181.慰労会をしましょう
お待たせしました。いつもより少し長めになっております。
「師匠やりましたよー!!」
圧勝でした。そもそも前衛部隊であるリベアとヴァネッサさんが強すぎるのでお話になっていません。
勝利したリベアが大きく手を振ってきましたが、今は大賢者として威厳ある態度を取っていないといけないので笑顔を向けるにとどめておきます。
(こうも圧勝続きだと、相手方に少し同情してしまいますね)
リベアの実力は学院に入ってからメキメキと伸びており、村で毎日行っていた鍛錬メニューも怠っていないようです。
ヴァネッサ・リトネスク。彼女も彼女で学生の域をとっくに超えています。技の駆け引きの方はまだまだ未熟ですが、それでも実戦を積んであと数年すれば一流の魔法使いとなるでしょう。
(明日から始まる個人戦でヴァネッサさんとリベアがぶつかったとしても、経験の差でリベアに軍配が上がりそうですね)
そもそも同年代や少し上程度の魔法使いがリベアに勝てるとは思っていません。今のリベアはここにいる教師複数名を相手取っても、対等に渡り合えるだろう実力を保持していると断言できるからです。
え? 大人相手にそれは弟子贔屓が過ぎるって?
あははっ、何を言ってるんですか? リベア・アルシュンは大賢者ティルラ・イスティルが自ら手解きした子ですよ? そこら辺の魔法使いに負ける訳ないでしょう。
「ふふ、ふふふふっ」
「……ティルラさん。愛弟子のチームが優勝して嬉しいのは分かるけど、悪い顔になっているわよ」
おっと、いけない。ついつい悪い所が出てしまいました。
「申し訳ありません、ビエンカ様」
「ほんと弟子の事になると顔に出やすいよね。大賢者様は」
「そうでしょうか?」
自分ではよく分からないものですね。
「とーっても分かりやすいわ。ね、お姉様?」
「そうね。でもシャルティア様も大概分かりやすかったから、似た者同士なんじゃない?」
「うんうん。リベアちゃんも大賢者様の事になると暴走気味だしね」
姉妹揃ってわたしを揶揄って楽しいのでしょうか? まぁ、わたしも楽しいから別に構わないのですが。
「ユリア様。あの子も人前ではちゃんと弁えてるので大丈夫ですよ。暴走なんてしません」
「もっていうのは疑問だけど、うーん……それってフラグなんじゃないかな?」
「ふらぐ?」
姫様の仰る言葉の意味が分からず、わたしは首を傾げました。
「あ、ううん。何でもないわ。忘れて頂戴」
「?」
何か誤魔化されたような気がしますね。まぁ、今はそんな事よりリベア達です。壇上に上がりいよいよ表彰式が始まります。
「まずはチーム名に込められた想いについて、アルシュンさんお願いします」
自分の声を拡声させる魔道具を受け取ったリベアは意気揚々と喋り出しました。
「はい! まずはチーム名の由来についてお話しする前に師匠の素晴らしい所を軽くご紹介したいと思います!! 第一に師匠は可愛くて――」
「リベアぁぁぁぁぁあー!!」
そのインタビューはまさに公開処刑と呼ぶに相応しく、顔を覆いたい気持ちでいっぱいでした。
「あ、アルシュンちゃん。一旦落ち着こうか」
「な、なんですか! 私はまだ――」
この学院に在籍するもう一人の平民出身者。三年生のマリア・ティンゼルさん。学院祭の運営でもある彼女が弟子の暴走を止めてくれました。
(危うく、わたしが耐え切れなくなって飛び出してしまう所でした。いや護衛の任があるのでしませんけど……)
その後は回答者をドロシーさんに交代し、無難な回答をします。リベアは不満そうな顔をしていましたが、式はつつがなく終了しました。
◇◇◇
一日目の日程も無事に終わり、王族用に用意されて寝室までお二人を見送ったわたしはチーム【師匠大好きクラブ】の元へ向かいます。
「リベアに任せたのが間違いでしたわ。こうなる事は容易に想像できましたのに」
扉越しに声が聞こえてきました。このちょっと甲高い声はドロシーさんですね。
「だな。あたしはドロシーが事前になんとかしているものだと思ってた」
続いて聞こえてくる声はヴァネッサさん。どうやら今日の反省をしているみたいですね。
「私も最終確認くらいはしておこうと思っていましたが、リベアが絶対に大丈夫だと言ったので……」
「実際に大丈夫だったでしょ?」
「大丈夫だったら止められていませんわ」
「リベアちゃん。今度からは前もって相談して欲しいな?」
「そんなにダメ?」
だめです。だめに決まっています。逆にあれで良いと思ってたんですか?
