第45話 ハイエルフの村 ②
向かう先の凄く大きな木の方向に沢山の気配があります。
その集まっている気配全員の魔力を発散させながら近付いて行くにつれて人集りが見えてきました。
その人集りの向いている先には舞台か何かあるのか数名の人達が見えます。
「父さんと母さんです! 捕まっています! それと前にいるのが村長さんです!」
見えている内の拘束されている二人はプシュケの父さんと母さんのようで、他の人達は、前に村長さん、二人を拘束している四人のあわせて七人です。
「分かりました! よし、じゃああの舞台の上の人はプシュケの父さん母さん以外を気絶させます! ほいっと!」
気絶するギリギリまで魔力を発散させておいたので、その効果はすぐに表れ舞台上で立っている者は、五人が崩れ落ちプシュケの父さん母さん二人だけが立っている状態になりました。
それを見たまわりに集まっていた人達は騒ぎ始めました。
「おい! どうしたんだ!」「あの二人が何かやったの!」「殺されたのか!」「逃げなきゃ!」「こ、殺される!」「殺られる前に殺ってやる!」
わらわらと逃げようと、まわりの人達を押し退けかき分け我先にと逃げ出す者達がいます。
中には、武器を、弓を取り出し舞台上のプシュケの両親を狙い撃とうとしている人もいます!
「ライ! 速く気絶させなきゃ!」
「っ! やっちゃいますよ! ほいっと!」
ぐるぐるを加速させ、集まっている人達を気絶させながら、さらに加速して舞台に。
「父さん母さん!」
「プシュケ!」
「プシュケちゃんどうしてここに!」
倒れた人達を飛び越え舞台に飛び上がりました。
「助けに来たの、門番さんに父さんと母さんが処刑されるって聞いたから」
プシュケが声をかけた時、立っていた最後の人が崩れ落ち、全員を気絶させる事に成功しました。
「そうか。しかしこれは、……いったい何をすれば村人全てが倒れるのだ? いやそれよりプシュケ、こんな危険なところに。だが、ありがとうな助かったよ」
「本当にもう助からないと思ってました。こうなる前にプシュケを外に出せて良かったと思ってましたが、……ねえ、プシュケ、今はそんな時ではないかもしれないけれどちょっと気になるのだけど、……その方は?」
「この人はライ、私の冒険者仲間になってくれたの。そしてライが気絶させたんだよ。だよねライ?」
「はい。初めまして、ライです。プシュケと一緒に冒険する事になりました。気絶はですね、魔力を発散させて、魔力欠乏にする事で気絶させましたので誰も傷ついてはいませんよ」
「ふむ、スキルか何かかな。いや、そんな事より、ありがとう本当に助かった。助かったのだが、なぜライ君は娘を抱っこしているのかな?」
なぜか笑顔なのに怒っている気がしますね?
「私も気になっていました。プシュケちゃん。どういう事? もしかして結婚? 母さんはまだプシュケちゃんには早いと思うの」
プシュケ母さんの方は僕の事を頭の先から足の先まで観察して興味津々って感じですかね。
「ん? あっ、抱っこされたままでしたね。ライ下ろしてくれるかな?」
「あはは、すっかり忘れていました」
完全に忘れていましたね。そっと足から下ろして立ってもらいました。
「よいしょ。今日処刑されるって聞いたから急がないといけなかったので、別々に走るより僕が抱っこして走った方が早く走れますから、抱っこさせてもらいました」
「そうだよ、私が走るよりずっと速く走るんだからビックリしちゃったよ」
「ふむ、プシュケ、憧れていた冒険者になるんだな」
「うふふ。そうね、でもこれからどうしましょう。この村にはもう私達のいる場所が無いですから」
そうだよね、……二人とも、……ん!
「そうだ! サーバル男爵領に行きませんか? 僕の生まれた所なのですが、ここと同じ様に森も沢山あります!」
そうです、開墾が進まない森がまだ沢山ありますからね。
「ふむ。……そうだな、このままこの村に残るわけにはいかんし、お前はそれで良いか?」
「ええ。あなたが決めて下さい。付いていきますよ」
くふふふ。仲の良い夫婦です。
フィーアとティとこのプシュケ父さん母さんみたいにずっと仲良くしたいですね。学院が終わったら、一緒に冒険の旅に出掛けるのも良いかもしれませんね。
そんな事を考えていると、いつの間にか僕の肩に戻ってきていたテラが耳たぶを引っ張りながら僕に――
「ねえライ、この子もうダメみたい。永く生きてたけれど限界のようね。んん~。よし、良かったわなんとか残してあるわね。ライ、この子の凄く高い場所に実が一つだけ残ってるの」
くいくいっと耳たぶを。
「うん任せて、木登りは得意だから、行くよっ、ほいっと!」
僕は舞台端から木に向かって飛び、幹をつたって一番下の枝まで飛び上がり、するすると微かにこの木とは違う魔力がある場所に向かって登って行きます。
途中剥がれかけた樹皮もあって、本当にもうすぐ枯れてしまうだろうと、感じました。
そして木の中腹、百メートルは登った所に樹洞があって、僕でも余裕を持って入れる大きさです。
その中に、どうやって入れたのか分かりませんが、小さなプチトマトくらいの大きさしかない金色のリンゴが一つありました。
「それよ、それをちょうだい」
「うん、また頭にのせるの? プチトマトくらいあるけど重くない? ほら」
テラは抱えるようにリンゴを抱えると。
「よいしょ! おろろっ、中々重いわね。今からしばらく私が栄養をあげるから元気に育つのよ」
そう言うと、頭に乗せてしまいました。
「この感じだとしばらくかかるわね。ちょっと重いけれど問題ないわ」
うんうんと満足そうに頷くテラ。頭にもう一つ頭が乗っかったくらい背が高くなってます。まあ本人が良いなら良いんでしょう。あはは……。
そして樹洞から出ようとした時です。
ミシミシ
「寿命ね。なん万年も良く頑張ったわね。この子は私が良いところを探して植えておくから安心してね」
ギシィッ
「え? 傾いてない? っていうかこの木の魔力が一気に抜けていってるよ!」
「寿命が尽きたのね。もう少し先かと思っていたけど……。ライ。その魔力を集めてくれない? そしてこの子に」
「了解! 集めながら下に降りるよ! ぐるぐる~、ほいっと! それっ!」
僕は勢い良く樹洞から出ると、枝から枝に跳び移りながら下へ下へと飛び降りて行きます。
その間も徐々に傾き続ける御神樹様。
「んあ~! ヤバいよ!」
「まずいわね! 下の村が壊滅するわよ! 根っこごと倒れそうだし、大穴も空いちゃうわ!」
「えっとえっと、収納しちゃおうか!」
「そ、それよ! それしかないわ!」
「んじゃ行くよ!」
そして最後の枝から舞台に飛び降り、ゆっくりと傾いてくる御神樹様を見上げ、収納する事にしました。
「お疲れ様です。良いところを探しますね。収納!」
集めていた魔力が止まり、完全に寿命が尽きた事が分かり収納しました。
「くぅっ、結構ギリギリでした」
「あ、あの、御神樹様は?」
僕とテラはプシュケ達に御神樹様の事を説明。
途中からはテラに任せ、御神樹様から集めた魔力をテラの頭のリンゴに移し、次に根こそぎ無くなった地面に大きく空いた穴を埋める事にしました。
そして土魔法で埋め直してしまった時、ふと試したい事があったので、この前の団栗を取り出し、テラの真似をして魔力を移して穴をふさいだ真ん中に植えました。
そして植えたとたん――
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