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第49話 お手紙を書きました

 町長さんを見送って僕達だけになったのですが、……あれ? 住民の皆さんが集まって来てるのでしたら夕ごはんって外食出来ないよね? それに町長さんが町のみんなに話をするために出て行ったって事は、僕達だけで夕ごはんって事ですかね?


「ん~と、プシュケ、サンドイッチ食べる?」


「はい。何を挟むのかな? 私は好き嫌いが無いから何でも好きだよ」


 うんうん。好き嫌いは駄目だよね。僕が転生してきてから始めて食べたタマネギと、ネギは辛いから苦手なのは内緒にしておきましょう。


 病院だとタマネギはしっかり火が通っていて甘かったのに、こっちのタマネギ、ネギは大人の味だと思います。


 でも、こちらに来てから食べたニンニクさんは僕にも食べれましたし、記憶では臭いイメージだったのですが、辛くも臭くもなくて(ほの)かな甘味が気に入っています。


 おっと、またやってしまっていますね。


 さてさて、何を挟みましょうか。


「ん~っと、オークベーコンと、あっ! 腸詰めもありますね。贅沢に二つとも挟みましょう! お野菜は何にしましょうかね~。うんうんトマトがありました。それと、レタスがありますからそれで良いですか?」


「はい! 美味しそうです。想像しただけでよだれが口の中に溢れてきましたよ!」


「僕も。じゃあ作っちゃうね」


 火魔法でベーコンと腸詰めをあぶりながらトマトを切って、レタスは手でちぎります。


 パンに切れ目をいれた所にレタスとトマトを挟んで焼けたベーコンと腸詰めを乗っけました。


「ぬふふふ。ここまでならどこにでもありそうなサンドイッチだけですが、果実ジュースもあるのですよ」


「すご~いです! それに冷たいですよ!」


「ぬふふふふふ。お気付きになりましたね! 実は秋に沢山の果物を絞って作ったジュースを冬に外に出して冷やしたのですよ! なので夏でもヒエヒエジュースがのめるのです!」


 僕はドヤ顔になっていると思いますがテラはとんでもない事を言ってきました。


「ねえライ。それって古代魔法でも出来るよね? なぜそんな面倒な事をするの?」


「え? そ、そんな事出来るの? もしかして氷魔法?」


「水魔法の上級編ってとこかしら。水って言うのは止まっているように見えて実は動いているのよ。動きを早くすると熱くなって、止めちゃうと凍るの。やってみれば分かるわよ」


「そうなんだ! よし! や、るのはごはん食べてからにしましょう。はいプシュケの分」


 プシュケの前にお皿に乗せたサンドイッチを置いて僕のも作ってしまいます。


「よし完成! じゃあいただきます!」


「いただきます!」


 少し足りなかったのでもう一つ作って半分ずつ食べました。


 じゃあ~、お水の実験をやってみましょう。


 まずはお水を出して~ぐるぐるですよ~、ほいっと!


 パシャ


「ライ! コップか何かに入れなさいよ! ああ~もう床が水浸しじゃない! ムルムルお願い片付けてあげて」


 ぷるぷる


「ありゃ、ごめんねムルムル。ありがとう」


 ムルムルはあっという間にこぼした水を吸収してしまって、こぼした事がなかったかのようにじっくり見ても跡もありません。


「よし! コップで再挑戦ですよ! ほいっと!」


 パキッ


「あっ! 氷は出来たけどコップ壊れちゃった······」


「はぁぁ、簡単に出来ちゃうのね。まあ良いわ。言うの忘れていたわね。あのね水で氷を作る時は少し大きくなるのよ。仕組みは難しいから省くけど、そう言う物だと覚えておけば良いわ。でも、コップはもったいない事しちゃったわね。普通なら壊れるほどにはならないと思ってたけど」


「ん~、何度も落としたりしていたからヒビでも入っていたのかな? 仕方がないですね、また作ります。じゃあ次は温めてみよう!」


 別の、今度はお皿にしておきます。


「水を入れて~、ぐるぐる~、ほいっと!」


 ボン


「どわぁぁ! 熱っ! ば、爆発したよテラ!」


「あなたね! ゆっくりやりなさいよ! 急激にしちゃったら爆発もするわよ! ほんとにもう、またそこらじゅうに水が飛んじゃったじゃないの。はぁぁ、ムルムルお願いね、ちょっと熱いかも知れないから気をつけてね」


