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137.弟子は天使でした

「ケイティ、今回は本当にありがとうございました。報酬はメイさんに渡しておいたので後で確認してください。おまけでわたしが素材採集している中で見つけたレアな品を付けときましたので」


「んん……もう食べられないよぅ〜」


「まあ聞こえてませんよね。メイさん。後の事はよろしくお願いします」


 作業台の上に突っ伏したまま、むにゃむにゃと寝言を言うケイティに感謝の言葉を伝えながら、今回の報酬としてメイさんへ渡してもらうようにお願いしました。


「はい。お嬢様が起きられたら必ずお伝えします」


 風邪を引かないよう肩に毛布を掛けてあげてから、細心の注意を払って部屋を出ます。起こすと可哀想ですからね。


(ケイティ……急な依頼だったのにとても素晴らしい仕事をしてくれました。やっぱり彼女は貴族令嬢より、錬金術師の方が性に合っているんでしょうね)


 朝方近くまで作業をしていた為か、彼女は完成した後、すぐに眠りについてしまいました。

 朝食時に一応声をかけたのですが、起きる気配が無かったのでそのまま放置している内にわたしの出発時間が来てしまったという訳です。


「では、お世話になりました」


 スレミアン家の方々にお礼を言って、もはや故郷とも呼べるロフロス村に向けて出発します。


「ふん、ふふ〜ん♪」


 帰郷の途中、わたしは終始ご機嫌でした。

 幼馴染の頑張りもあって、リベアの新衣装が予定よりも早く完成することができだからです。つまりその分早くリベアに会えるというわけです。



「久しぶりに愛弟子(リベア)に会えます♪」



 はい、正直に申し上げます。この時のわたしは完全に浮かれていました。この後に待っている事なんて全く予想していなかったんです……。


 ちなみに、リベアに会いたい一心でテンションが上がりまくり、道中ずっと鼻歌を歌い続けていたのですれ違う人達には少し引かれてしまいました。


◇◇◇


「戻ってきましたー」


 そんなこんなで、あっと言う間にロフスロ村のすぐ近くにまで辿り着きました。


 そのまま村はずれの丘の上に立つ我が家に向けて足を進めます。


 なんだか自宅に近づくにつれドキドキしてきました。もう少しでリベアに会えると思うと浮ついた気持ちが抑えられません!


「さぁて、どんな顔をするでしょうか?」


 リベアの性格上、「師匠! 師匠っ!! 会いたかったですー!!」と泣きついてくれるのではないかと予想しています。そして感動の再会の後はいつも通り一緒にご飯を食べたり、一緒に遊んだり、ああ楽しみですね!!


 なんだかんだ言って、最初の予定より長引き二週間近く掛かってしまいましたから。


(スレミアン家に着いた時に、一度近況を綴った手紙がソフィー経由でリベアに届いている筈なので、わたしがいつ帰ってくるか大体分かってるとは思いますけど……あ、家が見えてきました)


 いよいよだと思うと、嬉しくなってスキップしてしまいそうになります。


「…………」


 ……いえ、嘘つきました。もうスキップしています。


 先程から顔も緩みっぱなしです。

 師匠なので少しはキリッとしていようと思いましたが無理でした。

 だって、久しぶりなんですよ? そりゃこうなりますよ。仕方がないじゃないですか。


 それに、こんなだらしない表情をしているところを見られたとしても今更ですからね。


 そして、ついに家に辿り着いたわたしは勢いよく玄関の扉を開きました。


「ただいま帰りましたー!」


 期待に胸を膨らませていたわたしを出迎えたのはリベアではなく、メイドのフィアでした。


「お帰りなさいませティルラ様」


「あ、フィアでしたか。リベアは?」


「リベアさんなら今リビングにいらっしゃいますよ。あとあからさまに表情を落とすのやめてください。フィアも傷つきます」


「今、表情に出てました?」

「はい。それはもう、とてもはっきりと」 


「すみません」

「いえ、それほど気にしてませんので。どうぞ会いに行ってあげてください。荷物は預かります」

「ありがとうございます」


 荷物を彼女に預け、リビングに向かうとリベアが背を向けて立っていました。

 

「リベアっ!」


 彼女はこちらを見ると、ぱっと笑顔を浮かべたのですが、すぐにハッとした表情に変わり立ち上がり駆け寄ってきました。


「師匠っ!!」


 そのまま飛び込んでくるかと思ったのですが、彼女は何故か途中でピタリと止まりました。


「リベアどうかしましたか?」


 不思議に思って声を掛けると、彼女は前髪の毛先をくるくると弄り、何やらそわそわし始めました。

 

 それになんだか頬も赤く染まっているような……。


「師匠。何か気付きません?」


「何か? ……あっ!」


 いじらしい態度を取るリベアに首を傾げていると、彼女が何を言わんとしているのかに気付きました。

 彼女の服装と髪の長さです。


 最近は長くなって後ろで一つに結んでいたリベアでしたが、今はわたしと同じくらいの長さに切り揃えられています。というか殆ど同じ長さですね。


(さ、最高です! ここは天国でしょうか!?)


 リベアはわたしを誘うように、その場でクルリと回って見せてくれました。


「えへへ、気付きました? 気づいちゃいましたか? どうです? 似合ってますか師匠?」


 あ、天使ですねこの子。


「はい。凄く可愛いです。とても似合っていますよ、髪も……制服も」


 服に関しては、春から通う予定の学院の制服に身を包んでおります。ソフィーが事前に用意したであろうそれはサイズもぴったり合っていました。


「う、嬉しいです。ありがとうございます!」


 褒められて嬉しいのかリベアは満面の笑みを浮かべました。


(はぅ……。眩しいです。リベアのあまりの可愛さに目が潰れてしまいそうです)


「合格してもないのに着るのは気が早いかもしれませんけど」

「そんな事ありませんよ。リベアならきっと合格します…………」


「師匠っ……!」


 よーく彼女の顔を見ると、薄くではありますが化粧も施されていることが分かりました。フィアにやってもらったんでしょう。


「し、師匠。そんなにしげしげと見つめないでください」


「すみません。リベアが可愛くなったものだから、つい見惚れてしまいました」


「え!? ……あ、ありがとうございます」


 素直に思った事を言っただけなのですが、リベアはさらに顔を真っ赤にして俯いてしまいました。釣られてわたしの顔も赤くなってしまいます。


「弟子の成長は早いと聞きますが、ちょっと目を離した隙にこうも大人の階段を登るとは……ええぃ、こうしてやります!!」


「あ、やめてくださいよぅ師匠ー!」


 その場の雰囲気を誤魔化すように、これでもかというほどわたしは弟子の頭を揉みくちゃにするのでした。

ここまで読んで頂きありがとうございます!


 というわけで師弟揃ってお揃いの髪型(4話冒頭参照)になったわけですが、ティルラはかなりの癖っ毛で手入れもあまりしていなのでビヨンビヨンです。


 その反面、毎朝髪を梳かしているリベアの髪は艶々です。

同じ髪型でも全然違った様に見えますね。


今回は制服姿のリベアを思わず抱きしめてしまいたくなるティルラさんをお送りしました。


「面白い」

「続きが気になる」

「リベア可愛い!」

「尊い!!」


と思ったら、広告下↓の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると嬉しいです。


感想も待ってます!

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