笑顔の破壊力 lv.27
アークはニコニコしているが、凄い事を言ってのけた。
神力が見える?
ここでルルがアークに、
「やはり、勇者には神力が見えているのですね。あの時、勇者が、ご主人様が撃った神力を避けたのをルルは見ました。あれは偶然では無く、見て、反応したのですね」
そう言って、少し考え込んでから、
「あの日の夜は、『父』にその事を相談しました。その目は、父が祝福を与えたわけではないようなので、勇者は『運命に選ばれし者』だという結論に至りました。この広い世界では、神の関与しない奇跡が、ごく稀に起こります。その奇跡が今回、勇者の目に宿ったわけです」
ルルは、またわかりやすく、アークがなぜ神力を見られるのかを説明した。
「ご主人様と勇者には、目に力が宿っているという共通点がありますが、2人の能力には圧倒的な格差がありますので、勇者は勘違いをしないように」
ルルは、なぜか、刺さなくても良い釘をアークに刺した。
「わかってるよ。俺もレイルがどれだけ凄い力を持っているかは、身を持って知ってるからな。ルルはこれにも気付いてたか?」
そう言ってアークが聖剣をルルに見せた。
「……え?」
とルルが小さな声で言うと、
「これ、神力ですよね! なぜ聖剣が神力を纏っているのですか? 聖剣には、長い歴史がありますが、そんなの聞いた事ありません! あと! 勇者に呼び捨てされると怒りが湧くのでやめてください!」
そう叫んでから、アークを睨んだ。
その剣幕にアークは一瞬怯んだような素振りをしてから、ルルの質問の答えを話し出した。
「本来、聖剣が魔力を纏っているのは知ってるよな? 今、聖剣が神力を纏っている理由はなんだと思う?」
アークは私達に問いかけた。
すると、ずっと話を聞いていたオルレアが、
「レイちゃんという、神力を扱える存在の出現……でしょうか」
と言いながら私を見た。
なんとも言えない微妙な表情をしている。
オルレアの言葉に、アークは頷き、そうだ、と言った。
「聖剣の魔力は街中から集められている。大気中に漂う魔力や、魔道具の使用時に溢れる魔力、あとは、魔法使いが街の中で魔法を使った時に流れている魔力、そして、魔法の誤射等、魔法を使える者から供給される魔力だ」
アークはそう言って聖剣を私達に見せた。
まさか、聖剣が街に溢れる魔力を使っていたとは……。
私のイメージでは、聖剣というだけで、理由もなく強いものだ。
アークと目が合う。
「そして、俺と初めて会った時のレイルが俺にぶっ放したものはなんだった?」
アークがニヤリと笑った。
そういう事か!私のミスがそんな所に影響していたなんて……。
「どういう事ですか?」
オルレアが言った。
あの時あの場にいなかったのはオルレアだけだ。
わからなくて当然か。
「私とアークが知り合ったきっかけなんだけど、アークが急いでて、私にぶつかったんだよ。その時に、私は、この眼鏡を落としてしまったのに気付かず笑ってしまって、無意識に街中で神力を撃ったの」
言葉にすると、その時の事が頭に浮かんで恐ろしくなる。
私の様子を見て、アークが私の頭に手を置いた。
私は、その手を払いのけて続けた。
「さっきのアークの話と合わせて考えると、私が撃った神力を、聖剣が吸収したって事になるんだよね。ルルが言っていた、街中にある建物の身代わりに、この街では聖剣が使われていたのかな」
私が言うと、ルルが頷いた。
「聖剣はこの世で最も高強度の鉱石が使われていると言われています。実際に聖剣を調べてみても、削れもせず、折れもしないので何もわからないそうなのですが、聖剣を身代わりにしているのなら納得がいきますね。防げるわけがない神力を防いだ身代わりが何かずっと気になっていたので、ルルは知れて満足です」
ルルは、話しながらずっとアークを見てニヤニヤと笑っていた。
アークは痺れてきたのか、自分の手を見つめている。
「アークさんは、勇者になりたくて聖剣に挑んだのですか? 聖剣に選ばれる自信があって挑んだのですか?」
オルレアが聞いた。
アークは少し悩むそぶりをした後に、
「聖剣を引き抜けば勇者になれる、というのはこの世界では誰もが知っている事だろ? もう数え切れない程の人達が聖剣に挑み、破れているという話は子どもの頃から何度も聞いていたんだ。だから、挑戦しなかった。俺は自分を特別だなんて思った事がないからな」
アークは、昔の事を思い出しているのか、遠い目をして言った。
「でも、あの日、自警団の奴らが聖剣に挑戦するって言い出したんだ。実際はどんなものなんだろうと気にはなっていたから、俺もただ見るために着いて行った。遺跡に着いて、聖剣を見た瞬間に気付いたよ。これは、『あの時のレイルの力が纏われている』と。神々しい光を纏った美しい剣だった。でも、周りは何も見えていない様子で、聖剣を抜く順番を争っていた。挑戦するつもりは無かったはずなのに、気が付いたら聖剣を手にしていたんだ」
アークは、不思議そうな表情で聖剣を見ている。
まさに、『選ばれた』のだろう。
無意識下で、聖剣に呼ばれる程に強く。
オルレアは軽く頷き、
「そうなのですね。私は、聖剣を抜くのはレイちゃんだと思っていました。だってレイちゃんはこの時代の主人公ですから!」
凄く良い笑顔で言ってくれているが、オルレアは私を過剰評価しすぎだ。
私は主人公ではない。
初めてオルレアに会った日、アークが聖剣を抜くのを見た日。
私は2度も、自分が脇役だという事を思い知らされている。
こんなに持ち上げられている意味がわからない。
オルレアの言葉を聞き、ルルは何度も頷いている。
まって……。もしかして……。
私は焦る気持ちを抑えながら、
「聖剣が神力を纏っているって事は、アークも【ゴウカの魔物】を倒せるって事?」
私は聞いた。
【ゴウカの魔物】に効くのは、神力のみ。
今までは、私1人で倒す予定だったけれど、パーティーメンバーに神力をつかえる者がいるとなると話は別だ。
アークはこちらを見て笑顔で頷いた。
「元はレイルの力だけど、こうやって聖剣に留まってくれたおかげで、レイルの手助けができる。ありがとう。レイル」




