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第100話 冒険者ギルドでテンプレ

「くふふふ。ついにこの身でこの展開を経験する事ができちゃいました!」


「ライ。嬉しいのは分かったから、この状況をなんとかしなさいよ。周りのみんなが見てるわよ」


 テラがまたそう耳元で言ってくれましたから、頑張りましょう。それにまだ僕は怒ってるんですからね。


 床に膝をついて折れた右腕を庇うようにしているお兄さんに文句を言ってあげませんと。


「それでお兄さん達は何を急いでいたのですか? 何も暴力を振るわなくても話せば分かることなのですよね?」


「ぐぁぁ、て、てめえガキ、何しやがった!」


 腕の折れたお兄さんは、そんな事を言ってきますが。


「殴られそうでしたから、腕を蹴り上げただけですよ」


「なあ少年。あの動きの腕を蹴り上げたと聞こえたが、本当か?」


 カウンターにいて、次僕達が受付するはずだったおじさんが立ち上がり話しかけてきました。


「はい。肘のところをトンってこんな風に。シッ!」


 今度は見えやすいように、蹴り上げたところで止めてあげました。


 周りにいた冒険者達も、注目していますからここはドヤ顔?


「やめておきなさいね。ほらみんながいきなりそんな動きをするからビックリしちゃってるでしょ。謝っておきなさい」


「あっ、そうですね。皆さん驚かせてしまってごめんなさい」


「い、いや、だが今の動きで、こいつの攻撃を蹴り上げ、軌道を反らしたのは良く分かった。でだ、そこのうずくまってるお前の事だが、Cランクと言っていたな、ギルド内であからさまな暴力を振るった訳だが、Eランクに降格だ、それから五年間の昇格停止処分、それが終わった後その間の依頼の受けた数や素行を見極めた後、試験だな、ギルドカードを、これか。ふん!」


 ブチッと首から下げていたギルドカードを紐を引きちぎり取り上げました。


「ま、待ってくれ。Eランクじゃあダンジョンの一階層で角ウサギ討伐と薬草採取しか依頼が無いじゃないか」


「残念だがこれは規定だからな、今さら覆らんぞ。まあ修行のやり直しと思い観念するんだな」


「待て、サブギルドマスター。その男はCランク、現状の依頼達成状況を確認するんだ」


 また奥から一人出てきましたね、受付していたのはサブマスさんだったのですね。


「はぁ。ギルドマスター……分かりました。少々お待ちを」


「それと、そっちの少年の分もだ。いかに振るわれた暴力とは言え、肘を蹴り砕くのはやりすぎだ。どうせEランクに上がったところだろう見習いに落とすくらいはせんと、後のためにならん」


「ん~、では、ギルドカードは渡しますが、折れたの治せば良いですよね? それなら降格も無くなりますし」


 ギルドカードをサブマスさんに渡すとCランクだったので驚いていますが、今はそれより治してしまいましょう。


 僕の足元で座り込んでるお兄さんの手を取ります。


 テラ、ナインテールの時みたいにお願いね。


(はぁ。仕方ないわね、まず手首を掴んで、肩は足で良いわ、真っ直ぐに引っ張るのよ)


 うん。


「お兄さん少し痛いですが我慢して下さいね。んと、うん綺麗に折れてますから簡単です、いきますよ」


 持ち上げるだけで痛そうですが、素直にしたがってくれます。


「くうっ、な、治すってお前、どうやって」


「一気に引っ張りますから暴れないで下さいね。ほいっと!」


 ゴキンと鳴りましたが折れてませんよ。真っ直ぐになるように引っ張った時に手首の間接と、足を添えた肩の間接が鳴っただけですからね。


「ぐぁっ! や、よし、引っ張って骨の位置を治すのか。やってくれ!」


(もう少し引っ張って! そして少し右に! そう! そこで右に捻る! いやいや、お兄さんから見てよ! そうそうそこ!)


「回復です! ぐるぐるー、ほいっと!」


 ナインテールの骨が折れていた時に治したイメージで、お兄さんの肘に魔力を流していきます。


「何をやってるんだ少年。君が折った腕を添え木でもするなら――」


「ぐぅ~。ん? ······なんだ? 痛くねぇ。······ガキお前こんな回復魔法は教会の術師でもいねえぞ」


「は? お前、まさか治ったのか?」


(大丈夫よ。しっかり繋がったわ)


 ありがとうテラ。ちゅ。


(ま! またキスされた!)


「たぶん大丈夫ですね、少し動かしてみて、違和感はありますか?」


 お兄さんは折れていた右手を曲げ伸ばし、捻り、指も握って開いて色々試しています。


「お、おい。そんなに動かして大丈夫なのか? 肘が完全に横へ曲がっていたのだぞ?」


「ああ。もう全然なんともねえ。ガキ。いや、少年。すまなかったな」


 お兄さんは座り込んだままですが、頭を下げ謝ってくれました。


「ギルドマスター、こちらの少年の事なのですがこちらを」


「ん? なんだランクアップの申請……Sランクだと! 二枚目は速報か、ん? 隣国の王の印まであるじゃないか! これはファイアーアントの巣を単独パーティーで壊滅!」


 おお。ちゃんと届いていたのですね、王様はファイアーアント討伐を冒険者ギルドに出したのでしょうかね? そう聞こえましたし。


「なあ。少年はファイアーアントの巣に行ったのか? ここから数日行ったところから森に入る」


「はい。そこですね。ドワーフさんの村を越えてまだ更に奥でしたよ」


「はは……勝てない訳だ、俺達はその場所にさえ行けなかったからな」


 お兄さんもファイアーアントを倒そうと頑張ったのですかね。


「少年、すまないが奥まで来てもらえるか? ここでは少し話せないのでな」


 奥でギルドカードがもらえるのかな? そう言えば審査がどうとか言ってましたね。でも、せっかくの冒険者ギルドで先輩冒険者に絡まれるテンプレは、なんだか微妙に不発でしたし、ちょっと残念です。


 あっ。行っちゃいますから付いて行きませんとね。

 今日もお読み頂きありがとうございます。


 ついに100話とのなりました!!!


 いつも応援のメッセージや誤字脱字報告ありがとうございます、本当に助かっております。


 これからも応援よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 冒険者にきっちり対応して、何処かの世界のギルドとは違って素晴らしい冒険者ギルドなのです!(笑)
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