159.『フレミーと愉快な仲間たち』
冒頭はティルラ視点。
途中からリベア視点に変わってます。
(まさか弟子がここまでわたしに飢えているとは…………想定よりも重症でした)
手を繋ぎ、ご機嫌な様子で隣を歩く弟子は、時折スキップをしながら鼻歌を歌っています。その姿は年相応の少女そのもので、とても微笑ましいです。
尻尾があればブンブン振っているに違いありません。
(でもちょっと甘やかして育てすぎてしまったかもしれませんね。まぁそれも悪くないと思える自分がいるのは事実ですが)
そんな彼女の名前はリベア・アルシュン。わたしの可愛い弟子であり、将来的には大賢者を継ぐ後継者です。
(リーナさんからの手紙を読む限り、学院生活も順調そうですね。公爵家のお嬢さんと少し揉め事があったみたいですが、穏便に済んだみたいですし、勉強面も結構頑張ってるようですね。ご褒美に今日はしっかり息抜きさせてあげましょうか)
こういう所が甘いって言われるんでしょうけど、まあ仕方がないですよね。初弟子が可愛すぎるのがいけません。
「んー? どうしました? 師匠」
感情が顔に出てしまっていたのか、リベアが不思議そうにこちらを見ています。
「いえ、なんでもありませんよ。大道芸、楽しみですねリベア」
「はい! 師匠と一緒に見るのとっても楽しみです!!」
その言い方だとわたしと一緒なら、なんでも楽しいと言っているように聞こえます。
「その通りです!!」
「あ、声に出てましたか」
やっぱりうちの弟子はすごく可愛いかったです。
◇◆◇◆◇
噂を頼りに王都の郊外にある広場に向かうとその中心にテントが張られていて、立て看板には【フレミーと愉快な仲間たち】という少々ふざけた名前が書かれていました。
テントの中に入ると今話題の芸団を一目見ようと沢山のお客さんが詰め寄っていて中はぎゅうぎゅうでしたが、なんとか二人分のスペース確保し、並んで座ります。
するとすぐに舞台の上に人が現れ、音楽が流れ始めました。
そしてそれに合わせて二人の女性が躍り出します。一人は金髪、もう一人は銀髪の少女。
二人はまるで二人で一つの存在であるかのようにぴったりと息を合わせていて、見ている人を魅了していきます。私も思わず声が出てしまいました。
それが終わるとスラッとした長い足に貴族の男性が着るようなスーツに身を包んだ赤いハットが特徴の美しい赤髪の女性が綺麗な所作で観客に礼をし、舞台に上がります。
『今宵お集まりの皆皆様! 只今よりフレミー・カートレットと愉快な仲間たちによる曲芸の開幕です!! どうぞ心ゆくまでお楽しみください!! それと幸運にも公演中にワタクシから赤い花を受け取った子犬、子猫ちゃんには特別に裏側を見せちゃいますよー! それではショーのはじまりです!!』
「「「「「うおおおおおおーー!!」」」」」
会場から拍手が巻き起こると、フレミーさんの合図と共に曲が始まり、それと同時にフレミーさんの手からは次々と色とりどりの花が出現していきます。
それを器用に操りながら空中に投げたりキャッチしたりしています。
これはおそらく魔法ではなく魔道具によるものなのでしょう。
他にも調教された獣による炎の輪っかくぐりや獣の上に乗り自らも輪っかの中に……獣はよく訓練されていてフレミーさんの指示に従っているようでした。
他にもフレミーさんが腰に刺す剣で貫かれても動じない変態的な役者など。ひやっとするシーンもありましたが、それはそれは素晴らしいものばかりでした。
「おやおや今宵も可愛らしいお嬢さん方が多いですね。うちの団員も大喜びしてますよ。野郎どもはワタクシに会えて嬉しいでしょう? え、嬉しくない? またまたそんなー。うふふふっ、最後まで楽しんでいってください」
公演が終盤に差し掛かると冒頭で話していた赤い花が――
「あ」
見事に私たちがいる場所とは反対方向に投げ入れられました。
「あーー!!」
というわけで残念ながら赤い花を手に入れる事は叶いませんでした。
「うー悔しいです」
「ま、こればっかりは仕方ありませんね。次に期待しましょう」
公演終わり、赤い花を持った数人の観客が彼女に連れられて舞台裏に案内されていました。羨ましい。けど私には師匠がいます! それで十分お釣りがくるレベルです!
