第55話 お引っ越し完了
「父さん! それに母さんも!」
「ライ!」
転移でサーバル男爵領に戻ってきたのですが、なんとそこには父さんと母さんが数人のお供と一緒に来ていて、手にはオーク肉と野菜を焼いた物を乗せたお皿を持っていました。
「町長さんとは話をしたぞ。このままこの町の管理監として働いてもらうつもりだ。まあ財務などは新たに赴任してもらうがな」
「そうなのですね! あっ、それから八人増えましたのでよろしくお願いしたいのと、こっちの人も村長やっていた人だから補佐とかで雇えるかな? お孫さんが産まれたばかりなので働き口がないとね」
そう言って村長を紹介する。
「ほう。三千人の町だからな、その辺りも補充は考えていたんだよ。サーバル男爵です。この度は私の領地に来ていただきありがとう。息子の話通り人手が欲しいところなのだ、受けてもらえるだろうか?」
村長は男爵と聞き驚き父さんと僕の事を何度か見て、僕が貴族の子供だと知っての驚いているようですね。
「は、はい。私はラグナールと申します。村長を辞めたところですのでそのお話は助かります。息子も、息子の嫁も狩りの腕は中々の物だと思います。なのでそちら方面でも役に立てるよう私の家族もよろしくお願いいたします」
ラグナールさんなのですね。
「うむ、最初の数年は厳しい物となるだろうが、最大限補助もしよう。管理監のシグルドを支えてやってくれると嬉しい。ラグナール殿を副管理監として雇おう」
「はい。よろしくお願いいたします」
ラグナールさんも、テラの言っていたエルフ、ハイエルフ、エンシェントエルフなんかにこだわらずこれからは仲良くやって欲しいですね。
おっと、そうです!
「父さん、まだ紹介しないといけない人がいます。こちらは冒険者仲間になったプシュケのご両親のアレスさんとディオネさん。この二人は母さんと同じで転移もできる魔法使いだよ」
それに反応したのは母さんが先でした。
「まあ! それは良い人材が来てくれました!」
「うむ、いつもは妻にやってもらっていた各村や町への手紙などのやり取りを分担してもらえると助かる。領地外へは妻が行く事になるだろうが普段は領地のみ。どうかな? 手伝ってもらえると助かるのだが」
母さんは朝から良く出掛けるって言っていたのはこの仕事だったのですね。
「はい。この魔法でお役に立てる仕事でしたら喜んで」
ディオネさんの肩を借りて立っているアレスさんはそう言いながら頷いてくれました。
「じゃあ、お話もまとまったみたいですから僕達もお昼ごはんにしましょう」
そしてお昼ごはんの後、町を設置してしまい、アレスさんのお家と、ラグナールさんのお家もうまく町長さんの家の横に設置して、町は完成しました。
そして夕方から町の完成を祝いお祭りが開催されることになりました。
まだ明るい時間から町の人達は食材を持ちより料理を始めます。
僕はその場を離れテラ達を連れて町の外にやって来ました。
「どうしたのライ。お祭り始まっちゃうよ?」
「うん。でも明日から物凄く忙しくなると思うから今の内に畑を耕しちゃおうかなって、ね」
「本当は早く海に行きたいからさっさと終わらせようって考えてるんじゃないの?」
うっ、テラ······鋭いじゃないですか。
「当たりのようですね~。私も泳いでみたいですし、やっちゃって下さい!」
「あはは、テラに手伝ってもらいたいんだけど、良い畑の作り方分かる?」
「はぁぁ、そうね町にあった畑より大きくするんでしょ? ならどうしようかしら……。広さ的には五倍くらいは余裕そうだし、いつかは分からないけれど川が氾濫してここに栄養のある土砂が流れ込んで平らな土地になっているのね」
テラは目の前の広い草原を見ながらぶつぶつ呟いています。
氾濫って聞こえたので後で川に堤防を作ってしまいましょう。
「うん! 決まったわよ、まずは川まで行って堤防を作るわよ!」
「おお! それは僕も考えてました。じゃあ川に行くよ~、何度も行ったことがあるからね。プシュケも行くでしょ?」
「もちろん! 背負子に乗った方が良いの? このままでも良いの?」
「とりあえずこのままで。じゃあ転移!」
パッ
「川に到着!」
「じゃあ氾濫する箇所はだいたい川が曲がっているところが多かったはずだから、あそこ当たりかな? んん~!」
テラは川が大きく曲がっているところをいつもみたいに調べています。
「そうね三メートルから五メートルってところね。ライこの川の曲がっている箇所に五メートルの堤防を土魔法で作ってくれる? ちょっと距離はあるけれど」
「うん。任せて、曲がっているところが無くなるところまでだよね?」
「う~んとね。まっすぐなところは少し、そうね半分もあれば良いかな。ついでに灌漑もあそこから町に向けて作ればって灌漑って少し難しい言葉ね。えっと、そうそう水路! 水路を作るの。それを畑のところに繋げれば水やりも楽になるでしょ?」
「なるほど。流石テラは物知りだね!」
「はい。そんな難しい言葉知りませんよ」
「ぬふふふ。あ~らそうなの? 知性が溢れ出てしまったようね! お~ほっほっほっ♪」
「くふふふ。じゃあやっていくからテラが指示していってね」
そして堤防をささっと作り、水路を入口はまだ塞いだままですが町の方へ向けて帰りながら作って行きます。
そして畑の中心になるところに大きな池、湖くらいあるかな? ため池を作りました。
その頃には日も遠くの山にかかりだし、綺麗な夕焼けになりました。
「こんな感じで良いの?」
「上出来よ。今日は次で最後よ畑にするところの土を柔らかくするの。そうね空気を混ぜ込むイメージよ」
ん~とまずは五十センチくらい? それだけあれば十分だよね。それだけ収納してしまって石は取り除き少し上からパラパラ降らせれば良いかな。
「じゃあお腹もすいてきたし、やっちゃいますね。収納! からのパラパラ降らせますよ~、ほいっと!」
見えるところは畦道、馬車がすれ違えるくらいの道を残し土を収納してしまいます。
「え? ライ何やってるの!」
何か言ってますが今は集中です。
「降らせます! ほいっと!」
石なんかは収納に残したまま雪をイメージしながら降らせていきます。
「ぬぬ。中々難しいですね。ですが負けませんよ!」
徐々にふかふかになった土が積み重なり、元の高さまで来てもまだ降り続け、元より体積が多くなったようにこんもりした地面になりました。
「ふい~、どうかなテラ、良さそうじゃない?」
「ライあなたね。本当はやり方違うけれど元々耕さなきゃ駄目だったのだから……。ん~、エルフ達には手間が省けたのだからよいのかしら? ……良しとしましょう。そうそうここにあった草達は収納の中よね? ここの草は牧草に最適だから残しておいて酪農する場所に植え替えるって手もあるから」
「おお! それは良い事を聞きました! サーバル男爵領は酪農の方が盛んですからそこで植えちゃえば良いのですよね?」
「その通りよ。でもまあこれで後はみんなに任せて海に向かえるわね」
「うん!」
そしてお祭りに加わり、いつもより少しだけ夜更かししましたが、流石に眠くなり町長さんの家でまたお泊まりさせてもらい、寝ることにしました。
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