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笑顔の破壊力が物理的な破壊力!  作者: ぽこむらとりゆ


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笑顔の破壊力 lv.57

「盛り上がっていますが、まだ行きませんよ。さすがに、物資を調達して、準備を完璧にしてからでないと行けません」


 ルルが、盛り上がる親子に向かい言った。


 2人は少し恥ずかしそうに笑っている。


「そうだね。もう話したい事は大体話せただろうけど、また何かあれば、現地ででも声をかけてよ。今日、ポーションや食料を調達したら、そのままゴウカに向かおう」


 ゼンが言うと、部屋の空気が変わった。


 皆、緊張しているのだろう。


「ゴウカについたら、まずは、前回置きっ放しにした魔力石を回収しようか……まあ、それはぼくの仕事だね」


 そう言ってゼンは苦笑した。


「俺の母親が必要な物資を用意しているらしいから、ちょっと取りに行ってくる。皆はここにいてくれ」


 アークは立ち上がり、玄関から外に出て行った。


 今、黙っていた間に、クロエと思話で連絡をとっていたようだ。


 「さすがクロエだね。ぼく達は大人しく待っていようか」


 そう言ってゼンは、空になっていたカップにお茶を注いだ。


 しばらく和やかな空気で、皆各々にお茶とお菓子を楽しんでいると、


 ヴェルデが、アークが座っていた方をチラッと見た後に、


「あのアークという子は、聖剣を持っていたね。今の勇者はあの子か。かっこいい子だったね、レア」


 と言って、オルレアに探りを入れ始めた。


 勇者と聖女。美男美女で、お互い相手として申し分ない。


 もしこの2人が恋に落ちたら、オルカラ王国の歴史に名を残すビッグカップルになるだろう。


「お父様、私は恋愛に興味はありません。変な想像をするのはやめてください」


 そう言ってオルレアはそっぽを向いた。

 

