125. エルフの里到着→連行!?
「さーて、樹齢二千年の大樹はどこに……うへぇ、この中から探すんですか。思ったよりも木の種類が多い」
目的地に着いたはいいものの、見渡す限り大きな木で囲まれていて、長い年月を生きた木がどれかなんて素人には判断がつきませんでした。
(ここは現地の人に聞くのが一番ですね)
木の上の方には住居らしき物が見えることから、エルフ族の人が住んでいる事は間違いないようです。
さてどうやって登ったもんかと辺りを散策してみると、少し行ったところに木で出来た階段を発見しました。
「自然を活かした素晴らしい技術力ですねー。人には到底真似できませんよ」
感心しながら悲鳴をあげる身体に鞭を打って、うんしょ、よいしょと階段を登りきります。第一の階段を登り終えた所で、腰を下ろし、顔を上げます。
目の前に広がるのは本で見るような幻想的な風景――ではなく、何とも殺伐とした景色でした。
木の上に作られた木製の家が立ち並び、まるでツリーハウスのような見た目になっていましたが、あちこち壊れているようで、修復された跡が見受けられました。
そしてその家の前には、子供用の小さな弓矢を構える幼い少女が……。
「あ」
「……むぅ、しんにゅうしゃさん。うごかないでくださいなの」
少女と目が合いました。警戒するように、キリキリっと弓を引き、こちらをじっと見つめています。
「えっと、こんにちわ?」
「…………」
どうやらわたしは侵入者扱いされているようです。まぁ確かに無断でお邪魔していますからね、しょうがないかもしれません。しかしこんな幼女相手に戦う気も起きず、とりあえず友好的に話しかけてみる事にしました。
「あの、わたしは別に怪しい者じゃないですよ。ここにあるっていう、大樹の枝を探しにきただけでして……」
「…………むぅ」
まだ納得いってないご様子。ですがもう一息な気がします。
「あとわたしは大賢者です! 正義の味方ですよ!!」
決めポーズまでして、子供相手に何をやっているんでしょうわたし。
しかし効果はあったようです。少女は『大賢者』という言葉に反応を示しました。
「だいけんじゃ……さん? まぞくから里をすくってくれた?」
あれ? 師匠、わたしの知らない所でそんな事してたんですか? 知りませんでしたよ。けど、少女の信頼を得るチャンスです!
「そうですそうです。わたしはその大賢者の弟子で、今はわたしが大賢者をしているんですよ」
「だいけんじゃさんは、大樹の枝がひつようなの?」
「はい! なので、できればお話を聞かせて欲しいなーって思いまして。あっ、これ良かったらどうぞ」
【次元収納】から取り出したお菓子を差し出しながら笑顔で話しかけると、ようやく少女の警戒心が解けたのか、ゆっくりと近づいて来てくれました。
「スンスン……いい、におい」
近くで見るとめっちゃめっちゃ美形ですね。将来はさぞ美人さんになるでしょう。
「んっ」
「お気に召したようで良かったです。ところで貴女はこの集落に住んでいるんですか?」
「なの!」
あらかわいいお返事。お持ち帰りしたい。
「そうなんですか、じゃあお名前はなんていうんでしょうかね? よかったら教えてもらえないですか?」
すると少女は頬を赤らめながら口を開きました。
「リリアナ・ニティ・アゼレードなの!」
名前までかわいいですね。お持ち帰りしたい(二度目)
「おお、それは素敵な名前ですね! ではリリアナちゃんとお呼びしてもよろしいですか?」
「もちろんなの!」
「それじゃあよろしくお願いしますね、リリアナちゃん」
「こっちこそよろしくなの、だいけんじゃさん!」
こうしてエルフの幼子と握手を交わし、ついでに頭を撫で撫でします。
子供が大好きなお菓子で、その心を鷲掴む大賢者……悪いやつですね。誰のことかは分かりませんが。
「なのなのー。だいけんじゃさん、くすぐったいのっ」
お持ち帰り、しよっかな……いえ浮気はいけませんね、わたしにはリベアがいるんですから。
「ところでリリアナちゃんは、ここで何をしていたんですか?」
「うんとね、もじもじしていたお姉ちゃんに代わって、しんにゅうしゃさんが入ってこないか見張ってたの。だからもうすぐ帰ってくると思うの」
……あれ? それって、今の状況だとかなり不味いのでは?
無垢な幼い女の子。その子供の手にはお菓子。側には魔法使いだと一目で分かる、明らかに怪しい出立ちの美少女。下心丸出しの会話内容。頭を撫で撫で……第三者から見れば完全に誘拐の一幕です。
「あ、お姉ちゃんなの。おーい、なの!」
「ちょ、リリアナちゃん。待ってください」
わたしの制止も聞かず、リリアナちゃんは現れたエルフの女性に大きな声で手を振り上げました
「おー、リリー! 今戻ったぞー! 悪かったな、見張りを代わってもらって。特に問題はなかったか――って誰だお前は! 妹から離れろー!!」
やっぱりこうなったー!! まずい早く誤解を解かねば。
「聞こえていないのか! 妹から離れろっ!」
語気を荒め、本物の弓を構えるエルフ族の女性。今にも射抜かんばかりの殺気です。妹さんが近くにいるから撃てない、そんな感じでしょうか。
「お姉ちゃん。この人、大樹の枝が欲しいんだって。案内してあげて欲しいの。あ、おいしいお菓子も貰ったの。だからいい人なの」
リリアナちゃんから爆弾発言が飛び出しました。
(ああああああー! 今じゃない、今じゃないんですよリリアナさんーー! 親切心で言ってくれてるのは分かってるんですが、今じゃないいー!!)
「なっ、大樹の枝だとーー! 我々エルフ族が崇める神聖物をなんだと思っている!! それに年端もいかない妹をお菓子で懐柔だと、許せん! うちのかわいい妹はな、天使のような笑顔で笑い、誰にでも優しくて、器量の良い子なんだ。それに妹の匂いはとても甘くて、こちらがうっとりしてしまうほどいいんだぞ。寝てる時に、思わず後ろから抱きしめてしまいたいほどにな! だからお前などには絶対に渡さんぞ、この変態侵入者め!!」
そこまで言い切るとシスコン気味の姉は、大きく息を吸いました。
「――侵入者だー! 我らエルフ族の土地を荒らす不届き者の人間がいるぞー!!」
「誰が変態侵入者ですか! そっちの方こそ変態でしょう! 見てください、リリアナちゃんも軽く引いてます!」
言い返したものの、時すでに遅し。彼女のよく通る声が辺りに響き渡り、あちこちから武器を持ったエルフ族の人達が続々と集まってきます。
「の? なんかいっぱいきたの? だいけんじゃさん、大人気なの!」
「これは違うぅーー――待って待って、たんま、たんまですー!」
「「「不審者を捕まえろー!」」」
多勢に無勢とはまさにこの事。抵抗も虚しく、わたしはエルフの女性達の手によって縛り上げられ、近くの木に吊るされるのでした。
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