「うう、ごめんなさい。ムルムル何度もごめんね。テラもプシュケもごめんなさい」


 ぷるぷる


「す、凄くビックリしましたよ。これは攻撃魔法ですって言われても信じちゃいますよ」


「目眩ましにはなるわね。練習するなら外でしなさいよ」


「うん、攻撃系の目眩ましか。良いかもです。海に行ったら練習し放題ですからそこでやりますね」


 ダダダダ


 バタン


「何事ですか! お怪我はありませんか!」


 町長さんと、見た事無い数人が部屋になだれ込んできました。


「あっ! ごめんなさい! ちょっとお水で実験してたら爆発しちゃって。皆さん心配をおかけしてごめんなさい」


 僕が立ち上がり頭を下げるとプシュケも同じ様に頭を下げてくれました。


「大丈夫よ。怪我も無いし部屋もちょっと濡れただけだからそこはごめんなさいね。ところで町長、サーバル男爵領への移動は決まったの?」


 テラがちょっと偉そうですが、話をそらしてくれています。


「部屋がすこし濡れていると言っても気にするほどの事では無いようですし大丈夫です。それがですね、今確認中なのですが、今集まっている全ての者がサーバル男爵領へ移りたいと言っていまして、一応地区ごとに集計して貰っております、三千人全員が行く事は無いとは思いますが……」


「おお! それは凄いですよ! それだけ領民が増えれば最初の数年は食料を輸入しなくちゃ駄目だけど、開墾が進み自給自足出来るようになりますね!」


「なんと。その人数でも受け入れて貰えるなら外の町や村にある人頭税も外から来た者に聞いた限りでは納められるはずです」


「ああ~、父さんがそう言う時の税は、入領して数年は取らないって言ってましたよ。でも人数が人数ですから国に納める税が払えるかですよね……、分かりました。その事も出来るだけ少なくなるように手紙に書いておきますね」


「はい、そうして貰えると助かります。ではその事をふまえて皆にもう一度確認してきます」


 そう言って町長さん達は部屋を出ていきました。


 僕はさっそく父さん宛に手紙をかくことにしました。





 ん~、何て書きましょうか······。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 父さん母さんへ


 今、海に向かう東の森にいます。


 なぜ森の中で手紙を書いていると言うと、誰も住んでいるとは思わなかった森の中にはハイエルフさんの村と、エルフさん達が町を作り人知れず住んでいたからです。


 最初はエンシェントエルフのプシュケって言うんだけど、その子がオークに襲われているところに助けに入って僕とパーティーを組んでくれる事になりました。


 そしてその村に行くことになったのですが――





 ――と言うことで、プシュケのご両親とエルフの町の住民三千人くらいがサーバル男爵領に移り住んでくれる事になりました。


 プシュケのご両親はハイエルフなので魔法とか得意だそうですから領地の治安とか守ってくれそうだし、町の住民達は手付かずの土地を開墾してくれますので税は安くしてあげてね。


 ライリール・ドライ・サーバル


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「うんうん。こんな感じて良いかな。封筒は~ありました。父さんへっと。あっ裏にも僕の名前を書いておきましょう」


「書き終わったの? それでなぜ私とムルムルの絵が描かれてるのよ、って上手いじゃない! ライ! そこおっぱいはもっと大きくして描いてよ! こ~バインバインに!」


「え~、せっかく上手くテラの可愛さが描けたのに~僕はそのままのテラが好きだよ」


「なっ! そ、そうなの! どうしましょう私の魅力でライを(とりこ)にしちゃった……。今はまだ大きくなれないけどゴニョゴニョ」


 途中から聞き取れなかったですが、くねくねするテラも可愛いです。


 書けた手紙を翌朝町長さんに渡しました。

 今日もお読み頂きありがとうございます。


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 いつも応援のメッセージや誤字脱字報告ありがとうございます、本当に助かっております。


 これからも応援よろしくお願いします。

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[一言] 3000人規模の移住者…煮干し3号に送られる悪い人に比べて遥かに少ないのです!(笑)
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