「ごめんよレア。少しからかっただけなんだ。でも、レアの相手は、かっこよくて、優しくて、レアを1番に考えてくれる人がいいなとパパは思っているよ」


 ヴェルデはオルレアに彼氏ができた事を想像しているのか、目に涙を浮かべている。


「お父様……」


 オルレアもつられてか、何故か涙を浮かべている。


「めんどくさい空気ですね。ですが、聖女が勇者とくっついてくれれば、ルルも好都ご……嬉しいですよ」


 ルルは、オルレアとアークの恋を応援するようだ。


「私もオルレアとアークはお似合いだと思……」


 私が話し出すと、バンッと玄関の扉が開き、


「ダメだ! レイルは言わないでくれ!」


 マジックバッグを持ち、肩で息をしているアークが大きな声で言った。


「レイルに言われると、俺はもう頑張れなくなる」


 曲げた両膝に両手の平をつき、苦しそうに言った。


 こういうやり取り、前にもした気がする……。


 あの時は何で言われたんだっけ……。


「ふふふ。そういう事なのだね。ああ……懐かしいな」


 ヴェルデが小さな声で言った。


「アーク。大丈夫? あ、それがクロエが用意してくれた物が入ったマジックバッグ? 取りに行ってくれてありがとう」


 私はアークに笑顔を向けた。


「はあ……。早くこの戦い終わらないかな……」


 アークは呟きながら、マジックバッグから様々な物を出した。


 その中でも、ポーションの種類と数が凄かった。


 クロエが私達の事を案じてくれているのを感じて、心が温かくなった。


「わあ。すごい数ですね。私と大神官様がいるので回復は大丈夫だとは思っていましたが、戦場では何が起こるかわからないので、これだけのポーションがあれば安心ですね」


 オルレアが嬉しそうに言った。


 ポーションの他にも、水や食料、不測の事態に備えた短剣などの武器も入っていた。


 その中に、なぜか人数分の服と靴が入っている。


「何で服が入っているんだろう」


 私が呟くと。


「レイルちゃん。これは防御魔法がかけられた戦闘服だよ。全部白ベースだね。デザインも動きやすそうだ。あれ? 1つだけピンクの服があるね」


 ゼンが、ピンクの服を両手で持ち、言った。


「それは、レイル用らしいですよ。母親がわざわざ1人だけ色を変えたみたいです」


 アークが言った。


 それは、凄く恥ずかしい。


「面白いね。未来の英雄のイメージカラーはピンクか。この戦いが終わる頃には国内でピンク色の物が大流行してるだろうね」


 ゼンが楽しそうに笑っている。


 そして「じゃあ、着替えようか」と言って、指をパチンッと鳴らすと同時に、私はルルと、家のリビングにいた。


 リビングのテーブルには、私とルルの分の戦闘服が置かれている。


「着替えるためにわざわざ場所を変えてくれるとは、大神官はなかなか気が利きますね」


 ルルはそう言いながら、いそいそと服を着替えだした。


 そういえば、メイド服以外のルルを見るのは初めてだ。


 着替え終わると、


「どうですか? ご主人様。似合いますか?」


 と言って、ルルはクルッと一周まわってみせた。


 いつもの服と違い、動きやすそうなデザインのワンピースだ。


 下は膝丈のスカートで、黒いタイツのような物を中に履いている。


「凄く似合ってるよ! ルルは可愛いから何でも似合うね。デザインもかわいいし、普段着にしても良さそう」


 私が笑顔で言うと、ルルは照れ臭そうに笑って、


「ありがとうございます! では、ご主人様も自室で着替えてきてください」


 と言って、私の背中を押して部屋へ誘導した。


 ルルが、部屋の外から扉を閉めたのを確認してから、私は戦闘服に着替えた。


 服自体はすごく可愛い。


 何故か、ルルよりも少しスカートが短いような気がする。タイツがあるから気にはならないが。


 着替え終わると、少し恥ずかしくなり、ゆっくりと扉を開けた。


「ご主人様、どうです……って、何と言う愛らしさ! その恥ずかしがっているお顔もセットで最高です!」


 ルルが大興奮で感想をくれた。


 顔の事を言われると、余計に恥ずかしい……。


「あ、ありがと。でもちょっと服が可愛すぎる気がする」


 ルルは私が何を着ても褒めてくれるのだろう。


 私には似合わないのでは無いかと不安になる。


 ピーッピーッピーッ。


 私のマジックバッグの中から音がする。イヤリング型の通信具の音だ。


 私はイヤリングをつけて、石を触った。


『やあ、レイルちゃん。ルル様も着替え終わったかな?』


 ゼンの声だ。


「はい。一応……。着替えました」


 私は少し言葉に詰まった。


『じゃあこっちに来てもらうよ』


 とゼンが言うと、私とルルは元の場所に戻っていた。


「レイちゃん! すごく可愛いです。まるで花の精のようです」


 オルレアが私を見るなり言った。


 オルレアを見ると、スカートがくるぶしあたりまである、少しタイトなロングスカートタイプの白いワンピースだった。


 横にスリットが入っている事で、動きやすく設計されている。


 オルレアのイメージと合っていて、綺麗だった。


「オルレアもすごく綺麗。クロエが皆のイメージを考えながら作ってくれたのかな」


 そう考えると、恥ずかしい気持ちが消えた。


 アークとゼンは白いジャケットに白いパンツだ。所々違いがあるようだが、よくわからなかった。


「流石クロエが用意しただけあって、サイズも着心地も機能性も最高だね」


 ゼンが満足気に言った。


 ゼンによると、この戦闘服には、魔法耐性、麻痺耐性、毒耐性、物理にも耐性がついているらしい。


【ゴウカの魔物】の毒は、魔法では無い事から、毒だろうと言われているだけであって、厳密に言えば毒では無いらしい。


 この、毒耐性は意味がないと思っておくように。との事だった。


 これだけの耐性がついていても、【ゴウカの魔物】には、全て意味がない可能性もある。


 防御魔法は無いものだと思っておいた方が良いだろう。


「あとは、さっきヨハンと連絡をとってたんだけど、ぼく達がゴウカで戦っている間、ゴウカ周辺にダンの部隊が待機してくれる事になったよ」


 ゼンがニコニコして言った。


「ダンの部隊ですか? まさか、この戦いの為に部隊を編成してくれてたとは思いませんでした。手を借りないようにはしたいですけど、気持ちに余裕ができますね」


 私は嬉しくて自分でも驚くほど、明るい声で言った。


「いや、ダンは元々部隊を持っているんだよ。ダンはああ見えて、『王室騎士団の団長』だからね」


 と言ってゼンはニヤッと笑った。

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