171.仲直りと和解
今週二度目の投稿です。昨日投稿したのをまだ見てない方は是非そちらから。
三人称視点でお送りします
その日、ドロシー・エルドレッドはとある平民に呼び出され誰もいない教室で待ち惚けていた。
「何で高貴な身分たる私が、平民の呼び出しを受けて大人しく待っているの……もう少し待って来なかったら帰ってやりますわ」
彼女がそんな事を思っていたタイミングで教室の扉が開く。
「お待たせしました」
「ようやく来ましたの。この私を一体どれだけ――だ、大賢者様!?」
そこにいたのは平民リベア・アルシュンではなく。大賢者ティルラ・イスティルであった。
「ドロシーさん、お待たせしてしまいましたか? 気分を害してしまったようで申し訳ありません」
「ティルラ様、頭を上げてください!! 私を呼び出したのは平民では!?」
「おや、おかしな事を言いますね。わたしだって平民ですよ、ドロシーさん」
してやったりといった顔をするティルラ。ドロシーは嵌められたのだと瞬時に悟った。
「そ、それは……ティルラ様はシャルティア様の後継者で現在の大賢者様だから特別なんですの」
「わたしは別に特別じゃありませんよ。師匠のように特別な何かを成し遂げたわけではありませんから」
「今回の事件を解決した手腕と魔物討伐は十分な功績、評価に値しますわ!」
「うーん……わたし以外の人からしたら、そうかも知れませんね」
それはどういうことかと思ったが、ティルラには何か思う所があるようだ。だがこの場で答えるつもりはないらしい。
「あの、それでご用件とは何ですの? 私に出来ることでしたらなんでも協力しますわ」
「あーいえ、純粋にお礼が言いたかっただけです。リベアを安全な場所まで運んで頂きありがとうございます。お陰で大事には至りませんでした」
「それはティルラ様にお願いされたからで、私が自主的に行った事ではありませんわ」
「それでも大人しく身を引き、リベアを助ける為に行動すると決めたのは貴方でしょう? それは紛れもなくあなた自身の意思です。正しい判断でしたよ」
ティルラは優しい口調でドロシーを褒め、嬉しそうに微笑む。
その表情にドロシーは顔を赤くしつつ視線を逸らす。
(この方……口調は違えど、本当にシャルティア様に似てきましたわね)
同性なのに思わず見惚れてしまうほど、ティルラの美貌はシャルティアと瓜二つだった。
「……あの子には命を助けてもらった恩がありましたから。それを返しただけですわ。平民に貸しは作りませんの」
「ふふっ、その答えを聞けて満足です。ドロシーさんはきっとリベアと仲良くやっていけるでしょう。ですよね、ファンクラブ会員三番さん」
「んなっ、それは忘れてくださいまし!!」
ドロシーは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながらティルラに抗議するが、彼女は余裕の表情で受け流すだけだった。
「さてドロシーさん。国という大きな共同体が成り立っているのはどうしてか分かりますか?」
「え、急ですわね。えっと、国……それは王侯貴族がいて、民がいて、皆がそれぞれ自分たちの役目を果たしているからではないのですか?」
「確かにそれも正解の一つです。でもそれが全てではありません」
不正解だったらしく、ティルラが首を横に振りながら語る。
「国というのは民がいるからこそ成り立つものです。つまり王侯貴族は民を守る義務があり、民もまたその王族や貴族を支える義務があるのです」
それが本来のあるべき姿であると彼女は言う。だが現実ではなかなか上手くいかないとも続ける。
「これはわたしの師匠であるシャルティアが言っていた事ですが、国が成り立っているのはわたし達の祖先が繋げてきた人と人との繋がりがあるからであり、それは今でも繋がっている。その繋がりを大切にしろと。昔は身分なんてあってなかったようなものだったと聞きますし」
「? つまり何が言いたいのですの?」
回りくどい言い方にドロシーは首を傾げる。ティルラは改めてドロシーの目を真っ直ぐ見ると、彼女の質問に答えた。
「学院の外までとは言いません。この学院内では身分関係なくリベアと接してもらえないでしょうか?」
その言葉にドロシーは目を見開いた。
「……知っていて? 私は入学試験の際、貴方様の弟子に意地悪しましたのよ」
「少しトラブったという話は聞きましたが、リベアの口から貴方に直接何かされたとは聞いていませんし、今日だってわたしが遅れても待っていてくれたじゃないですか。それが答えだとわたしは思っています」
「――っ、それは」
ティルラの優しくも強い瞳に見つめられ、ドロシーはぐっと息を呑み込んだ。そして覚悟を決めたのか、彼女はゆっくりと口を開く。
「…………ティルラ様がそう仰られるのであれば、善処致しますわ」
その答えを聞いたティルラは満足そうに頷き、教室の扉に手をかけた。
「良かった。それじゃあわたしの話は終わりです。あとは頑張ってくださいね」
「はい! ん? あと?」
「仲直り、ですよ」
「リベア・アルシュン……さん?」
そしてティルラと入れ替わる形で、外で待機していたリベアが入ってくるのだった。そう、ここまでがお節介な師匠の仕掛けた罠である。
「あはは……こんにちは、ドロシー・エルドレッドさん」
ここまで読んで頂きありがとうございます!
可愛い弟子にはついついお節介を焼いてしまう。シャルティア様と同じですね。
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