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笑顔の破壊力が物理的な破壊力!ー世界最優の兵器は、少女の笑顔でしたー  作者: ぽこむらとりゆ


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78/113

笑顔の破壊力 lv.78

 しっかりしなければ。


「ボクは負けません。ボクが負けたら、ジェットさんとグランさんにお前の毒牙が届いてしまう」


 イシスが無表情で、強い感情のこもった言葉を発した。


「毒牙……ね。毒針を使うイシスにこそ言いたい言葉だよ。お互いに譲れないものがあるのなら、本気で戦って決着をつけよう」


 私はイシスを指さし、笑った。


 相手の仲間を想う気持ちに敬意を表して、ここからは本気で戦う。


 ドッカーーーン!


 砂煙が上がる。イシスは地中に……逃げていない。


 私が指さす方向に攻撃が来る事がわかっているから、ただ避けた。それはそうか。ここまでわかりやすい攻撃も無い。


 イシスが両腕を広げ、頭上から体の真横まで半円を描くように動かすと、腕の動きに合わせ、毒針が生成され、数十本が浮き上がった。


「ボクは地味な攻撃しか出来ないかも知れません、お前のような立派な攻撃は出来ませんが」


 イシスは息を大きく吸い込み、


「ボクは強い」


 と言って、毒針をこちらに向かって飛ばした。


 私は目の前の針に向かい笑う。


 バチンッ


 という音がして、パラパラと毒針が地面に落ちる。


「これで終わりだと思ったんですか?」


 イシスが言ったと同時に、地面に落ちたはずの針が再び浮かび上がり、私に向かって飛んできた。


 この距離では避けられない。


 驚いて笑う間もない。


『死』を覚悟するしか……。


 私は目を瞑った。



 その時、


 バキンッ


 という音と共に、アークが聖剣で針を叩き落とした。


「レイル! 何諦めてんだよ!」


 アークが怒っている。


「あ……ごめん、私……もう無理かと思って」


 声が小さくなる。


「君は諦めるなよ。こんな針、ちょっと避けたら良いだけだろ! 君に何かあれば俺が助けるから、だから、諦めるな!」


 アークが私の目を見て言った。


 こういう事をアークは沢山言ってくれていた。アークだけじゃなく、皆が私を守ると言ってくれた。


 私はこの世界で最強だ。その私を守ると言ってくれる仲間がいるのに、私は私の命を諦めようとした。


 私は、何度仲間に心配をかけたら気が済むんだ。


「ごめんアーク、ありがとう」


 私は深呼吸をした。


 切り替えろ。


「イシス……さっきのは、立派じゃなくて、派手でしょ?」


 と言って私は笑った。


 ドッカーーーン!


「きゃあっ!」


 イシスの叫び声。やはり、女の子なのか。


「イシスは凄いね。針動かせたんだ。全然気が付かなかったよ」


 私はイシスに近付いていく。


 イシスは両足が吹き飛び、立ち上がれない状態だ。


「来ないでください……ボクは……こんな所で……死……」


 イシスは、無表情で声を振るわせている。


 目を合わせていなくても、イシスの目に涙が浮かんでいるのがわかる。


 どうしよう。イシスを殺したくない。


 でも……。


「ごめんね……」


 それしか言えなかった。


「イシス立てよ! 足が無えからなんだ! 死にてえのか! 立て!」


 ジェットがこちらに向かい走ってくる。


 カキンッ


 アークがジェットの足を止める。


「てめえ、殺すぞ。イシスが死んじまうだろうが、ふっざけんなよ、どけよ!」


 ジェットの叫び声が響く。


「イシス! 立つんだろ? 死ぬんじゃないんだろ? 早くそこから離れるんだろ?」


 グランの叫びが聞こえた。


「クッソ。なんだよこれ、俺達が悪者かよ。俺だって……俺だって君達と戦いたくないんだよ! でも、君達が俺達の国に、オルカラ王国に侵攻しようとしてるから……」


 アークも声を振るわせて叫ぶ。


 カキンッガキンッキンッキンッ


「ああ? 何言ってんだよ……俺等がいつ、てめえらの国に侵攻しようとしたってんだよ……俺等がいつ、てめえらの敵になったんだよ……言ってみろよ、このクソ虫が!」


 ガキンッ!


 2人の力が拮抗し、剣が止まった。


 ジェットは何を言っているのだろう。ジェットもイシスもグランも魔人ではないか。


 魔人は倒さないといけない。


 ゴウカの人々を砂に変え、ゴウカを砂漠に変えた私達の敵。


 この3体は?


 この3体は敵だったのか?


