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129.次なる採集地へ

「それじゃあ、ここが大樹だよ」


「おおっ〜!!」


 近くでみるとまさに圧巻。これほど大きな樹を見たのは初めてです。

 わたし達の何十倍も高く、立派に聳える大樹の気高さは言葉では表せないほどの神々しさというか、神がかった何かを感じました。


「ボサっと突っ立ってないで早くこっちに来な」

「あっ、はい」


 ヴィクターさんの後に続き、大樹の根元から幹の中へと入ります。そこは外よりかなり涼しくて、とても静かで落ち着く場所でした。そして奥に進むにつれて次第に木漏れ日が強くなっていき、やがて開けた場所に出たのです。


「ここは……」

「綺麗だろう? ここはあたし達の先祖様が作ったと言われる大樹への道さ。世界の始まりからあるとも言われているけど、それが本当かどうかは分からないね」


 目の前に広がる光景は幻想的で、思わず息をするのを忘れてしまう程でした。色とりどりの花々に囲まれるようにして聳える大樹からは、不思議な魔力を感じるのです。


「ここにあんたの師匠を連れてきたのがつい昨日の事に思えるよ。それが今じゃ、あの娘の弟子が立派な大賢者になって、もう新しい弟子をとってるのかい。人間の世界は時間の流れが早いねぇ。あたしも年を取った……」


「そんな。わたしなんてまだまだ未熟者ですよ」


「そうさねぇ。シャルティアに比べたから少し気概が足りないかねぇ」


「気概に関してはあの人は別次元ですよっ」


 聞くところによると、エルフの里に問答無用で押し入ってきた師匠からは全く敵意を感じなかったようでどう対処すればいいのか困っているうちに大樹の枝を奪われたらしいです。


「大樹はエルフ族の人たちにとって守り神様のような存在なんですよね? それを切られてしまい怒ったりしなかったんですか?」


「それは勿論怒ったよ。でも当時は魔王軍がやって来ていてそれどころじゃなかったからね。守り神様の事は信じていたさ。だけどね、いざその時になって信じられるのは自分の力だけなんだよ」


「そういうもんですか」


「そういうもんなんだよ」


 その後きっちり話し合って、大樹の枝をもらう代わりに師匠はエルフの里に進行中だった魔王の手下をぶっ飛ばしたとのこと。

 

 帰るついでに魔王軍を蹴散らせるって、どれだけ強かったんですかねうちの師匠は。


 わたしも修行の一環として、何度も模擬戦を挑みましたが勝てた例がありませんでしたし、後半の方はもうそういうもんだと思っていた程です。


 衰えが見えなかった……いえ分からなかったというべきでしょうね。それだけに師匠が急死した時にはかなりのショックを受けました。


 リベアと出会うまでは一人で立ち直れないほど、あの時のわたしはひどく病んでしまいましたから。


 ヴィクターさん達は、そんな破天荒な師匠が世間では大賢者と呼ばれている人物だと後で知って大層仰天したそうです。


 まぁ、分かります。大賢者と呼ばれるような人物が師匠みたいな人だとは普通思いませんからね。


 わたしも引き取られてから数日間は疑ってましたし。


 そんな事を考えてるうちに、大樹の最奥部へ到着。


 元々用意されていたのか、手頃なサイズにカットされた大樹の枝が一つ一つ丁寧に並べられていました。


「また来た時に勝手に切られたら困ると思ってね。いくつか用意してたのさ。ここにあるのは好きなだけ持っていきな」


「ありがとうございます」


 早速、鑑定していくとそのどれもが素材としては最高で文句のつけようがありませんでした。


 おそらく普通に暮らしている人がこれを売ったら、一生遊んで暮らせるぐらいのお金が手に入るでしょう。この枝にはそれくらいの価値があります。


(そんな高級な杖を使えるって、リベアは夢にも思っていないでしょうね)


 あの子には素材の事は黙っておいた方がいいでしょう。きっと杖を使えなくなっちゃいますから。


「ふむふむ。これとこれと、これ。あとこれも頂きますか」


 杖の材料と失敗用として、三つ、四つ選び、アイテム袋にしまいます。


 このアイテム袋は里を出た後に【次元収納】に仕舞う予定です。その方が安全ですから。


「ん。それだけしか持っていかないのかい? あいつの弟子にしてはずいぶん無欲じゃないか?」


「わたしは師匠とは違いますので」


 ほんとは、ほんとはね、すご〜く欲しいんですよ!? だってこれを売れば一生遊んで暮らせるんですから! でも師匠だってわたしの分を除けば、残りは売って孤児院や被災した人達に分け与えていました。


 だから自分だけ贅沢するわけにはいきません!


