第59話 王様になった
「ねえライ、なにもありませんよ? 見てるそこに何かあるのよね?」
「うん。プシュケこれ凄いですね。本当に何かあるようには見えませんし、ただの草原にみえますよね!」
「ほらほら早くぐるぐるしちゃって見えるようにしなさいよ。プシュケがうずうずしてるわよ」
プシュケを見ると期待してます! って顔に書いてありそうなぐらい目が爛々として僕を見ています。
あまり待たせるのも悪い気がしてきましたので、早速ぐるぐるしちゃいましょう!
「じゃあやっちゃうね。ぐるぐる~、ほいっと!」
ぐるぐる魔道具の魔力を回して鍵を開ける要領です。
回し始めてすぐにその効果が現れ、ただの草原にポツンと僕の身長より高い、手を伸ばしても上まで届かない高さの箱が現れました。
「「出た出た出た出た♪」」
「ぬふふふ! 成功です! 宝箱発見ですよ!」
宝箱にはやっぱり鍵が付き物、ですが、僕には通用しませんよ!
「じゃあ鍵を開けましょうか! ぐるぐる~、ほいっと!」
ガチャ
「開いたようね、一応罠がないか見てあげるわ。んん~♪ 良いみたいね、開けて開けて♪」
テラは物凄く楽しんでいるようですし、僕も楽しいので開けちゃいましょう♪
「プシュケも一緒に開ける?」
「はい! もちろんやりたいです! こんなの中々体験できませんからね!」
高さ二メートルくらい、横幅二メートルくらいの宝箱。
ちょうど高さの真ん中あたりから開けられるようなので、僕とプシュケは左右に分かれて宝箱の角に。
「じぁあせ~ので開けるよ!」
「はい!」
「「「せ~の!」」」
キシ、キシと音を立て、開いていきます。
箱の中に日の光が入り反射する物が入っているみたいでキラキラと光っています。
そして一気に持ち上げました。
ズンと宝箱の蓋は蝶番を支点にして全開になりその中を覗くと色とりどりの宝石や金貨、宝飾されたナイフ、壺などがぎゅうぎゅう詰めで入っていました!
「うっひょ~! キンキンピカピカよ!」
「うはぁー! 綺麗な物がいっぱいですぅ~!」
「テラ、プシュケ、ムルムル! 凄いよ大金持ちになっちゃったよ!」
ぷるぷる
そしてお宝の山に手を伸ばそうとしたのですがテラが止めます。
「ちょっとだけまってね。変な物が混ざっているかもしれないから。んん~。うんうん。良いわよ好きなだけ触りなさい! 私もその緑色の宝石を取ってちょうだい♪」
テラの頭ほどある大きな緑色をした宝石を拾いあげ渡してあげました。
「ムルムルはこの小さい腕輪を乗せてあげるね~」
「くふふふ♪ ムルムルが王様のようね、似合ってるわよ」
ぷるっぷる♪
「こらこら揺れすぎよ、落っことしてしまうわよ。あら、少しだけ体に沈み込んで掴んでるの?」
腕輪の端を少しだけ沈めるようにしてピッチリと金の腕輪をくっ付けています。
「本当です! ちゃんと掴んでるところがムルムル賢い!」
「はわわっ! ムルムル王ですよ!」
「くふふふ。プシュケってば指輪付けすぎだよ、あははははは♪」
十本指に指輪を十個その手のひらにはまだ数個の指輪が握られています。
「ライだってネックレスじゃらじゃらじゃない♪ あっ! この指輪もキラキラだよ!」
「ライ! 私にも指輪をちょうだい! ムルムルみたいに王冠にするから!」
テラは男性用の大きな指輪を王冠にするそうなので、頭の上の木の実を一旦外してもらい、緑色の宝石が前に来るように指輪をテラに乗せてあげました。
「ありがとうライ♪ どう、似合ってる?」
「うん! 本当に綺麗なお姫様みたいです! テラにぴったりだよ」
「……あ、ありがとう。何かテレるわね」
褐色の肌なのに赤くなるのですね。テラも僕のお嫁さんになってくれないかな?
ずっと楽しく旅したり、ダンジョンも行ってみたいですし、良く考えたらムルムルとテラが僕が旅立ってからできた始めての仲間ですからね。
その後もキラキラのアクセサリーを身に付けたり、金貨を積んで高さを競ったり、そんな事をしばらく続けていると、あっという間に夕方になりました。
あわててお宝を宝箱ごと収納して、浜辺に戻りました。
薄暗い中火をおこし、大きめのテント、兄さんとフィーアの四人で庭で寝た時のテントを張り、夕ごはんの準備をします。
「はぁぁ、ずいぶんお宝で遊んでしまったわね」
「そうだね、明日は海の様子を見て泳げそうなら練習だね!」
「楽しみです! 私も泳いじゃいますよ!」
「うふふ。任せておいて。二人ともしっかり泳げるようにしてあげるから。さあさあ明日は早いわよ、早く食べて寝ちゃいましょう」
「「うん!」」
焚き火を大きくしてお湯を沸かします。
その待ち時間に腕輪が気に入って、王冠のように乗せたままのムルムル。さらに宝飾されたペーパーナイフも腕輪と同じように掴んでるのでこれはもうムルムルの剣ですね。
王冠を乗せ、剣を装備した王様のムルムル。夕ごはんのオークとゴブリンを出して上に乗せてあげます。
お湯が沸いてきたのでベーコンとニンニク、根野菜も入れちゃって、そうだトマトもありましたし、それも入れちゃいます。
ワインもとぽとぽ~、お塩~、コショウ~、後は少し煮込まれるまで待ちましょう。
中々美味しくできたスープと、オークも少し焼いて、パンはいつもの魔物パンです。
みんなが食べ終わり、朝まで火が消えないように大きな薪を加えておきます。
そしてみんなで着替える前にムルムルに塩っ気を綺麗にしてもらいパジャマに着替え並んで寝ることにしました。
そして……
「ん? まだ遠いけれど反応がありますね」
目を開けると少し明るくなり始めているようです。胸の上のムルムルごとテラをプシュケの胸の上に乗せ変えて起き上がりテントを出ます。
「ん~、まだまだ遠そうですが魔物ではなさそうですね。船でしょうか?」
薪を火に加え、少し早いですが朝ごはんの用意をしだしましょう。
お湯を沸かし、昨日のスープとお湯が沸くまで時間があったので岩場から巻き貝とカニを採取。
カニは綺麗に洗ってスープに入ってもらい、貝はお湯に入れて茹でて殻を外しながらスープに合流させました。
茹でたお湯はお出汁が美味しかったので、砂が入らないようにうわべだけを掬いスープに追加。味見すると結構薄くなったので醤油を少しだけ入れて味を整えました。
「ん~、肉眼でも見えるようになりましたね。方向的にこの島に来そうな感じですが」
そんな時、プシュケがテラとムルムルを連れて出てきました。
「おはよう。良く寝れた?」
「はい。おはようございます。朝ごはんも作ってくれたのですね」
二人はまだ寝間着のままで、プシュケは魔狼の腹巻きです。
「うん。早めに食べちゃおうか。なんだか船が近付いているみたいですからね」
「まあ! もしかして、海賊?」
「かもしれませんからね。なので早めに食べちゃいましょう」
ザパン! ザパン!
「え? 何今の、攻撃魔法だよね?」
「そうみたいね。ほらまた飛んでくるわよ」
船から次々に僕達の方に魔法が飛んできて、海に落ちています。
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