176.お酒への耐性
投稿遅れました。申し訳ないです。
この世界の成人年齢は15歳です。
「ええ、ちょっと転校生の事について知りたくて」
ここで動揺を悟られるわけにはいきません。わたしは落ち着いてそう答えます。
「いくら大賢者様だからと言って、私の部屋に無断で入室するのはよくないんじゃないかな?」
対する学長は目を細め、わたしの事を少し警戒している様子でした。
「すみません。わたしクビですか?」
「普通の教員ならまずクビだね。それどころか牢屋行きだ」
目がマジです。というか、若いのに可哀想にねーというオーラまで出してやがります。
「それは色々と不味いですね」
冗談のつもりで言ったのですが、本当にクビならやばいです。陛下にどんな顔すればいいんでしょう?『学長が怪しかったら、勝手に部屋に侵入しましたー。そしたら見つかってしまいましたー! てへっ!』じゃ済まされませんよね〜。
「……何か穏便に済ませる方法ってありますか?」
「そうだねぇ……あ! ひとつだけあるよ」
彼女は考え込むと、何か閃いたのかニヤリと笑みを浮かべました。嫌な予感しかしません。
「そ、それは?」
わたしは恐る恐る聞いてみます。
「私と一杯付き合ってくれないか? 学長にもなると呑める相手が限られていてね。その点大賢者様なら問題ないだろう。お酒はいける口かい?」
あー……そっちですか。てっきり学長室で何かしらのお仕置きを受けるのかとばかり思っていましたよ。
でも、お酒かぁ……嗜む程度はいけるはずですが、あんまり呑まないので限界というものが分かりません。いつも途中で記憶なくなりますし。
「それは……成人しているので呑めはしますけど師匠程、酒豪ではないですよ?」
宴の席以外では殆ど口にしませんし、人前で隙を見せる気もありませんから。
「それで十分だよ。君の師匠であるシャルティア様とも一度酌み交わしてみたかったな」
「やめといた方がいいですよ。あの人、おかしいくらいに呑むので」
「それはそれで楽しそうではあるんだけどねぇー」
遠い昔の日を懐かしむような感じで学長は遠くを眺めます。
(見た目からは分かりませんが、この人も師匠と同じくらいの年齢なんでしょうか?)
魔力が衰えるまで肉体は若々しさを維持します。逆に言えば魔力が衰えた瞬間、急激に歳をとるような感覚を覚えるといいます。
「ちなみに拒否権は?」
「あるわけないだろう? それにもしかしたら私の口が軽くなって大賢者様が知りたい事もポロッと口に出すかもしれないよ」
ですよねー! まあ、こうなったら仕方ない。大人しく腹をくくりますか。
「あまり強いのは無理ですよ。潰れるので」
「それなら一番弱いのにしておくよ。子供がお祝い事の際に呑むものだ。これなら君も平気だろう」
ソフィーとケイティ、わたしの三人で集まって飲んだ時はソフィーが一杯もいかず酩酊したので人前では飲まない方がいいと注意しておきました。体質なんでしょうが貴族にしては珍しい。ちなみにケイティは五、六杯呑んでも全然平気そうでした。
わたし? わたしは全く憶えていません。ほんとですよ!
「わかりました。ではそれでお願いします」
◇◇◇
1時間後。わたしはベロベロに酔って、学長秘蔵のお酒にまで手をつけていました。
あ、でも安心してください。お酒を人質にとったら聞きたいものは全部聞けましたから。
「これが彼女の入学手続きの資料だ。好きに見てくれていい。だからその腕の中に抱きしめている物を返してくれないかな?」
「まだ、らめです。彼女の後ろ盾をしている貴族の名前をおしえてくらさい」
「それは言えないよ。匿名だからね。だが権力のある家というのは確かだ」
「そこをなんとかいってくらさいよー。学長でしょー、わたしはだいけんじゃなんれふから」
「…………君、さては酔うと面倒なタイプだね?」
「はぁ? 何をいってるんですかぁ……そんなわけ……ない……すぅ」
「寝た……」
毛布を掛けられた所まではギリギリ記憶がありました。しかしそこが限界でした。
そのまま学長室で朝を迎え、翌朝になって学長に呼ばれたリベアがわたしの回収に訪れました。
そしてダメ人間のお手本と化したわたしを見て、彼女は愕然とした顔をしていました。
「師匠! 調子に乗ってどんだけ飲んだんですか!? 少量ならともかく、師匠は飲み始めると止まらなくなるタイプだとあれほど言いましたよね?」
「私の秘蔵の酒……殆ど飲まれたな」
大の大人が泣きそうです。
「学長すみません。このお酒の弁償は必ず。ほら師匠、シャキッとしてください!」
「いや補填は別にいいけど、授業は普段通りやって欲しいな……」
「学長もこう言ってくれてるんですから〜!!」
「うぇー? リベアがふたり? 分身しちゃった?」
「もうしっかりしてくださいっ!! 師匠の授業を待っている人がいっぱいいるんですよ!」
「あ、そんなに勢いよく引っ張らないでください」
「え、ちょ師匠!?」
急に立ち上がったことによってフラッとよろめき、揺らされたわたしの視界はぐにゃりと歪み、そのまま……。
「――お、おぇーー!!」
「師匠!? “浄化”」
リベアがいなければ、学長室が凄惨な現場になっていたでしょう。
「………………」
学長は無言でその場を去っていきました。まるで私は何も見ていないとばかりに。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
三人が集まって呑んだ日は、170.事件収束 “続”の時です。
ブックマーク、評価、感想、レビュー、紹介、リンクなど、もろもろ全て歓迎致します!
皆様の一手間が更新の励みになります、どうぞこれからも宜しくお願いします!!




