたりしませんでしたか?」
「え」
「え」
弟子が真剣な目を向けてきます。本気の目でした。それを聞いて、顔色を変えなかった私を褒めて欲しいです。
この子、怖い。助けて師匠。
「……急に怖い事言うのやめて下さい。触られてませんから」
「それは良かったです」
にへらーとリベアが口元を緩め笑います。これ、触られたって言ってたらどうなってたんでしょう。怖いですが、とても気になります。
「ティルラ様、リベア様。お部屋のご用意が出来ました。どうぞこちらに」
「あ、ご丁寧にどうもありがとうございます」
「ありがとうございます!」
師が弟子に恐怖を抱いていると、メイドの一人が部屋の準備が出来たと私たちを呼びに来ました。
「お荷物は……」
「あ、アイテム袋に入れてあるのでお気になさらず」
「そうでしたか。ではこちらに」
アイテム袋に荷物の殆どを収納しているため、手持ちの荷物は杖くらいしかありません。それに、その気になれば【次元収納】からなんでも取り出せますしね。
日用品やちょっとした小物などは、アイテム袋の方にしまっていますが、それに入りきらないような大きな物や貴重な薬を作る材料、特別な道具などは【次元収納】の方に収納されています。
師匠との約束通り、この魔法は神級魔法なので誰にも見せるつもりはありません。だから研究で使う物を取り出す時以外は基本使用しないのです。
(魔力消費も馬鹿になりませんし)
でも師匠は違いました。私が嫌だと言っても、【次元収納】にいっぱい物をぶち込んで来て、私が魔力切れで倒れるのを見て腹を抱えて爆笑しやがりました。
『それそれそれそれーっ!』
『死にます! 死んじゃいますから!!』
おかげで魔力量はだいぶ上がりました……それが狙いだったんでしょうけど。
しっかり整理整頓した事がないので分からないですが、きっと奥底の方に師匠が投げ入れた玩具がいっぱい入ってると思われます。
いつか師匠の墓に、「こんにゃろー!」とぶち込んでやろうと思います。
「こちらの部屋になります」
通された部屋は、それはそれはお広いお部屋でした。私と師匠が住んでいた屋敷の部屋と比べても遜色ない大きさです。両サイドにベッドが置かれており、ベッドメイクもバッチリ決まっています。流石は貴族のお屋敷と言えるでしょう。
(……昔、お泊まりに来た時は、ソフィーの部屋に泊まっていましたから、彼女の部屋以外は知りませんでしたが、こんなに広い部屋があったんですね)
ソフィーの部屋も一人用にしては大きかったですが、ここは二人用なのか、それより更に広々としていました。
大きな窓枠から射す太陽の光が、室内を淡く色づけ、壁の色と合わさって、この部屋全体の印象が明るい雰囲気に仕上がっています。そして部屋にはトイレはもちろんの事、バスルームも完備されていました。
「わぁ、広いです! それにうちよりずっと綺麗ですよ師匠!!」
「あの、いくらなんでも、二人にはちょっと大き過ぎるのでは?」
流石に好待遇過ぎるのでは? とメイドさんに相談すると、彼女は首をふるふると横に振りました。
「最高のおもてなしをしろとのご命令ですので」
「師匠、別にこの部屋でいいじゃないですか! 師匠は広い部屋はお好きじゃないんですか?」
「いえ、そういうわけではないんですが……」
弟子はこの部屋を甚く気に入ったらしく、早速ベッドに飛び込んでいます。
(リベアが気に入ったのなら良しとしましょうか)
それを軽く注意して、私はメイドさんにお礼を言います。
「すみません。この部屋で大丈夫です。ご丁寧にありがとうございました」
「いえ、この家の方には大変お世話になっているので、そのご友人とあらば当然の事です。それにあのシャルティア様のお弟子様ならば尚更ですよ。それで、あの……」
握手してもらっていいですか? と握手を求められ、ちょっとびっくりしつつもメイドさんの手を握ってあげました。
「ありがとうございます!!」
「いえいえ」
きゃぁーと赤くした顔を抑えながら退出していくメイドさんを見て、リベアに見られてなくて本当に良かったと思いました。
「枕もふかふかです〜」
弟子は枕に頭をうずめて、足をパタパタさせていました。
「リベアもまだまだお子ちゃまですね」
「むぅ。師匠と一つしか歳変わりませんよ! それに私の方が胸は大きいです」
お子ちゃまと言われてむすっときたのか、弟子はベッドに腰掛けると、胸元に手を入れ、私に自分の胸を見せつけてきました。
「あ、それを今言ってきますか……襲いますよ?」
「師匠なら大歓迎です!!」
「いえ物理的にです」
「わぁ、今夜は積極的ですね師匠!!」
「貴方は何を想像してるんですか……」
そんなやり取りを繰り返していると、部屋の外からバタバタと足音が聞こえ、新たな来訪者がやってきました。
「ティルラちゃんー久しぶり! ほっぺをすりすりさせてー!!」
「リーナさ――お願いですから、落ち着いてくださ〜い」
部屋を勢いよく開けたリーナさんは、そのままの勢いで私に飛びつき、ベッドに押し倒すと頬擦りしてきました。
「相変わらず柔らかいわねー。スキンケアは何をしてるのー?」
「ひゃぁーー! リーナさんやめて下さい!! 弟子が見てます。見てますからー!!」
「なな、ななななっ! あなた、私の師匠に何してるんですかっ!!」
私からリーナさんを剥がすために、彼女の腰に抱きつくリベア。これはもう、色々な意味で終わったなと思いました。
【※読者の皆様へ】
「面白い」
「続きが気になる」
「リベア可愛い!」
と思ったら、広告下↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです。
ご感想、ご評価をしていただければ幸いです。皆様のご意見を是非お待ちしております。
一言でも大歓迎です!!




