笑顔の破壊力lv.71
そういえば、今、『核』が見えたのは私の足元だった。
認識阻害により、場所がわからないはずの私の真下に
ピンポイントで現れたのは何故なのか。
『核』の主は、発生場所を選べるのだろうか。
好奇心が湧く。
先程も、アークとゼンの周りに一瞬で現れていたということは……。
頬が緩みそうになるのを抑え、その場に立ち尽くしてみる。
左手で丸を作り、自身の周りだけを左目で確認すると、
「来た」
私の正面、左右、後ろの地中に『核』が発生した。
ここから魔人が出現するまで3秒。
その場で高く飛ぶ。そして私が立っていた場所に向かい照準を合わせた。
「ふふっ。お疲れ様」
ドッカーーーン!
砂が舞い上がる。視界が悪くなるが、少し経つと落ち着いた。
黄色くて透明度の高い魔力石が4つ落ちている。
確定だ。奴らは『核』の発生場所を選べる。
私は眼鏡をかけ、嬉しくて笑う。落ち着かなければ……数回深呼吸をする。
そういえばダンは1人で大丈夫なのだろうか。『オレンジの魔物』に対して、『打ち消しの毒』はあまり効果が無かったようだった。
魔人相手となると厳しいのではないか。
ダンはゴウカの右側。
私は眼鏡を外し、右に向かい走る。
何体かの魔人が、遠くから黒魔法を放ってきたが、身体強化を持った私は軽く避けられる。
ジャンプをして、一回転する間に指をさし、照準を合わせ、頭が下の状態で満面の笑みを向ける。
ドッカーーーーン!!
魔人が消える。私は着地し、眼鏡をかけ、魔人がいた場所を見た。
魔人との距離があると、魔力石の回収が面倒だ。
と思っていると、ゼンが先程魔人が消えた辺りに現れ、笑顔で私に手を振った。
魔力石の回収に来てくれたらしい。ありがたい。
私は小さく頭を下げ、眼鏡を外し、ダンの元へ走った。
その間も魔人は急に現れる。だが、攻撃の隙は与えない。
ドッカーーーン!
近くに落ちた魔力石は回収し、距離があるとゼンに任せた。
少し走ると、ダンが見えた。老婆と若い女性に擬態した2体の魔人と戦っているようだ。
魔人は、口を大きく開け、ゴオオオオッという音をたて黒魔法を放とうとしている所だった。
ダンは、剣を持っている。例の『毒の剣』だろう。
毒というと、黒や紫の禍々しい物を想像していたが、透明の美しい剣だった。
何故かダンは動かない。魔人と目が合っている訳でもなさそうだ。
すると、2体の魔人が同時に溶けた。……グロい。
ダンが私に気付いた。
「おや、レイル様、どうされましたか?」
ダンはこちらを向き、張り付いたような笑顔で言った。
私は眼鏡をかけ、
「『オレンジの魔物』にあまり『打ち消しの毒』は効果が無かったようだったので、魔人相手に大丈夫なのか気になって見に来てしまいました」
と正直に話した。
するとダンはフッと笑って、
「という事は、中央付近にいる魔人はもう全て倒したのですね。流石、英雄レイル様です」
とさっきまで私がいた辺りを見て言った後に、
「確かに、『オレンジの魔物』にはあまり効果がありませんでした。『外からは』ですが」
とダンは意味深な発言をした。
「外からってどういう事ですか?」
私が聞くと、
「見た方が早いでしょう。レイル様もご存知ですよね。『核』はわたくしたちの近くで発生すると」
ダンが言うと同時に、3体の魔人が私達の前に出現した。
「早速出ましたね」
そう言ってダンは、3体の魔人の腹に、次々と剣を突き刺した。
騎士団長という名は伊達じゃない。物凄い速さと正確さ。アークが尊敬する訳だ。
だが、剣を突き刺した『だけ』だ。
魔人はこちらへ……来ない。固まっている。
動けないらしい、3体の魔人が同時に口を開け、ゴオオオオッという音を立て始めた。
ダンはただその様子を見ている。
5秒も経たない内に、ベチャッという音と共に一気に魔人が溶けた。……グロすぎる。
「これは……『打ち消しの毒の剣』ですよね。ダンが毒を硬化させた剣を使う事はアークから聞いていました。刺した相手の体内に毒を流し、侵食すると……」
私は少し恐ろしくて、声が小さくなった。
「あまり怖がらないでください。レイル様の仰る通り、これは『打ち消しの毒』を硬化させて作った剣です。魔人も魔物同様に、毒で構成されていたのでこの剣が有効でした」