わたし達の事を知っている人達だけならまだしも他国の人も居るので、よく知らない人達からは完全にヤベー奴認定されて引かれてましたよ。師匠は悲しいです。
「いやダメというわけじゃないんだが、チームと個人はまた別っていうかなぁ」
「リベアちゃん。だめじゃないんだけど限度があるというか……」
「要は私たちのいない所で好きなだけイチャついてほしいって事ですわ」
「そんなぁ!!」
三人がうんうんと頷いているのが扉越しにも分かります。ごめんなさい、うちの弟子が。
「まぁ、今日の所はこれでお開きにしましょう。明日の個人戦も控えていますしね」
「だな」
「そうだね」
ドロシーさんが締めに入りました。どうやら反省会は終わりみたいですね。入るなら今でしょう。
「うちの弟子がご迷惑をお掛けしてしまいすみません」
「あ、師匠! 私頑張りましたよー! 褒めてくださーい!!」
飛びかかってきた弟子の頭を身体強化した腕でガシッと掴みます。そしてキリキリと締め付けました。
「いたい……いたいですよ師匠」
「抱きつく前に少しは反省してください。マリアさんがいなかったら止まらなかったでしょう」
「それはその……すみませんでした」
「よろしい」
「師匠……」
頭を離してあげるとリベアは潤んだ瞳を向け、〈きちんと反省しました。だから褒めて?〉そう言っているようでした。
「はぁ。しょうがない子ですね」
仕方なく頭を撫でてあげます。
さっき言われたばかりでしょうに、人前でイチャつくなと。ま、わたしはそんな事聞いてないので関係ありませんけど。
「えへへ~」
嬉しそうに目を細めています。可愛い子ですね、まったく。
あっ、でもドロシーさん達にこの子はやっぱりダメだって目で見られてます。
リベア、その蕩けた表情から一旦戻ってきて! 大賢者の弟子って自覚持って!!
「褒めてくださーい」
「はいはい。よく頑張りましたね。皆さんも今日はお疲れ様でした。特にニーナさん。貴方のサポートがあったからこそ三人が自由に動けていたと思いましたよ」
「いえ、そんな……私なんて全然です。殆ど私以外の三人がやってくれたようなものですし」
「そんな事ねーぞ。あたしはすっげぇー助かった! ミスっちまってもニーナがいるならなんとかなるってな」
「それは貴女が不用意に触るから、簡単に解ける筈の問題が難しくなってしまっただけでしょう?」
「最終的に解けたからいーだろ」
「貴方以外の人で解きましたからね」
「うぐっ。悪かったって。今度勉強するから」
どうやらヴァネッサさんとドロシーさんの仲も良好のようです。ニーナさんも二人と随分打ち解けたようです。
「今日はお泊まりですか?」
「はい! マリアさんからも許可を頂いて、四人が寝泊まり出来る場所を特別に用意して貰いました! 優勝チームの特権ですね!」
「他のチームも仲の良い所は結構申請出してるみたいよ」
「そのようですね。ここに来るまでに何組か見かけました」
「え、そうだったんですか!? 師匠は? 師匠も泊まっていきます?」
「わたしはもう帰りますよ。弟子のチームを労いにきただけですし、明日も仕事がありますから」
「うわっ、師匠から仕事って言葉が出てくる事に驚きです」
「なんですか。大賢者も立派な仕事ですよ」
帰ろうとするわたしの腕にリベアはしがみつきます。
「待って。ちょっとだけ、ちょっとだけいてください。女子トークしましょう!」
「リベアも疲れていますよね? 明日に響きますよ。リベアは良いとしても他の方はいいんですか?」
「私は構いませんわ」
「あたしもいいぜ」
「私も大賢者様と、もう少しお話してみたい……です」
「ほら、みんなもこう言っていますし!」
「…………本当にちょっとだけですからね?」
夜はもう少し続くようです。
◇◇◇
――全員かなりお疲れだったようで、それほど時間が経たないうちに一人、また一人と目を閉じていきます。
ニーナさんは自力でベッドに、あとの二人は寄り添うようにして、最後まで残っていたリベアもわたしの肩を枕にして可愛い寝息を立て始めました。
「お疲れ様でした」
三人を起こさないよう魔法でベッドに運び、上から毛布を掛けて部屋を後にします。
「明日も楽しみにしていますよ」
「んぅ……ししょ……う」
そして学内戦二日目の朝を迎えました。
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