第93話 再会の約束
「真っ黒な宝石? でもテラがそう言うなら良いやつなんだね。ん~。シッ!」
テラとムルムルを肩から手に抱えて、しゃがみ込み一気に真上へ飛び上がる。
「キャー! 私達は置いてから行きなさいよー!」
テラが叫んでいますが飛んじゃいましたし、すぐ終わらせますよ。そして黒い塊の周りにある少し魔力を含んでいる岩から魔力を抜いて、おもいっきり蹴りを連発!
ドゴッ! ドゴゴゴッ!
それによって砕けた岩は、下にいるプシュケやリント、ガルさんに降り注がないように収納して僕は一回着地。しゃがんだところにいたリントの上にムルムルとテラを乗せて――!
「もう一回行きますよー! シッ!」
ドゴッ! ドゴゴゴッ!
二回目の蹴りで、ピカピカしている五十センチくらいの黒い岩はポロっと外れました。慌てず騒がず落下中に手を伸ばし、なんとか手に取り、着地。
一緒にパラパラと降り注ぐ破片はしっかり収納してしゃがみこみ、騒ぎに駆けつけたガルさんにも見えるように僕達の真ん中にそっと置きました。
「もうライったらあんな動きするなら先に言ってよね! ムルムルが掴んでくれなかったら飛んでっちゃうわよ! まったく。まあこれが綺麗に採れたし許してあげるわ」
「なんじゃその黒いのは、宝石か何かか?」
「ごめんねテラ。でもピカピカで綺麗だけど、これってなんなの?」
みんなが見守る中、テラはムルムルに乗ったまま胸を張りこう言い放ちました。
「ブラックダイアモンド、宝石よ。この世でもっとも固い宝石ダイアモンドの黒い子ね。物凄く数が少ないから凄く貴重よ。それもこの大きさはまずあり得ないほどの大きさなのよ!」
「なんと! ダイアモンドだと! 透明や少し色の付いた物は見た事はあるが、黒い。だが美しい宝石だ……」
ガルさんの目線はテラの言ったブラックダイアモンドから外れる事なく、そっと触り感触を確かめています。
「ダイヤモンド? 初めて見ましたね黒いのは、透明なのは村の村長さんが持ってましたね」
プシュケは指先でつついて硬さを確かめているのかな?
「リントの顔が映ってるにゃ。にゅふふ。自慢の髭まで映ってるにゃ」
磨いてもいないのに、ツルツルですからね。たぶんみんなの顔も映っています。僕の顔も映ってますしね。
「ブラックダイヤモンドですか。固そうですし、うん。それに魔力も凄く内封してるから物凄い価値になるね」
テラは真剣な顔をしてそっと手をブラックダイヤモンドに添えました。
「くふふふ。やっぱり綺麗ね。うんうん少しだけ返ってきたわ」
何が返ってきたのでしょうか? 少しテラの魔力が上がってますからムルムルみたいに魔石じゃなくて、宝石から魔力を吸収したのかな?
(違うわよ。バラけた私の力がたまたまここに残ってただけよ)
そうなんだ、バラけちゃったの探さないと駄目なのかな? それなら僕も協力したいから頑張るね。魔力も覚えたし、次からは気を付けて探しておくね。
(あ、ありがと。そうね、そうよね。大きくならなきゃ······)
ん? 最後の方は聞こえませんでしたが、頑張っちゃいますよ!
その後、僕が蹴り砕いた天井の破片をガルさんに見せると、それはヒヒイロカネと言って加工すると物凄く硬くなる金属だそうです。武器の材料では凄く貴重で凄い人気だそうです。
その後も部屋のあちこちを少しずつ採掘しているガルさんの顔がにやけていますから、良いものがあったのですね。
「すまんな。あらかたこの部屋にある物は把握できた。これは良い場所を見つけてくれたものだ、くはははは。よし帰るか、部屋で待つ奴らに良い土産ができた」
「あっ、帰りも僕が転移しますね、明日の朝からここに来ることになりそうですからねガルさん達は」
「ああ。じゃが魔力は大丈夫か? 駄目なら一階層から潜るつもりでいたのだが」
「ぬふふふ。大丈夫ですよ、じゃあ戻りましょうか。転移!」
パッ
ガルさんの部屋に戻ってくると、まだ僕が出した宝場の中身を一つひとつ吟味して、テーブルの上に種類別に分けていました。
「帰ったぞ! 皆、ヒヒイロカネが出る。明日からはしばらくダンジョン暮らしになるから準備は怠るなよ」
ガルさんがちょっと意地悪な顔で皆さんにそう言うと。
「ヒヒイロカネだと! 宝箱の蝶番と補強にも使われていたからもしやとは思っていたが」
目の色が変わるとはこの事ですね♪ くふふふ。既に僕達の後ろの出口に行こうとしてる方もいますし。
「ああ。ヒヒイロカネ鉱石が出る。だが今はその宝箱をきっちり種類別に分けてしまえ! 良いかそれが終われば明日からの準備だ! 一月分は用意しておけ! モタモタしてるヤツは置いていくぞ!」
「「おお!」」
大きい声です! ガルさんの家がビリビリと震えた気がしますし、耳がキーンとなりましたよ。
でもガルさんの言葉が効いたのか、あっという間に宝箱の中身は分けられ、宝石も種類別に。そしてそれを種類が混ざらないように個々に小さな革袋へ入れて机の上に並べられました。
「よし! さっさと帰って準備だ!」
みんな先を急ぎ、玄関の戸に殺到して押し合いながらみんなはいなくなりました。
「ふむ。儂はメシを食べてからだな。ライ達も食べて行くとよい。何かあったか……」
ガルさんはそう言いながら竈へ向かうと火を着け食材を探し出したので、ヒュドラを出すことにしました。
翌朝。
「なんじゃ、もう行ってしまうのか?」
本当に寂しそうな顔をするガルさん。でも急がないといけないようです。
「はい。とりあえず目的地はダンジョン街ですからね。ガルさん達も採掘頑張って下さいね」
「うむ。またここに寄ると良い。それまでにライ達の武器をいくつか作っておいてやる。二日ほどだが楽しかった。必ずまた来い」
「やったー! 分かりました! 絶対きますね! では皆さん、転移先がなにやら騒がしそうなので行きますね。ではまた今度です。転移!」
パッ
気配を感じ、あわてて街道脇に転移した僕達は、目の前で繰り広げられている事に目が奪われました。
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