そう言ってダンは、透明の美しい剣を、右手で下に向かい軽く振った。
「……ダンが毒使いで良かったです」
私が言うと、ダンは驚いたような顔をした。
「どうかしましたか?」
私が聞くと、ダンはハッとして、
「今まで、誰かに毒使いで良かっただなんて、言われた事が無かったので、驚いてしまいました……嬉しいです。ありがとうございます」
と言い、笑った。気を許してくれたのか、自然な笑顔だ。
そうか……ダンは毒使いと言う事で敬遠されている。
私もこういう機会が無ければ、ただ怖がっているだけだったかもしれない。
「本心ですから」
私はそう言ってから足元を見た。
「私は認識阻害をゼン様にかけてもらったんですけど、なぜ魔人は私の位置がわかるんでしょう」
先程からずっと私達の近くに魔人が現れている。
「確信は持てませんが、魔力を辿っているのではないでしょうか。ルル様が気配と言われているものですね。強い魔力を持つ程、存在が濃くなりますから。その点、この戦いに参加した者は皆不利かもしれません」
そう言うと、ダンはニヤっと笑った。
確かに、ここに参戦した者は全員魔力量が多い。私には魔力は無いが、魔力の上位互換らしい神力がある。
という事は、魔人は私を狙う可能性が高いのではないか。
これは……運が良い。
「私の神力は魔力を強くしたものだと聞きましたが、それだと私が魔人のターゲットになるかもしれないですよね」
私は、嬉しくて笑ってしまいそうになるのを、必死に堪えて言った。
「その可能性は非常に高いでしょう。魔力の質と量を共に考えますと、レイル様、大神官様、オルレア様、わたくし、アーク様の順ですね。ルル様は神の子であらせられる為、狙われる事は無いでしょう」
ダンはそう言って、ルルがいる方向を見た。
神の子は狙われないらしい。
私は初めて知ったが、ルルは知っているのだろうか。これも世界の理に関する事なのかもしれない。
「そうなんですね……ルルが狙われないなら良かったです。ダンは大丈夫そうなんで、私は適当に魔人を倒してきます」
と私が言うと、ダンは呆れたように笑い、
「いってらっしゃいませ」
と言って頭を下げた。
想像の何倍もダンが戦力になる。
嬉しい事ばかりだ。
私は眼鏡を外して、ゴウカの中心に向かった。中心なら強い魔人がいるという確信がある。
ゴウカに溢れる魔力は、あとどのくらいあるのだろうか。
砂になってしまって人達は、もう戻らないのだろうか。気になる事が尽きない。
ゴウカの中心に行く間にも、私の近くで魔人は出現し続ける。
その度に高くジャンプをして、まとめて吹き飛ばした。
中心に近付くと、ゼンがこちらにワープしてきた。
私は慌てて眼鏡をかける。
「レイルちゃん。すごいペースだね。疲れてない?」
ゼンは嬉しそうに聞いた。
高価な魔力石がゴロゴロ転がっている現場に、相当興奮しているようだ。
「身体強化があるので全然疲れないですよ。魔力石を回収してくれてありがとうございます。すごく助かります」
私は軽く笑ってお礼を言った。
「ぼくなんて楽な仕事だよ。それより魔人がすごく追いかけてくるんだよね。ぼくの凄い魔力を、ゴウカの大地が覚えて、ぼくを取り込もうとしているのかと疑っているところなんだ」
何故かゼンは嬉しそうに言った。
それに対して私は、
「魔人は、強い魔力がある人の近くに湧くらしいですよ。ゼン様の魔力の質や量に惹かれたんですね。良い魔力を持っている証拠です」
と私が言うと、
「なんだ、やっぱりそうか。それじゃあ、ぼくとレイルちゃんが一緒にいると魔人が出現しやすくなるのか……いてあげようか?」
ゼンはニヤッと笑った。
「魅力的な提案ですけど、今から強い魔人を探しに、中心に行こうと思ってるんです。ゼン様を危ない目にあわせたくないので、アークかダンのどちらかと一緒にいてください」
と私が言うと、ゼンはつまらなそうに、
「ぼくも行きたかったなー」
と言いながら、何度もチラチラとこちらを見た。
そのサインに気づかないふりをして、私は眼鏡を外し、ゴウカの中心へ向かい走った。
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