「あ、ニーナちゃん!!」
その帰り道に仕事が終わったニーナちゃんと合流しました。
師匠の隠蔽魔法は効果を発揮しているようで、間近で顔を見ても誰だかハッキリとしていないようです。ニーナちゃんは師匠に軽く会釈した後、私に隣の人は誰なのかと小声で聞いてきます。
「えっとね……」
暫くガールズトーク(師匠は含みません!)に話を咲かせていると、師匠がある事に気が付きました。
「ん? リベアは同い年にも敬語使ってるんですか?」
「え、まあ、はい。癖で。それに立場的にも私は平民ですから」
ほんとはアリスちゃんを除いて、同世代の人と話すのがあまりなかったせいで、喋り慣れてないだけだけど。
「ふむ……ニーナさんでしたっけ? リベアが嫌なら無理に変える必要はないと思っていますが貴方はどう考えてますか?」
「え、師匠!?」
突然問われたニーナちゃん。なんて答えるんだろう。
「は、はい! 私は全然大丈夫です。というかそっちの方が友達らしくていいです。リベアちゃん……だめかな?」
かわいい……。
「私、平民だけどいいの?」
「それを言ったら私だって殆ど平民みたいなもんだよ。それにリベアちゃんとはその……もっと仲良くしたいから」
顔を赤らめ、俯きながら言葉を絞り出すニーナちゃん。たまりませんね。なんか変な性癖に目覚めそうです。
「……師匠! この子うちに持ち帰っていいですか!?」
「ダメです」
「へ? 持ち帰る? お泊まり?」
分かってないのも、いい。
「ニーナさん。リベアは時々やばい所があるので健全な付き合いをする事をお勧めしますよ。襲われたら反撃して大丈夫ですから」
「大切な友達にそんな事しませんって!」
ポカポカとわざとらしく殴ると師匠は「わーやられたー」と棒読みで倒れます。
「大切はお友達か……そんな事言われたの初めて。嬉しい」
「む」
その時です。遠くから馬の走る音が聞こえたと思うと、キリッとした顔になった師匠がスッと立ち上がりました。
「どうやら迎えがきたようですね。意外と早い。王室直属の文官は有能だったみたいですね」
二台ほどの馬車が繁華街を歩いていた私たちを取り囲むようにして止まり、その馬車から女性が降りてきました。
「大賢……魔法使い様ー! やっと見つけましたよ!! 帰りますよー。皆様が首を揃えてお待ちです」
「おー怖い。今行きます」
数人の護衛騎士と共に、腰に手を当て、ぷりぷり怒る猫耳のような髪型が特徴の秘書らしき人物。全然怖くなさそう。
周りの目があるからか、秘書さんは師匠の事を魔法使い様と呼びます。懐かしいですね。私も初めてあった頃は魔法使いさんと呼んでいました。
馬車に乗り込もうとする師匠に私は慌てて声を掛けます。
「あの師匠! 次はいつ……」
「遠くないうちにまた会えますよ。それじゃあ」
それだけ言うと師匠は待機していた馬車に乗り込みます。秘書さんが私たちに向けて軽く頭を下げると馬車はすぐに出発してしまいました。
魔法で上手くカモフラージュしていましたが、あれは王家御用達の馬車ですね。
ニーナちゃんもそれに気付いた様子。やっぱり最高峰の魔法学院の生徒は伊達じゃない! というか師匠が口走ってましたしね。
「え、あの馬車って……ねぇ、リベアちゃん。もしかしてだけど、リベアちゃんのお師匠様って凄い人だったりする?」
「あはは……私からすれば世界で一番大好きな師匠だけど、世間一般からみたらとっても凄くて尊敬されてる人かな。本人はともかく肩書はね」
「それってもしかして……」
勘のいい子は嫌いだよ! ニーナちゃんなら許すけど!!
この子になら言ってもいいよね? 元はといえば脱走した師匠が悪いんだし。
「うん。これは内緒だからね。私の師匠は――」
大賢者ティルラ・イスティルが来週から特別講師として学院にやってくるという話を聞いたのはその翌日の事でした。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今回出てきたは秘書さんは61話、ハードワーク師匠で出てきた室長さんです。
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「リベア可愛い!」
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