第52話 お引っ越しです ①
「なんで! もう森の境に来てるじゃないですか! こうなったらもうやっちゃいます! ん~と、ぐるぐる~!」
ハイエルフの六人が森から出たか出てないかくらいのところを、速度は歩いているようですがこちらに向かって進んできています。
そこを一気にぐるぐるさせて魔力を枯渇させていきます。
六人の内の一人はすぐに魔力が無くなり気絶したようです。
そのため移動していた気配が止まりました。
「ん? 魔力切れが早いですね? あっ! 転移してきたのですね! だから残りの魔力が少ないのですぐに気絶したんだ。よし! 後五人。ん。全員気絶ですね」
僕が独り言でぶつぶつ言ってたのでテラが起きちゃったみたいです。
「おはよう。その様子だと昨日の奴ら、転移してきたみたいね。完璧にそれの事考えていなかったわ。昨日プシュケに聞いて転移の魔法を使える奴がいるって分かっていたのに。まあ仕方ないわね。そいつらのところに行くわよライ!」
悔しそうな顔で上半身を起こすテラ。
「うん! プシュケはもう少し寝かせておこうね」
「そうね。ムルムル! 行くわよ!」
テラは腹巻き姿のままムルムルよじ登り、ムルムルの上に乗りました。
それをベッドから掬い上げ肩に乗せます。
「行きますよ~、転移!」
パッ
六人のハイエルフを気絶させた場所に転移して周囲を確認すると、まだ森を抜ける手前でまだ町は見えないようです。
「良かった。森から出て町が見えていたらどうしようかと思いましたよ」
「ん? どうしてなの?」
テラが首を傾げながら聞いてきました。
「だって森を抜け畑や町を見てしまっていたら町が突然無くなった事がバレちゃうでしょ? 見る前なら大きな草原しかない……は無理がありますね。そう開けた土地があるように見えて、町とは違うところに来ちゃったって思い違いしてくれるかもでしょ?」
「な~るほどね。それ採用よ。引っ越しの後、ここの地には少し頑張ってもらって一面に草を生やして畑って分からないようにしてしまいましょう」
「えっと、木魔法?」
「ん~と、どちらかと言うと地魔法ね。土に魔力を飽和させるようにすると草木が元気になるのよ」
「へぇ~、テラの頭みたいだね」
「ぬふふふ。私の得意分野よ! ムルムルにばかり活躍させていたらどちらが主人か分からなくなっちゃうし、ここらで超~凄い私を見せてあげるわね。期待してて!」
「うん。じゃあこの場所は覚えておいて、一旦町に連れていこうか。テラこの人達の魔道具は大丈夫かな? 魔力回復の物とか持ってない?」
「どれどれ。んん~。無いわ。でも収納のスキル持ちが四人いるわね。もしかして食料を取りに来た奴らなのかも知れないわね」
「じゃあ、町長さんに見て貰おうよ。どこが良いかな? 裏庭で良いかな?」
「そうね。あの裏庭は結構広かったし適当な壁際にでも放っておけばそんなに邪魔にならないでしょ。さっさと帰りましょう」
「うん。じゃあ行くよ。転移!」
パッ
町長さんの家の中庭に転移した僕達は壁際に六人を並べて寝かせ、プシュケが寝ている部屋に向けてもう一度転移しました。
「きゃ!」
「あっ、プシュケおはよう。ごめんね、ハイエルフの六人がこの町の近くまで来ていたから捕まえに行ってきたんだ」
プシュケは起きてベッドから降り、立って伸びをしていた目の前に転移してしまったのでたぶん相当驚いたと思います。
「び、びっくりですよ! あ~寿命が百年は縮まったかも」
「心配しなくても大丈夫よ。エンシェントエルフは百年寿命が縮まったとしても微々たる物よ。それより早く町長さんのところに行きましょう」
エンシェントエルフってすごいですよね。僕が百年寿命が縮まったら絶対死んでますよ。
みんなで部屋を出て町長さんの部屋に向かいます。
向かっている途中のいつもの食堂から町長さんの声がきこえてきました。
『なに! ハイエルフの連中が裏庭にいるだと!』
『はいあなた。井戸に水を汲みに行ったら壁際に。私達に奴隷の魔道具を付け、いつも食料を取りに来る奴らよ、見間違えるはず無いわ』
