145.学院入学
入学試験から程なくして、正式な書類を持った使者と共にリベアの合格通知書がロフロス村に届きました。
「――この度はご入学本当におめでとうございます。こちらがリベア・アルシュン様の合格通知書となります。したがってリベア様の後援者の方はこの書類にサインを……」
「ええ、ここでいいのね?」
「はい、大丈夫です。ではリベア様。本校は貴方様のご入学を心よりお待ちしております」
「はい! 王都からここまで来てくれてありがとうございました!!」
恭しくお辞儀をする使者に、リベアが元気良く返事をします。
「いえ、仕事ですので。それでは失礼致します」
そう言い残して、使者は帰って行きました。
わたしはそんな様子をずっと眺めていただけなのですが、ソフィーと共に書類の確認を終えたリベアが一目散にわたしの元へ駆け寄ってきます。
ふむ、撫で撫でをご所望のようです。仕方ありませんね。
「見てください師匠ー!! やりました!! これで師匠と一緒の学校に通えます」
飛び跳ねるように喜ぶリベアの姿に微笑みながら、合格通知書を覗き込みます。そこには確かにリベアの名前が書かれていました。後見人の所にはソフィーとそのご両親の名が。
(グラトリア家は伯爵家ですし、後見人としては妥当でしょう)
リベアは表向きにはグラトリア家の庇護下にいる事になっていて、今回特別枠で魔法学院の試験を受けれた事も彼女の確かな実力と彼等の支援によるものとなっています。
弟子が学院に入学するにあたって、後見人の存在は必須でした。
いくら魔力量が多く、稀有な才能があってもただの村娘であるリベアが王族も通う王国最高峰の学院に入学するのは、立場上無理があります。
しかし難しい面もありました。平民の後見人となる事は、それだけ貴族としての外聞も悪くなるのです。
なにせ平民を養子として迎え入れたり、その後見人をしている家は決まって魔法が使える子供がいません。
つまりその家の息子、娘は養子や後見人にした子供よりも劣るというレッテルを他家に貼られてしまうのです。
実際、過去に平民の養子を迎えた貴族家の当主が、その事を揶揄されて没落したという事もあったそうです。
つまり貴族にとって平民とは貴族社会において最底辺の存在であり、その地位を向上させる為に尽力する事などあり得ない事だと認識されているのです。
中には本当に善意でやっている家もあるようですが……まあ、それは稀な例ですね。
そんな風当たりの中、グラトリア家が名乗りを上げてくれた事には感謝しかありません。
(陛下が目をかけてくださってるお陰で、風当たりも最小限で済みそうですしね)
聡い貴族なら、王家と伯爵家が懇意にしてる事はあの祝典の席順で分かっている筈なので、下手に手を出す人は少ないでしょう。
それにわたしの予想だと、陛下から陞爵を受けて伯爵から侯爵に上がる日も近いと思います。
ソフィーには真っ向から否定されましたけど。
「改めておめでとうございます、リベア。教師と生徒として、ですがね」
「はいっ!」
「これから忙しくなりますよ? 入寮の準備をしなくてはいけませんから。っとその前に両親にも見せてきたらどうですか?」
元気良く返事をするリベアの頭をもう一度撫でてから、視線を外に向けます。
「はい、もちろんです!! すぐに行ってきます!!」
「行ってらっしゃい」
窓から彼女が両親の元に向かって行くのを見届けた後、わたしは同じ空間にいる幼馴染に話しかけます。
「リベアは伯爵家の養子というわけじゃないけど、ソフィーとリベアは書類上義理の姉妹みたいなものですよね〜?」
「……なによ、嫉妬してるわけ? あんたじゃあの子の後見人は無理でしょ? それに、そんなに気になるならあんたもうちに来る?」
わたしの軽口に、少しだけ不機嫌そうな顔をしながらそんな事を言ってきます。
それに対するわたしの答えは決まっています。
「書類上だけであっても貴族になるのは御免ですね。ソフィーやケイティの話を聞いてるだけで、貴族は色々面倒だって分かってるし。リベアの事だってそうだよ」
わたしや王家が選奨している子だってバレれば、邪推する貴族や協会の人間が現れるでしょうから。リベアが平穏無事な学生生活を送るためにもこれは必要な事なのです。
「あら、素直なこと……。私としてもあんたが妹なのはちょっと嫌だわ」
ほんとに嫌そうな顔をしてそんな事を言う彼女に、わたしも思わず苦笑してしまいます。
「ひっどいですね!? というかわたしが妹なんですか?」
「冗談よ。でも親友になんの相談もせず、ショックで屋敷に引きこもるくらいには手のかかる子だと思っているわ」
「うぬぬっ……それを言われるとこちらは何も言えませんね」
「ま、私の事はそのくらいでいいけど、リベアちゃんのことはちゃんと見てあげなさいよ」
「ええ、言われなくても。あの子はわたしの大切な愛弟子ですから」
「そう……大切な、愛弟子ね」
「?」
彼女は意味深に笑うと、話は終わりだというように背を向けて部屋から出て行きました。
◇◇◇
「楽しかったですねー師匠」
「えぇ、もう食べられません」
お腹周りをさすり、腰を下ろします。もう果実一粒入りません。
「師匠は食べ過ぎですよ」
村全体を見渡せる丘の上。そこにわたし達はいました。
入学の知らせを受けたその日は、村中でてんやわんやの大騒ぎ。祝福の声があちらこちらから聞こえ祭りの主役であるリベアも満更ではなさそうでした。
「この村に住んでて、こんなに幸せで楽しい時間を過ごせるなんて夢みたい……これも全て師匠のおかげです。ありがとうございます!!」
嬉しさ半分、恥ずかしさ半分といった表情でそんなことを言うリベアの姿は年相応の少女でとても可愛らしいものでした。
「リベアが勉強頑張ったからだよ。でもね、これからもっと楽しくなるよ?」
「はい、楽しみです! これからもずっと師匠の側にいます!!」
「よろしくね。わたしの可愛い弟子さん」
そう言いながらリベアを抱きしめると、彼女も優しく抱き返してくれました。
それから数日後。いよいよリベアが学院に入学する日がやってきました。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
これで魔法学院編 前半戦が終了となります。
学院編 中編ではリベアとティルラの視点を交互に交えながら二人の波瀾万丈の学院生活をお送りする予定です。
次章開始まで暫くお待ちください。
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