表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/193

187.魔法使いとしての強さ

お久しぶりです。水篠ナズナです。最終更新から一年も……お待たせしました。少しずつ更新を再開していきたいと思います。

 巨大な閃光が収束し、会場に残ったのはざわめきと、焼け焦げた魔力の残滓。わたしは特別来賓席から会場全体を見下ろし、小さく息を吐きました。


「な、何が起こったの?」


 魔力をちっとも感じ取れないソフィーとは違い、大賢者であるわたし、ティルラ・イスティルには分かります。


――魔力の流れが、はっきりと変わりました。


「ふむ……溜めていたものを放出しましたか。リベア」


 あの子は今まで、明らかに出力を抑えていました。


 正面から派手に撃ち合っているように見えて、実際には魔力を外へ逃がさず、体内で循環させ続けていたのです。


 それは、リベアの生まれ持った性質によるもの。


――魔力を、溜め込みやすい。


 普通の魔法使いであれば、危険極まりない体質です。

 制御を誤れば、魔力暴走を起こし、下手をすれば自分だけでなく、周囲の命まで奪いかねません。


 ……強大すぎる魔力量を持つわたし自身が、かつてそうであったように。


 親しい人を傷つけてしまうのです。


 けれど彼女は違いました。


(この子は……わたしが偶然、村に行くまで、ずっと一人で耐えていた。あの時の爆発も巻き込まれたのがわたしでなければ、おそらく死んでいたでしょう)


 誰にも教わらず。

 誰にも知られず。


 それでも壊れないように、溢れないように。


 魔力を抱えたまま、生き延びるために、必死でコントロールし続けてきた。


 それはつまり、魔力操作の精密さが常人とは比べものにならない程、優れているということです。


(初めて彼女と会った時は、正直驚きました。内側はすでに魔力で満ち満ちていて、今にもはち切れそうだったのに……それを一切、表情に出していなかったのですから。わたしも気付くのが遅れた。けれど“大賢者”という言葉を聞いた瞬間、緊張の糸がほどけた。あの時、確信しました)


 だからわたしは、あえて彼女の“欠点”を矯正しませんでした。


 抑えるのではなく、活かす。


 溜める力を、自分の性質をそのまま武器へと昇華させる。


 それが、わたしの教えです。


 シャルティアも、そうでした。

 有り余るわたしの魔力をどう扱えばいいのか、自分が怪我をしてでも教え、決して諦めなかった。


 そのおかげで、わたしは魔力を制御できるようになり、今の自分があります。


 ――さて。


 ここから先は、もう完全にリベアのターンですね。


 舞台の中央で、リベアは杖を掲げ、静かに息を整えていました。


 ネウロ・パテシュム。


 あの子も確かな才能はあります。魔法構成は巧みで、戦闘経験も豊富。


 ですが――決定的に足りないものがありました。


 “自分の力を信じ切る心”です。


 他人から与えられた歪な愛に縋り、その力を借りている限り、いずれ必ず限界は来ます。


 きっと彼女は、誰かや何かに縋らなければ生きてこられなかったのでしょう。

 盗賊団にいた頃も、同じだったはずです。


 そういう生き方しか知らない。


 一方で――。


「……来ますよ」


 わたしは、思わず微笑んでいました。


 リベアの周囲に、目に見えない圧が生まれます。


 空気が震え、魔力が一点に収束していく。


 あの子は今、溜め込んだ魔力を“解放”しているのではありません。



 “編み直している”のです。



 防御、攻撃、補助、回復。


 すべてを瞬時に切り替えられる、極めて安定した魔力配分。


 ええ、そう。


「リベアはわたしとは違うタイプの超万能型魔法使いです」


 リベアはわたしのように全属性を扱うことはできず、多彩な技を持たない。


 ですが、その安定性により、どんな状況でも確実に対応できる。


「フッ!」

「ッ――」


 ネウロが焦り、魔法を重ね撃ちした瞬間。

 リベアは、迷いなく一歩前に出ました。 


 溜めた魔力を、最短距離で。


 最小限の動作で。

 最大効率で。


 光が、一直線に走ります。


 次の瞬間、ネウロの魔法は完全に崩壊しました。

 構築されていた術式は内部から破壊され、魔力の流れを完全に断ち切られたのです。


 今の一撃で、審判や生徒たちへの記憶操作や洗脳も解けた事でしょう。


 なにせ、術者にそれを維持できる余力はもうありませんから。


 勝敗は、決しました。


 場内が、爆発したかのような歓声に包まれます。


 今起きた事を正確に理解できたのは、一部の魔法使いだけでしょう。


 わたしはその光景を見届けてから、ゆっくりと立ち上がり、隣で息を呑んでいるソフィーに向き直りました。


「な、なによ」


 そこで、思いきりドヤ顔をしてあげます。


「言いましたよね。ソフィー。わたしの弟子は強いって。だから心配する必要はないと」


 ニヤリと笑い、胸を張って告げました。


 リベアは、わたしが誇る一番弟子です。

 過去を耐え抜いた強さを、正しく伸ばした結果――彼女は今、立派に一人前になったといえます。わたしから見ればまだまだ子供ですが、及第点でしょう。


「師匠ー!!!!」


 会場の向こうから、大きく手を振る弟子の姿が見えます。

 ……本当に、うちの弟子は可愛いですね。


 それに成長していく姿というものは、こんなにもウルっとくるのですね。

 

「あんた今ババ臭い事考えてない?」


「……さぁ」


 こほんっ。


 だから、ええ、これは当然の勝利でした。


「おめでとうございます、リベア。あなたの勝利です」


 遠くからでも、彼女の地獄耳なら、きっと聞こえたはずです。


 わたしの、心からの賛辞が。


ここまで読んで頂きありがとうございます!


ブックマーク、評価、感想、レビュー、紹介、リンクなど、もろもろ全て歓迎致します! 


 皆様の一手間が更新の励みになります、どうぞこれからも宜しくお願いします!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
わーい!更新ありがとうございます!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