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第38話 忘れていた事

「君達は、ふむ、三人パーティーかな?」


「はい。剣士二人と魔法使い一人で三人、Cランクパーティーです」


 男の人三人ですね。それにCランクですか。えっと、だとすれば護衛依頼をしてランクアップ、昇格したのですね。


「ほお。それはそれは頼もしいですね。明日の朝出発になりますが、ご準備は大丈夫ですかな?」


 三人は顔を見合せ、頷き合うと


「「よろしくお願いします(よろしくお願いします)」」


 うんうん。まともな方達の様ですね。


 あの異世界転移してきた人達みたいだったら嫌ですもんね。


「では、依頼書を作って貰いますので。ギルドマスターよろしくお願いします」


「はい。では皆さんギルドカードをお出し下さい。そちらのパーティーはリーダーの物だけで大丈夫です」




 そして依頼を請け、明日から二日間は八人での旅になりました。


 そして宿は商人さんの良く使っている宿に全員が泊まる事になり、僕はお風呂付きの部屋が良かったのですが、撤回します! 宿に泊まれば誰でも入れるお風呂が、そう! 大浴場ですよ! 僕は早速大浴場に向かい、ひと泳ぎするため、宿の裏手にある建屋に向かいます。


 入口が男性用と女性用に分かれていましたので、僕は当然男性用に向かいます。


「くふふふ。どれどれどんなお風呂かなあ」




「ふぅ。テラ、お風呂泳げなかったね」


 そうです。

 脱衣場で服を脱いで中にはいると壁際が階段状になり、座れるようになっていて物凄く熱い部屋でした。


「ふいぃ~。サウナ風呂とはね。ライにはまだ早かったかしら。そんなに落ち込まなくてもまだまだ暑い日が続くんだから川や、湖、それに海に行くんでしょ? そこで私が教えてあげるから」


「······うん。うんうん! そうだよね! よし、明日も早いし寝ちゃいましょう!」



 そして翌早朝、朝ごはんも八人で済ませ、何も乗っていない馬車に乗り込み、昨日入ってきた門前に行くと一番乗りでした。


 徐々に明るくなって来る中開門を待っていると門兵さんが二人出てきて、十センチ角くらいの(かんぬき)を外していきます。


 そして最後に、倍以上太い閂は少しずつずらしながら外してました。


 それはもう汗だくになってますので、お疲れ様ですね。


「ってか閂がいっぱいなのですね?」


「ん? お前がいたところは魔物が少なかったのか? この街は何度かスタンピードにあってからだなここまで頑丈な門と、閂に変わったのは。昔はあの細い方だけだったらしいぞ」


 お兄さんの一人が答えてくれたのですが、スタンピードですか。それなら頑丈にしちゃいますね。


「でも毎朝あれをしていたら力持ちになりそうです」


「くふふふ。ありそうね。でもあの程度簡単に壊しちゃうのもいるのよ。ライでも出きるんじゃない?」


「テラ、流石に、……でも魔法使えば出来ちゃうかな? うん。ウインドカッター使えば出来ちゃうね」


「ライ、できてもやっちゃ駄目よ。ほらほら門が開くわよ」


 やりませんよ! ちょっと風をぐるぐるさせていたのは内緒です。


 門が開ききると商人さんは手綱を操作して、馬車を進めます。


 門をくぐり外に出て目についたのは、消えた焚き火のまわりに酒樽や瓶が転がされていて、馬車がすぐ近くを通っても寝ている異世界転移のお兄さん達でした。


「こいつらここまでたどり着いてたのか、これだけ音を立てているにもかかわらず起きんとは」


 おじさんがあきれ顔でそう呟いていますが僕もそう思います。


 起きられても嫌なので、ぐるぐるしておきましょう。ほいっと!


「ライあなた、今度は気絶させておきなさいよ」


「うん。そのつもりだよ、気付かれて付いてこられても嫌だしね~」




 そして馬車は開拓の村に向けて快調に進み、二日目の夕方に到着しました。




「お疲れ様です。では私は村長さんに到着した事をお伝えしに行ってきますね。ライ君、荷物を馬車にお願いできますか?」


「はい。では乗せちゃいますね~、ほいっと!」


 同じ大きさの木箱ばかりですから、積みながら出すのも楽々です。一応きちんと隙間無くならべて出していきました。


「はい。全部出ましたよ」


「はい、確かに。では皆さんは冒険者ギルドの出張所で、途中で狩った魔物を売りに行くのですよね。村には宿が一つしかないのでそこで、合流しましょう」


「「は~い(おう!)」」


 馬車を見送り僕達は、門を入ってすぐのギルドに入ります。


「坊主はここでお別れだな。夜は再会を祈り飯でもみんなで食べるか」


 おじさん、それ良い!


