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150.憂いはなくしておきましょう

 フィルレスム魔法学院の入学式は伝統ある荘厳な式典として行われます。

 学院長による歓迎の言葉から始まり、新入生代表の挨拶、各学年の首席による答辞があり、最後に生徒会長の挨拶が行われます。


 貴族の方が殆どなので、基本的に関係者以外立ち入る事は出来ませんがそこは王族のコネを使ってなんとかしました。


 わたしの事情を知る学院関係者の方々からは、場が混乱するので絶対に出ていかないでと懇願された後、教師達が座る席に案内されました。


 言われなくても目立つつもりはありません。だってわたし生粋のコミュ症ですから!!


――新入生代表。ユリア・デレレーク・シンシア・フィルレスム。前に。


「はい」


 アナウンスと共に一番前の席に座っていた王女様が立ち上がり、壇上へと上がります。


(新入生代表はやはりユリア様ですか。成績一位である事は勿論ですが王女である事も大きいようですね)


 それにこれは暗黙の了解として決まっていた事。たとえ試験の結果でリベアが勝っていたとしても変わらなかったでしょう。


 壇上に上がったユリア様はとても堂々としており、アリスである時とはまるで別人のように感じられました。


 凛とした態度で前を向く姿はとても美しく、その身に纏う雰囲気には高貴さを感じさせます。まさに王女様というに相応しい姿。


「――以上で新入生代表の言葉とさせて頂きます」


 パチパチパチパチ。


 スピーチを終えると、会場中から盛大な拍手が起こりました。


 わたしもその一人です。


「ありがとうございました」


 彼女は深々とお辞儀をして自分の席に戻ります。


 壇上から降りる際、彼女の視線が教師陣に向けられました。王族ですからね。わたしがお忍びで来ている事は両親から聞いていたのでしょう。


 あっ、と思ったのも束の間。


 わたしと彼女の視線が重なります。


 すると彼女は悪戯っ子のような笑みを浮かべて、他の生徒に見えないように小さく手を振ってくれたのです。


 ドキッ!


(……もうっ、心臓に悪いですよユリア様。あんな笑顔を向けられたら勘違いする人が続出します)


 隣に座る男性職員なんか顔を真っ赤にして固まっていますし、後ろの男性教師なんて鼻の下を伸ばしてニヤけ顔になっています。


(リベア一筋と決めていなければ危うくやられていましたね)


 彼女は例の一件でわたしとリベアの事を気に入ったらしく、事あるごとにちょっかいを掛けてくるようになりました。


 そういう時の言い訳は決まって「今はアリスだからいいの」だそうです。


 リベアの事を気に掛けてくれているのは嬉しいんですけど、こういった大事な式典でからかってくるのはやめてほしいですね。


(本当に困った王女様です)


 そんなこんなで代わる代わる式が進み、一時間程で入学式は閉会となりました。


◇◇◇


「久しぶりに一人っきりですねー。屋敷に引きこもっていた頃を思い出します」


 学院の入学式から程なくしてわたしは一度村へと戻り、リベアは学院生活が始まるので王都に残りました。


 彼女は学院に通う間、寮のお世話になるのでロフロス村とは暫しお別れです。村から出立する際はご両親が泣きながら見送っていらっしゃいました。


 ソフィーやフィアも同様に王都で商売に勤しむそうです。なんでも自分の店を立ち上げたとかなんとか。暫くはそっちにかかりっきりになると言っていました。


「ミーアさんも契約通りシーヴ婆の元に帰ってしまいましたし。こう、広い家に誰もいないと途端に寂しくなりますね」


 彼女による魔力調整が師弟共にとても良かった事を伝えるとシーヴ婆は「そりゃ良かった。次は正式にどうだい? 給金はこれくらいで」と金額を提示されました。


 高過ぎだろ! と思いましたが、調整士も仕事です。それにミーアさんは正規の調整士。腕も良く、将来有望。師匠もわたしの調整をしてもらう時、シーヴ婆に多額の報酬を払っていました。

 

 そう考えると今シーヴ婆が掲示してきた金額は、腕利きの調整士としては安いほうです。ほんとにその額でいいのか問うと新米にはこれくらいが丁度いい。若いうちから贅沢してると驕り高ぶってしまうからだそうです。

 それならいいかとわたしはその場で契約を結びました。


 彼女はシーヴ婆による最後の修行を終えたら戻ってくるそうなので、その時正式に大賢者の専属調整士として雇う事になるでしょう。


「わたしとソフィーも16歳。リベアも14歳になりました。一年とはあっという間ですね」


 寮で一緒になる同室の子とは入学式が終わった後に顔合わせしており、リベア的にも好印象な子だったみたいです。わたしも一目見かけましたが平民を見下すことなく普通に接してくれていて優しそうな子だと思いました。


 意外にもクソな貴族って少ないのかもしれませんね。


「わたしも教師として学院に赴くためにそろそろ出発しませんとね。あと二週間程で向こうの準備が整うという通達もきましたし。いよいよ正式にフィルレスム学院で教鞭を振るう事になります。教師の仕事は初めてのことですが、まあなんとかなるでしょう」


 既に有力貴族達の間では、時の人である大賢者ティルラ・イスティルが学院にやって来るという噂がまことしかやに囁かれています。


 噂の出所は分かりませんが、わたしの予想だと王家が意図的に流しているのでしょう。


 王都中に広まるのも時間の問題ですね。


「それと、そろそろ彼が村に到着する頃でしょうか? ケイティから統率協会に動きがあったという連絡が二日前にありましたし」


 わたし自身、王都に行く全ての準備が終わっているわけですが今日ここに残っているのには理由がありました。


(懸念事項は早めに潰しておきませんと)


 魔物は結界で対処できますが人間は別です。わたしとリベアの故郷ともいえるロフロス村が、わたし達がいない間に襲われたり、嫌がらせされたりしたら堪らないですからね。


「おや? この二つの反応は……」


 今日はもう来ないかなー? と窓を眺めていた所、もう何度目かになるいやーな魔力反応を村の外から感じました。もう一つの反応は初めて感じますね。


「さて、行きますか」


 今回は魔力を絶っていないようで、簡単に気配を捉える事ができました。というか魔力を高めて分かりやすく「こっちに来い!」オーラを出してます。


 魔力反応を追って丘の上までやってくると、そこにはゼーハーゼーハーと肩で息をする女の子と額に青筋を浮かべまくった魔法統率協会所属、序列三位のオルドス・プラッドさんがおりました。


「ティルラ・イスティルゥゥー!!」

「お待ちしていましたよ。オルドスさんとその可愛い助手さん」 


 さぁ、大賢者としてのお仕事開始です。

ここまで読んで頂きありがとうございます!


軽く主要人物達の現在の年齢を公開。


リベア14歳。ティルラソフィー16歳。

フィア15歳。

アリス14歳

ケイティ15歳となっています。


ブックマーク、評価、感想、レビュー、紹介、リンクなど、もろもろ全て歓迎致します! 


 皆様の一手間が更新の励みになります、どうぞこれからも宜しくお願いします!!


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