笑顔の破壊力 lv.79
「あの……私が始めに攻撃したんだ。魔人は悪だと決めつけてた。ごめんなさい。あなた達に沢山傷を負わせて、沢山怖い思いをさせてしまった。本当にごめんなさい」
私は深く頭を下げた。許されると思ってはいないが、謝らないといけない。
「はっはっはっは!」
ジェットが笑いだした。どうしたのだろう。
「クックック」
「ひひひひひ」
イシスとグランも釣られて笑う。
もちろんイシスは無表情だ。
「おい、レイルとか言ったな。てめえはやべえやつだ。てめえらの中で、俺等にちゃんとダメージを与えたのはてめえだけだからな」
そう言って、チラッとダンを見ると、
「毒の奴は惜しかったな。グランの体内に毒を流したんだろうが、グランは毒じゃ死なねえ。『毒の魔人』だからな」
ダンの攻撃は一瞬だった。
だが、ジェットには何をしたのかがわかっていたらしい。
「それは、勉強になります。他の魔人に毒が効いた事で、わたくしは思い上がっていたようです」
ダンは嬉しそうに言った。
勉強になった事が嬉しかったのか、自らの毒でグランを殺さずに済んだ事が嬉しかったのか、あるいはそのどちらもか。
「それにしても、派手にやったね。レイルちゃんの攻撃が当たったところはボコボコになっているし、グランが毒を流した場所は真っ黒だ」
ゼンは指をさしながら言った。
確かに、凄いことになっている。
大きな穴があいている場所と黒く変色している場所が所々にあり、まさに戦争の跡。
「ボク達は戦わなくて良いのであれば、それが1番です。負ける事が分かっていて続ける程、愚かではありません。この戦闘に関しての全ての事を川に流しましょう」
イシスが言った。
「川じゃなくて水なんだろ? グランも、もう疲れたんだろ? また今までみたいに、ただ、あのお方を待ちたいんだろ?」
グランはその場に座り込んだ。疲労が溜まっているらしい。
最後の攻撃で、相当な魔力を使ったのだろう。疲れて当然だ。
「君たちはここにいたいのか……。なら、ゴウカをどうするのか、話し合わないといけないね。君たちも王宮に呼ばれる事になると思うんだけど、移動は可能かな?」
ゼンが3体の魔人に質問した。
「ああ……。俺等が魔人って事をわかってて王宮に招かれんなら行くが、変な扱いしたら暴れっからな」
そう言ってジェットはニヤッと笑った。
ちょっとした冗談のようだが、本当にやりそうで笑えない。
「ははは、いいね。じゃあ、一旦ゴウカから出ようか」
ゼンがワープを使おうと、指を鳴らそうとしたその時、
ズウウウウンッ
地面が動いた。大きく揺れている。
「ジェット、これが君達が言う、例の人が来る合図なのか?」
アークがジェットに聞いた。
「何言ってんだよ。誰かが登場するだけで、こんなでっけえ揺れがある訳ねえだろ」
ジェットが言った。
あのお方と呼ばれる者に関係のない、謎の揺れが起きている。
「はあ、やっと終わったと思ったら次は何が起こるのかな?」
ゼンは、ガッカリした声で言いながらも、顔は笑っている。
ハプニングマニアだ。
「良いもので無いのは確かです。何が起こるのでしょう」
ダンは辺りを警戒している。
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ
という音と共に、魔物や魔人の大群が現れた。
4本足の魔物から、人にソックリな魔人までが、数百、いや、数千体、一気に出現したのだ。
こちらの人数は魔人3体を合わせ、7。
ゼンを戦力と数えなければ、6だ。
「数が多すぎます……軽く千体を超えてますよ。ボクら魔人は、あれらと目を合わせても、操る事が可能ですが、こちらの方々には少々肩が重いかもしれません」
イシスが私達を見ながら言った。
魔人の目を見ないように戦っていたから気が付かなかったが、ジェット、イシス、グランの目は真っ赤だ。
綺麗な宝石のような目をしている。
「イシス、肩じゃなくて荷が重いなんだろ? ここは全員で協力して倒すんだろ?」
グランが言った。
「じゃあ、共闘といこうぜ」
アークが言うと、
「てめえに言われなくてもわかってんだよ」
とジェットが飛び出した。
魔物の『核』の場所は、私にしかわからない。私は魔物が固まっている場所を中心にやっていく事にした。
眼鏡を外し、出来るだけ高くジャンプして、魔物の群れの中心を指さし照準を合わせる。
「消えろ」
私は笑った。
ドッカーーーン!