「そうかい。なら里に戻るとしようか。みんな、戻るよ」


 初めてここに来たエルフ族の人達も多いのでしょう。みな思い思いに大樹の中を見学していました。


 一番最初に戻ってきたのはリリアナちゃんでした。彼女は元気よくヴィクターさんに抱きつきます。


「なのー! リリ、初めて大樹の枝に入ってすっごく楽しかったの!!」


「それは良かったよ。でも今度は正式な手順を踏んで入るんだよ。ここは神聖な場所だからね」


「分かってるの。ヴィクターおばさん!」

「だったらいいんだよ」


 仲睦まじいですね。


 わたしも帰ったらいっぱいリベアに甘えましょう。あの子が側にいると安心するんですよね。まるで師匠が側にいてくれてるような気持ちにしてくれます。師匠とリベアは全然違うので変な感じなんですけどね。というかリベアの方が天使ですし。


(わたしの中でリベアは師匠のように安心できる存在、なんでしょうね)


 そんな風にリベアとイチャつく妄想をしておりますと、わたしの隣に誰かがやってきました。おや、シスコン気味のお姉さんではありませんか。さては妹の匂いを嗅ぎつけてやってきましたね。


「……なぁ、大賢者様。どうしたらもっと妹と仲良くなれると思う?」


「まずはそのシスコン癖を直したらどうですか? 頬が緩みまくってますよ」


 シスコンはかなり重症のようでした。もうこの人シスコンでいいですね。


◇◇◇


――せっかくだから1日くらいゆっくりしていきなされ。


 エルフの集落に戻ってきたわたしは、長老さんのご好意を賜り、彼ら彼女らから大変歓迎されました。


 まず最初にリリアナちゃんの家に招かれました。中へ入るとそこは、木の香りに包まれた可愛らしい部屋になっており、思わず目を奪われてしまいました。


 ちなみにシスコンの部屋は妹の木彫りや○○でいっぱいでした。ちょっと恐怖を覚えました。妹さんがあまり部屋に入りたがらない理由がわかっちゃいましたね。


 午後はリリアナちゃんを含めたエルフ族の子供達とたくさん遊びました。子供達の話によると近くエルフ族の祭りがあるようでした。


「だいけんじゃさんには絶対きて欲しいの!! リリ歓迎するの!!」

「ワタシもティルラ様のお友達にも会いたい!」


「わたしもその、話に出てくるリベアちゃんに会ってみたい……です」


 リリアナちゃん達にそう言われてしまったら、行かないわけにはいきません。わたしの考えはすぐまとまりました。


「エルフ族のお祭りですか。時期的にリベアの受験が終わった頃でしょうし、ソフィーやフィアも連れてきますか。皆さん待っててくださいね!」


「「「「やったー」」」のー!」


 その日は子供達と一緒に夜を明かしました。子供の体温というのはとても温かいものでしたよ。


 あ、安心してください。変なことはしてませんよ。しいて言えば夜這いしてきたシスコンから子供達を守ったくらいです。本当に懲りない人と思いました。

 

 翌日、シスコンは長老さんの手によって吊るされておりました。


「ありがとうございましたー! またお祭りの時に〜」


「だいけんじゃさん。待ってるのー!!」

「「「待ってまーす!!」」」


「気をつけて帰るんだよ」


「大賢者様ー! 今度会った時はサイン書いてくださいねー!」

「人間も案外悪いもんじゃないんだーってわかったまた来てくれると嬉しいな。イリーナは渡さないけど

「あ、ミルティ抜け駆けずるい! あたしも大賢者様のこと待ってるよ! ミルティは渡さないけどね!」


「今度はあたしとも寝てねー。可愛い大賢者さん♡」


「あははっ、本当にお世話になりました。それでは、また――」


「バイバイなのー!!」


 エルフ族総出で見送られ、無事大樹の枝を手に入れたわたしは次の採集地に向けてエルフの里を出発するのでした。


ここまで読んで頂きありがとうございます!


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 皆様の一手間が更新の励みになります、どうぞこれからも宜しくお願いします!!


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