「ここまで来て今更何言ってるんだ! 君達がゴウカをこんな風にしたんだろ。君達3人がした事じゃなくても、君達の仲間がしたんだろ!」


 アークも、悩みながら言葉を探している。


「ああ? 何を言ってんのかわかんねえ雑魚共の事を言ってんのか? てめえ、目ついてねえのかよ……俺等があの雑魚共と仲良くしてたかよ? あんな訳のわからねえ奴らと一緒にしてんじゃねえ!」


 このジェットの言葉は嘘ではないのだろう。


 カキンッキンッキンッカキンッ


 また、2人の剣がぶつかる。


 なにやら、不穏な空気になってきた。


「どういう事?」


 私はイシスの前で立ち止まり、眼鏡をかけた。


 イシスは魔力石を取り出し、自らの切断面に当てた。ニョキニョキと足が生えてくる。


 私は止めなかった。


 イシスは敵では無いのかもしれない。


「ボク等はここに『居た』だけです。ただ、大切な人を待っていただけ、ボク等の神様を待っていただけ。落ちていた石は美味しかったから食べました。傷もいなくなるので拾いました」


 イシスは立ち上がり、落ち着いた声で説明をした。


 カキンッキンッガキンッ


「石に関しちゃ、あのクソ雑魚共の胸にあるのを見つけて狩りまくって食いまくってやったが、俺等の目的はそこじゃねえ」


 ジェットがアークの攻撃を受けながら言った。


 神様……魔人の神様って……。


「魔王?」


 声が出た。


 魔人が崇拝する程の存在といえば、魔王しかいない。まさか、魔王が出てくるのか……?


「魔王ですか……そんなに恐ろしい存在ではありません。神様です。もう少しで会えるんです。ボク等の頭部に残る神様の記憶。それだけを頼りに3人で待ち続けています」

 

 イシスは嬉しそうな声色で言った。


「イシス、言葉を間違えすぎなんだろ? あのお方はグラン達の事を知らないんだろ? ただ、グラン達の記憶にいる、あのお方に会える気がするんだろ?」


 グランがこちらに向かい、歩いて来る。


 どうやら、ゼンとダンも戦う気が無くなったようだ。


 魔人から、神様、あのお方と呼ばれる存在がいる。それは、まだ『核』にもなっていないのかもしれない。


 記憶の中にいる、という事は、ゴウカの人達の記憶に濃く残る人が、魔人として生まれ変わるのか……。


 自我を持ったまま? 見た目もそのまま?


 何故そんな事がわかるのだろう。魔人にしかわからない何かがあるのか。


 ガキンッキンッキンッ


「俺等は、てめえ等クソ共が攻撃してきたから受けただけだ。そもそも、攻撃される謂れはねえんだよ」


 ジェットが苛立った様子で言った。


 ゴウカに現れる者は、魔物か魔人で、全て私達の敵だと思っていた。


 いや、思い込んでいたのか。


 魔人だから敵な訳ではない……のか?


 魔人が敵ではなかった本はあっただろうか。


 頭の中に考えがグルグルと回る。


「どうしようか? ぼくはもう休戦で良いと思うけど、この3体に戦意は感じられないし、戦う理由も無くなったよね?」


 ゼンがニコニコして言った。


 カキンッ……キンッ……キッ…………


 アークとジェットが手を止めた。


「ジェット、俺、何も知らなかった。ごめん」


 アークはジェットの目を真っ直ぐに見て言った。


 だが、固まっていない。ジェットは本当に戦う気が無いようだ。


「クソむ……アーク……だったか? 俺もてめえらを勘違いしてたようだな。すまねえ」


 ジェットが頭をかきながら謝った。驚きだ。少し顔が赤い気がする。


 そして、刃物のように変形させていた腕を元に戻した。


 アークは「ああ」と言って、聖剣を鞘に戻した。


「まさか、こんな終わり方があるとは……」


 ダンが驚きの声を上げる。


「誰も死なずに終われたんだからよかったんじゃない?」


 ゼンは相変わらず嬉しそうに言った。


 戦いがこんな形で収束すると思わず、戸惑いが大きい。


 私は何度もあの3体に神力を撃ち込んで、損傷を与えた。謝っても許してはもらえないかもしれないけれど、言わなきゃいけない。


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― 新着の感想 ―
まさか魔人がいいやつだったとは!! 意外過ぎてすっかり騙されましたよ! 確かに、そうじゃないと人質交換成立しないですもんね… 悪い奴じゃないとわかった途端、あのバグった喋り方も愛嬌に思えてくるので不…
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