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170.事件収束 “続”

 翌日に発行された王国新聞の内容は、全て事件に関する記事で埋め尽くされていました。


 強く、気高く、敵にも情け深い大賢者ティルラ・イスティル。学院に蔓延る魔物の群れを光の速さで殲滅せし魔法使い。

 

 彼女の勇姿を間近で見た者達から称賛の声が多数上がり、将来は大賢者様のような魔法使いになる! という生徒達が続出したとかなんとか。


「ぷっ、あはははっ! なにこの似顔絵! 似てるけど凛々しすぎでしょ」

「うっさいですねー。その新聞燃やしてあげましょうか?」


 御伽話に出てくるような英傑並みに祀り上げられているわたしの姿に、ソフィーは爆笑しながら記事を読んでいました。

 隣に座るケイティもまた、静かに笑いを堪えています。


「名声が高まるのは悪い事じゃないんだし、気にしないでいいじゃないの。ね、偉大なる大賢者様?」

「そうやって知り合いに揶揄われるから嫌なんですよ」


「リベアちゃんに会う前。屋敷に引きこもって、めそめそじめじめしてた頃のあんたに見せてあげたいくらいね」

「は? めそめそもじめじめもしてませんが?」


「いやー、あれはしてたわねー」

「ボクもソフィーに同意かな。あれはしてたねー」


「ちょ、ケイティまで……もういいです。それよりこの記事もうちょっとなんとかならなかったんですかね。美化具合が酷い」


「大賢者は自ずとして神格化されるものよ。先代のシャルティア様がそうだったように」

「あの人は……本物じゃないですか」


「何言ってるの。あなたも十分本物よ」

「そうそう。王国最強の魔法使いティルラ・イスティル様」


 真面目な顔して二人ともずるい。


「……むず痒いんでやめてください」

「あなたがそう言うなら」


 ニヤニヤしちゃって何がそんなに嬉しいんだが、そういえばリベアも嬉しそうでしたね。こっちは恥ずかしいのに。


 この記事を書いたのは誰か存じませんが、王国新聞は他の出版社のものに比べて誇張されすぎです。わたしはただ迅速に事件を解決しただけでそれ以上の事はしてません。


 これならリンズ氏が公表しようとしていた神級魔法に関する記事の方が、幾分マシだったかもしれません。


「はぁ……とりあえずわたしは学院が再開するまで、世間から離れる予定です」

「ま、それは正しい判断ね。王都にいても見物客が来るだけだし、あんたがいると私も実家に帰りにくいから」


「じゃあボクのところ来る? 暇でしょ? 今度はボクの仕事手伝ってよ」


「そうですねー。野暮用を済ましたらケイティの所に行きますか」

「やったー!! いっぱいこき使ってやるー」


 あなた両親に告げ口した事、まだ恨んでたんですか。


「あはは……お手柔らかにお願いしますね」


◇◇◇


 事件は幾つかの不可解な点を残して収束しました。

 一つは魔物の侵入経路と学院を襲った理由。もう一つは事件の黒幕の正体が謎のままであることです。


 ここからは事件のその後について少しお話ししましょう。


 まず王宮から派遣された使者は学院の裏で死体となって発見されました。


 その死体は間違いなくわたしを呼びに来た職員のものでした。


 次に一度はリベアが救い、わたしに招待状の挟まった新聞記事を渡したルフニア・フィリッツさんが魔物騒ぎの後、行方不明になりました。


 状況的に誘拐の線が強く、事件の重要参考人として捜索が進められています。


 またリベアが聞いたとされる謎の声。その声の主も分かっていませんし、リベアの聞き間違え、もしくは何か勘違いをしたのではないかとの見方が強いです。


 最後に学院が一時休校となった大きな理由として、生徒達が勝手に犯人探しを始めた事が挙げられます。


 事件を起こした犯人は拘束済みですが、それを手引きした者がいると生徒達は考えたようです。


