153.努力の天才と天性の大賢者
「これで終わりだァアアッ!!!」
炎に包まれた杖剣を振りかざし、オルドスが突っ込んでくる。心なしかスピードも上がっている気がします。
丁度わたしとの距離が半分を切ったあたりで、彼は杖剣を突き出してきました。
「永滅火焔っ!!」
それはオルドスが持つ最強の炎熱系魔法。彼が放てる最大火力の魔法です。
しかし広範囲の殲滅を目的としたその魔法は上級魔法の中でも高難度を誇るもので、普通の魔法使いには扱えない魔法となっています。
彼が一度負けた相手に、なんの準備もなしに挑んできたとは思えない。勝機があるからこそ、この勝負に乗ってきたのです。
おそらくわたしに勝つために、無理をして習得したのでしょう。
「うぐっ……」
その代償というように、彼の中の魔力が目に見えて消耗していました。過度な魔力消費で足元も覚束ないのかフラフラしています。
これなら魔力切れもすぐに訪れるでしょうが、それより先に彼が倒れるでしょう。
文字通り命を燃やしていますから。
まあ、命を燃やしたところで無意味なんですけど。
(師匠と手合わせしてた頃は、毎日死ぬような目に遭わされました。だからこの程度……なんともないっ!!)
わたしの前に全てを焼き尽くす炎が迫ります。
「えいっ」
杖を振り、自分の周囲一帯に結界を展開し、オルドスの攻撃を防ぐ。効果範囲を広くしたのは周囲に被害を出さない為です。
山火事や焼け野原になったら大変です。ロフロス村は自然に恵まれた空気の良い土地なんですから、火事なんて起こしたらリベアや村の皆さんに怒られてしまいます。
「……あちちっ!」
その分、結界の強度も落ちるので抑えきれない熱が肌を襲います。が、軽い火傷です。
「これも防ぐだとっ!?」
中距離でわたしを倒すのは不可能だと判断したオルドスが、気力を振り絞って炎を纏った杖剣を手に接近戦に持ち込もうとしていました。
よくやりますよ。
もうまともに歩けないでしょうに。だけど手加減してやるつもりはありません。
「オルドス、あなたではわたしを越えられない」
もう一振り。
「ぐはっ!」
たったそれだけで、わたしに斬りかかろうとしていたオルドスは後方へ吹っ飛びます。
盗賊共を蹴散らした時と同様の技。技というのもおこがましいのですが、わたしの異常な魔力量を活かした力技。通称“魔弾”です。
普通の魔法使いが同じようにやっても小石がぶつかった程度ですが、わたしの場合は大岩をぶつけられた時と同じ威力。
一般人に魔弾は見えませんが魔法使いの彼には見えています。
見えた所で従来のモノとは威力も到達速度も桁違いなので、防ぎようがありませんけど。
特に初撃がクリーンヒットしてるので追撃が躱せる筈もありません。
回避行動すら間に合わないでしょう。
わたしは息つく暇も与えず、オルドスに魔弾を浴びせ続けます。
「そいっ、そいっ、そいやっ! よくもあの時乳臭いガキなんて言ってくれましたね!! わたし、結構傷ついたんですから」
「うぐあっ!?」
私情も挟みつつ、倒れ伏すオルドスに追い打ちをかけていく。
「あと何回で気絶するかな?」
「くっ、私を……俺を舐めるなぁああッ!!」
「おっと危ない」
杖剣を振るって立ち上がってくるオルドス。まだ諦めていないようです。
「しぶといな~。まだやるってならいいよ。そっちが諦めるまで続けるから――」
わたしは身体強化と風属性魔法の併用により一気に加速します。
人間の域を軽く超えた速度にオルドスがついて来れる筈もなく――。
「なっ! はやっ――!? 待て、もう降参だ!」
あっさり降参してきました。でも残念。魔力を練っているのは分かってますよ。油断したところを不意を突くつもりですね?
「ごめん。風魔法使ってるから何言ってるか聞こえないや。どうせ暴言吐いてるんだろうし、ぶっ飛ばすね」
「ふざけるなっ! 降参だ、この私が降参だと言っている!! 聞いているのかクソガキめっ!!」
「あー全然聞こえない〜。ん? 今クソガキって言った? レディーに対して態度がなってないですよ〜オルドスさん。じゃあぶっ飛ばしますね!」
「聞こえているではないかー!!」
はい、バッチリ聞こえてます。でもわたしは悪い子なので今だけ聞こえません。
それに諦めの悪いオルドスさんがいけないんですから。
「おりゃー!!」
そのままオルドスの横腹に全力の拳を叩き込みました。
「うげぇえっ!?」
「あははっ! オルドスさん変な声出てますよー」
「ぐふぅ……」
オルドスは白目を剥きながら崩れ落ちていきます。
「あらら。痛そうですねオルドスさん。回復魔法でも掛けてあげましょうか? あ、もう聞こえていなかったですね」
オルドスはピクリとも動きません。完全に気を失っていました。
いやーわたしって性格悪いですね〜。
きっと師匠からそういう良くない所も引き継いでしまったんでしょう。
「わたしは悪くありませんよね? うん、師匠の教育が悪かったせいですから」
冗談です。
でも少しスッキリしました。昔からこの人にはムカついていたので。
「せめて他者を見下す態度さえどうにかなれば、わたしにもやりようはあったんですけど」
エリート意識の塊としか思えないオルドスさんに言っても無駄ですけど。
「これは一旦没収っと……うわっ、半信半疑でしたが本当に練習してたんですか貴方……」
今度こそ動けなくなった彼の元に歩み寄り、ゴツゴツした男の人の手から杖剣を取り上げる。
そこには努力した人の証である無数のマメがありました。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
何かの為に努力を続けられる人って尊敬します。その点オルドスさんは頑張っていました。ティルラさんには敵いませんでしたけど。
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