『よし! すぐに拘束してしまわないと! 行きましょう!』
ダダダダ
バタン
勢いよく開かれた扉から、町長さんと先日町の人が集まってると呼びに来た人が、聞こえた話の感じですと奥さんのようですね。その二人が食堂から出て僕達がいる事に気が付きました。
「皆さん! おはようございます! 一大事です! ハイエルフの連中が中庭にいるのです!」
それはもう早く中庭に行きたいって感じに早口で挨拶と共に僕達へ向かってきます。
「おはようございます。それならしばらくは起きませんよ」
「え?」
昨晩と今朝あった事、魔力欠乏で気絶させたこと、町ではないところに来たと誤解させる作戦の事を、中庭に向かいながら説明しました。
「なるほど……。分かりました。では今日中に移動してしまった方が良さそうですね。しかし来るのが早すぎる気もしますね。いつもなら後十日ほど時間があるはずなのですが」
「そうですね。遅くとも明日の朝この時間くらいまでには移動してしまって、偽装をしてしまいたいですね」
「あっ、早く来たのはたぶん村長の孫が生まれたか、生まれそうだから誕生を祝う祭りのためかなって思います。私が村から出た時、いつ生まれてもおかしくないって話がありましたから」
プシュケがそう言うと――
「なるほど! それなら分かります! 御神樹様の祭りの時も早めに取りに来ています。まあそれは祭り前月食料を取りに来た時に何日後にこれだけ用意しろと命令されていましたが」
町長さんは予想ではありますが納得した顔になりました。
そして中庭に到着し、ハイエルフ達の顔を一人ひとり確認すると大きく頷きました。
「どうですか?」
「間違いありません。いつも食料を取りに来る奴らです。よし。急がないとですね」
「はい。すぐにでも始めたいですね」
「分かりました。皆さんは朝ごはんを食べてからにして貰いたいです。私は今から皆に知らせて参ります。皆さんの朝ごはんの用意を頼んだ」
「はいあなた。任せて。あなたは早く皆に伝えてきて下さい」
町長さんは頷くと僕達に「では行ってきます」と言い残し、裏庭の勝手口から外に出ていきました。
そして朝ごはんが終わり、まだ町長さんは戻って来ていないので一度家に転移で戻り、父さんにご報告。
「そんな人達がいるのか! ライでかした! 願ってもない、もちろん大歓迎だぞ! そうすると場所だな……。三千人、農耕が得意分野で魔法が得意とされるエルフか……」
「あなたそれなら次の開拓予定って言っていた場所はどうなの?」
「あの草原か。しかし水は賄えるのか? あそこは川が遠いため農耕には向かないのじゃないか? 牧草には良いとは思っていたが」
おお! あの場所ですね! あそこは馬の遠乗りで連れていって貰った事があります。
「だってエルフでしょ? 水魔法なんてお得意でしょう? それに土地も低いですから、水も川から引き入れる工事をして行けば、いずれ沢山の作物がとれる思いますわ。その工事のため人員を募集する事もできますから工事後残ってくれる人達もいるかもしれませんし」
「ふむ。エルフ達を引き入れ、さらにこの工事で新たな人材を引き入れるか。ならば街道の整備も必要になる。更なる工事で……。ぬふふふ。男爵とは名ばかりの民しかいないサーバル男爵領に人が集まるではないか! よし。ライ場所は分かるな?」
「はい。もちろんです。遠乗りでよく連れていってくれた場所ですよね?」
「そうだ。あそこなら三千人と畑、十分過ぎる広さがある。そこにするから頼むぞ」
「任せて下さい。では引っ越しが終わったらまた顔を出しますね」
「うむ」
「気を付けてね~」
「じゃあ行ってきます! 転移!」
パッ
「なあ。一緒にいたあの子はまたライのお嫁さんか?」
「うふふ。あなたに似ずお嫁さんだらけになるのでしょうかね」
そして町長さんの家に戻ってすぐに戻ってきた町長さんの指示通りに町を収納していきました。
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