 わたしもその考えには同意で、この学院に設置されている強力な魔道具の力によって非常事態除き、生徒や教師など魔道具に登録された関係者以外入れません。


 後日確認するとその装置が破壊されていました。つまり学院内に犯人グループを手引きした者が潜伏しているのです。


「これは平民が仕組んだに違いありませんわ!!」


「私はそんな事していません!!」


「そうだ! リベアは命懸けでお前達を助けたんだぞ。それを分かって言ってるのか! リベアが犯人なわけがない」


「そうだよ!! そもそもリベアちゃんは大賢者……ティルラ先生の弟子なんだから、そんな事するわけないよ!」


 わたしがリベアとの関係を公言した事により、リベアが大賢者の弟子という事実が生徒達の間に徐々に広まり、それが一定の抑止力を持ちました。


 しかし不満の矛先は依然としてリベアへと向けられ、一人の生徒が声を上げて反論します。


「じゃあ他に誰がいるんだよ!」

「そうだそうだ! お前らも貴族のくせに平民に味方するなら出ていけ!」


「平民だから疑うのかよ! リベアはお前らを助けたのにか? こんな事を言う奴らなんて、あたしだったら絶対見殺しにしてたぞ」


「ヴァネッサ・リトネスク……貴方も元平民だったわね。もしかして貴方も事件に関わっているの?」


「あ? なんでそうなる?」


「だってそんなに焦って擁護して。仲間を守ろうとしているとしか考えられないでしょう?」


 嘲笑うかのような物言いに、ヴァネッサがキレかかります。それを止めたのは一番辛いであろうリベアでした。


「ヴァネッサ、落ち着いてください。私は大丈夫です」


 というように一部の貴族が平民がやった、平民と一緒にいる貴族も加担しているじゃないか? などの声が上がりそれはそれは揉めました。


 事の中心であるわたしが出張るべきかと思いましたが、すぐにその必要は無くなりました。


 今のリベアには、わたし以外にも頼れる人達がいるのです。


「彼女達は犯人ではありませんわ。公爵家の次期当主であるこの私が保証します」

「エルドレッド嬢に同意。リベア・アルシュンの潔白はこの国の第二王女たる私が保証する。だからこの話はおしまい。いいね?」


 一喝。


 抗議の声を上げていた貴族の殆どは低級貴族だったので、上級貴族と王族の言葉には逆らえませんでした。


 それでも、こそこそと陰でリベアの悪い噂を流そうとする人達にはわたしがお灸を据えさせて頂きました。


 え? 何をしたかって? それは内緒ですよ。


 ちなみに姫様は学院が襲撃された際、近衛兵と共に王族しか知らない秘密の抜け道から脱出していました。


 本人は「守るべき民がいるのに自分だけ逃げたくない!」と脱出に否定的でしたが、敵の狙いが第二王女だった場合、人質に取られたりした方が最悪です。近衛兵の判断は間違っていません。


 彼らに説得され姫様は渋々学院を抜け出し、逸早く王宮まで伝令を飛ばしたの事です。


 まあそんな感じで姫様は自分だけ逃げた負い目があったようで、生徒による不毛な犯人探しから噂話、その他の情報操作まで事件収束に向けて大きく貢献してくれました。


 姫様、ドロシーさん。お二人の活躍により見事リベアの疑いは晴れました。でも一体誰がそんな噂話を流したんでしょうか? 


 これも学院に潜伏する敵の戦略か……色々考えてわたしなりに調査もしましたが、噂の出所は分からずじまいで事件は一応の終わりを見せました。

ここまで読んで頂きありがとうございます!


幕間はあと2話ほど続きます。今週もう一度更新するかもしれません。


ブックマーク、評価、感想、レビュー、紹介、リンクなど、もろもろ全て歓迎致します! 


 皆様の一手間が更新の励みになります、どうぞこれからも宜しくお願いします!!


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