バラバラバラバラ
数十体の魔物が吹き飛び、赤い魔力石が落ちた。
魔力石はゼンがワープで回収にまわる。
「えげつないですね。こんな攻撃をボクらは受けていたんですか。完璧に殺そうとしていたんですね」
イシスがボソッと呟いた。
「完璧じゃなくて、完全に、かな? 私の相手はイシスだったもんね。もう絶対にイシスに向ける事はないから安心して」
そう言って私は、別の魔物の群れを指さし笑う。
ドッカーーーン!
バラバラバラバラ
「流石にボクも、もう信じてますよ」
イシスは、毒針を10体ほどの魔人の頭部に命中させた。
毒針を刺された魔人は倒れ、魔力石に変わる。
神力も毒針も、殺傷力でいうと変わらないのでは無いだろうか。
「おらああ!」
ジェットとアークは、手当たり次第に切り刻んでいる。
シュウウウウウ
ダンとグランは、魔物と魔人を毒で溶かしている。
グランも、『打ち消しの毒』では無いようだが、魔の者に効く毒を作り出せるらしい。
そちらの方は……あまり見たくない。
倒しても、倒している気がしない。何故いきなりこんなに出現しだしたのか。
……そうか。
「私達が戦ってたから……」
私が独り言のように言ったのをゼンが聞いていたようで、
「流石に、あの量の魔力のぶつかり合いをすると、『核』も大量発生するよね。ぼくもうっかりしていたよ。でも、倒せば良いだけだよ?」
ゼンが、ワープでこちらに来て言った。
私は頷き、
「そうでしたね。泣き言は全てを出し切ってから、でしたっけ」
と言うと、「よく出来ました」と言ってゼンは私の頭にポンッと手を置いて、ワープで消えた。
「触らないでくださいよ」
私は呟き、右腕を上げ、左目を瞑り、目の前の魔物に照準を合わせて笑った。
ドッカーーーン!
バラバラバラバラバラ
魔力石が落ちる。
近くに落ちた魔力石を、数個拾って腰袋に入れた。
この数は私達がどうにか出来るレベルを超えている。
それはわかっているからこそ、足掻くんだ。
私は少し移動して、ジャンプした。魔物の群れを見つけ、指をさし、笑う。
ドッカーーーン!
バラバラバラバラ
走ってジャンプし、笑う
ドッカーーーン!
バラバラバラバラ
走り、ジャンプし、笑う
ドッカーーーン!
バラバラバラバラ
「減らない。全然減らない」
いくら何でも多すぎる。
「レイル! てめえならもっとやれんじゃねえのかよ? もっとでけえ爆発起こしてみせろよ」
ジェットが言った。
こんな時でも、私の事を名前で呼んでくれた事が嬉しい。
「おい、ジェット、レイルに馴れ馴れしくするな。まだ君が完全に仲間だと決まった訳じゃないだろ」
アークが口を挟んだ。
それを聞いたジェットは、
「何言ってんだアーク。俺等は今共闘してんだろうが、それは仲間って事じゃねえのかよ」
アークに言った。
ジェットも口が悪いだけで意外と純粋だ。この2人は仲良くなれそうな気がする。
自分に危害を加えず、むしろ一緒に戦っているのならば、仲間と認定しても良いかもしれない。
「……だ」
アークが何かを言ったようだ。
「ああ? 男ならはっきり言えや」
ジェットが苛立ちを隠さずに言うと、
「仲間だよ! 俺と君たちは仲間だ」
とアークが叫んだ。
「ははは。いいパーティーだよ。この結界の外に、3人……1人はおまけだけど仲間がいるから、後で君達にも紹介するよ」
どこかにいるゼンが言った。
ヴェルデの事をおまけと言った。確かに、パーティーメンバーではないか。
風魔法のおかげで皆の声がよく聞こえる。
この和やかな空気でも、各々しっかりと敵を倒している。
大丈夫だ。やれる。
「私はやれる」
私は自分に言い聞かせる。
「何をですか?」
ルルの声だ。




