148.受験生リベアと初めてのお友達
「……なんですのあなたは? 部外者は黙っててくださいまし。これは私と彼女の問題ですわ」
第三者から水を差され、あからさまに嫌そうな顔をするドロシー。
そんな彼女に対し、赤髪の少女は肩をすくめながら続けます。
「いいや、あたし達にも関係があるから言ってんだよ。ここに来てるやつの中には今日の試験に命を賭けてる奴だっている。あたしもその一人さ。そんな大事な日に揉め事を起こされて中止にでもされちゃ敵わないからな。それに決闘するにはもう遅い」
「何が遅いと言う――っ!」
ドロシーが言い終える前に、廊下からバタバタという複数人の足音が聞こえてきました。
「ここかーっ!? 試験当日に決闘をおっ始めようとしているバカ受験生共がいるのは!」
「ドロシー様! 不味いですよ!! 学院の教師が騒ぎを聞きつけてこっちまでやって来ています!」
取り巻きの一人が叫ぶように言うと、ドロシーは苦虫を噛み潰したような表情になります。
「ほらな? それと途中から聞いてたんだが、ムカつくなら試験で白黒ハッキリつければいいだろ。順位だって出る事だし。負けた方が自分が間違っていたと謝る。強い方が正義。魔法使いらしいだろ? それに特待生ちゃんが実力を見せればお嬢様だって納得するしかないだろうしよ」
彼女は私にも同意を求めるようにこちらを見ます。
――正規の試験で決着をつける。そう言われてしまえば平和主義な私は頷く他ありませんね。
「私は……それでいいです。大切な人から貰った服を侮辱されたのは許せませんけど、謝ってくれるならなんでも」
「お嬢様。いや、ドロシーはどうだ?」
「ドロっ――……ええ、そうですわね!! 私もそれでいいですわ。リベア・アルシュン。貴方とはこの試験で決着をつけましょう。私が負けたら服の事は謝りましょう。そんな事は万が一にもありえませんがね。貴族と平民の圧倒的な差を見せつけてやりますわ! それと私の名前を呼び捨てしたあなたのお名前は?」
「あたしの名か? ヴァネッサ。ヴァネッサ・リトネスクだ。これからよろしくなドロシー」
快活に笑いながら手を差し出すヴァネッサさん。
わぁ、大賢者の弟子が言うのもなんですが良い人過ぎますよこの人。いえ、何も考えてないお馬鹿さんと表すのがいいかもしれません。
「なっ、誰があなたなんかと!」
そんな彼女の態度がドロシーの癇に障ったのか、はたまた上位貴族としてのプライドを刺激されたのかはわかりませんが、当然のように差し出された手を弾きます。
「ヴァネッサ・リトネスク……確か、リトネスク家に新しく迎えられたという養女ですわね。馴れ馴れしいにも程がありますわ。まさかあの厳格で有名なリトネスク家の次期当主候補がこんな品性のない、しかも貧相な方でしたとは驚きですね。リトネスク家も質が落ちましたわね」
「あ?」
ドロシーの言葉には確かな侮蔑が込められていました。それと同じくらい彼女の胸と自分の胸を見比べて憐んでいるご様子。
まぁグラマラスボディのドロシーからみればそうでしょうね。ヴァネッサさん、師匠よりないというかほぼ平坦ですし。
「おい、貧相は余計だ! あとあたしの悪口を言うのはいいがリトネスク家を悪く言うのは許さねぇぞ」
対するヴァネッサさんは心外だとばかりに眉を吊り上げます。
そして怒りを表すかのように魔力が溢れ出しました。
かなりの魔力の持ち主のようです。貴族の家に養子として迎えられるくらいですから優秀なんでしょうね。
「あら怖い。狂犬さんには近づかない方がよさそうね」
「そうですよドロシー様。噛まれて病気を移されるかもしれません」
「ドロシー様に何かあってはいけませんから、もう行きましょう」
「そうね。ではリベアさん、ヴァネッサさんご機嫌よう。また会えるのを楽しみにしてるわ」
取り巻きに連れられドロシー達は去っていきます。
その背中が見えなくなったところでヴァネッサさんが大きく息を吐きました。
「ほら、お前もボケっとしてないでズラかるぞ。捕まったらあたしら纏めて事情聴取だ」
「それは嫌ですね。私も逃げましょう」
彼女、ヴァネッサさんによる仲裁と後からやってきた教師達により事態は収束し、ドロシーとの決着は試験でつけることになりました。
その試験自体も騒動のせいで若干開始時刻が遅れましたが、問題なく行われるそうです。王族もいますしね。中止はないと最初から思っていました。
勿論、試験開始前に決闘騒ぎの渦中にいた私とドロシーとその取り巻き達。そして仲裁してくれたヴァネッサは他の受験生による報告により指導室にお呼ばれされ、時間ギリギリまでたっぷりお叱りを受けましたが。
「「「はぁ……」」
時間差で指導室を出た私とヴァネッサはため息をつきます。すごく疲れました。
始まる前からこんなに疲れているようでは最後まで持たないかも知れません。
自分が蒔いた種なんですけど。
「あ、そうだリベア。通常見届け人のいない決闘は無効になるから気をつけろよ。勝っても無効にされちまう」
「有益な情報感謝します。ヴァネッサさんもありがとうございました。お互い頑張りましょう」
「おう、あたしの事はヴァネッサでいいぜ! また試験後に会おうな!」
「はい。是非にヴァネッサ」
なんだか少し恥ずかしい気もしますが、嬉しい気持ちの方が大きいです。なにせ学院で初めてのお友達が出来たんですから。
彼女とは握手を交わし、事件後に会う約束をして別れました。
試験会場は別なので一緒に行く必要はありません。
「さ、大賢者の弟子として実力を示さねば! 師匠達をがっかりさせたくありませんからね!!」
私は他に誰もいない廊下でそう決意し、試験へと臨みました。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
王族であるアリスちゃんを除けば、リベアのお友達はヴァネッサが初めて! ここからもう少しお友達が増える予定です。
次回の更新で幕間は終了。本編の再会となります。
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