「そうだな、ギルドで会ってから、たった三日だったがお前には助けられたし」


 怪我しちゃって回復しましたからね。


 寝ぼけて馬車から落ちるなんて、くふふ。


「そうですライ! 私なんてもう少しで魔狼に噛られるところでしたよ!」


「アマラったら前のゴブリンしか見てなくて、後ろ全然見てなかったもんね」


「俺もヤバいところ加勢して貰ったしな、魔法は使えるし剣も使える俺達のパーティーに欲しいくらいだぜ、あははは!」


「そうだな。よし買い取りカウンターは裏手の倉庫になるようだ。そっちに移るぞ」


 おじさんの先導で一度ギルドから出て、横の路地に入り抜けるとそこそこ大きめの倉庫があり、中に入ってすぐのところに受け付けがありました。


 受け付けのおじさんの言うがまま、魔物を出し、オークを出すとニコニコになって、「おお! 今夜はオークステーキだな」って(つぶや)いていました。


 オマケで僕が元々持っていたゴブリンとオーク、魔狼も数匹ずつ追加して、買い取ってもらいました。


 中々のお小遣いになりました。みんなの買い取りも滞りなく終わり、宿に向かいます。


 遠くからでも分かる立派な宿、開拓をやりに来た職人さん達が泊まるため大きいそうです。


 立派な宿に着くとすでに商人さんが帰ってきていて凄く広い食堂、……いや、もの凄く広い食堂(百人は余裕でしょこれ)で待っていてくれたようです。


 部屋も僕とアマラは一人部屋、おじさんとお兄さん達は四人部屋を準備してくれてあるそうです。


「では、お疲れ様です。乾杯!」


 商人さんの音頭で目的地到着のお食事会が始まりました。


「坊主、明日の朝には出発か?」


「はい。その予定ですね、なにかあるのですか?」


「いや、坊主の事はこの二日ほど見てきて強いのは分かったが心配でな」


 おじさんがお酒をちびちび飲みながら真剣な顔をして心配してくれます。


「ライの事は私にド~ンと任せておいて! ムルムルもいるし大丈夫よ!」


「う~む、ちびっ子とスライム……心配だな」


 みんなが、うんうんと頷くのを見て、テラが、ガーン! ムルムルは、ぷるぷる。


「あはは、テラもムルムルもいてくれるから僕はどこにいても安心できるよ」


「ラ、ライぃぃ~! あなただけだわ私の凄さを分かってくれるのは! それにムルムルだって、私の騎獣で凄いんですからね!」


 ぷるぷる?


「うんうん。あれ?」


「どうしたの?」


 少しずつ大きくなっている気が……。なにか忘れているような……。


「ああー! テラ外に行かなきゃ!」


 僕はテラを素早く手のひらに乗せ、外に向かう。


 広すぎる食堂のため出口までが遠い! 間に合え!


「な、な、な、な、なんなのライ! どうしたのよぉぉー!」


 僕は開けっぱなしになっている出口をくぐり、目の前の広場に飛び出した。


「あぁぁぁー! 忘れてたぁぁぁー! ライせめて、広場の真ん中にお願い! 物凄く大きくなるはずだから!」


「ぬぉぉぉおー!」


 さらに加速してもう僕より大きくなった団栗(どんぐり)をテラの頭から外して


 ズズン


 広場の中央に放り落とした瞬間、ピキッと音がなり、殻がはじけ巨大な双葉が出たと思った次の瞬間には根が地面に突き刺さり、ズズズズとみるみる太く高くなっていきます。


「テラ! デカ過ぎですよ!」


「あわわわ! ライ、魔力! 魔力を発散させて!」


「なっ! よし行くよ! ほいっと!」


 バックステップをしながら団栗の木にぐるぐるを仕掛けますが、その間も、どんどん大きく育っていきます。


 枝葉はもう広場を覆い尽くすほど広がり、夜の月明かりを隠していきました。

 今日もお読み頂きありがとうございます。


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 いつも応援のメッセージや誤字脱字報告ありがとうございます、本当に助かっております。


 これからも応援よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 村に名物が出来たのです!(笑) 転移者のお兄さん達…ダメダメ過ぎなのです!
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