笑顔の破壊力 lv.24
王様が何処にいるのかはわからないが、私とルルは王様にとって無視できない存在のようだし、意外と早く会ってもらえるかもしれない。
少々無礼でも、一刻も早く話さなければ。
まさか、不敬罪で死刑なんて事ないよね……。
部屋から出ると、ダンがいた。
「レイル様、ルル様、いらっしゃいませ。こんなに早く来て頂けて、わたくしは嬉しいです。もしや、王の元へ行かれるのですか?」
ダンはあの笑顔で言った。
「こんにちは。ちょっと急用で王様に会いたいんです。案内していただけますか?」
私は質問をしたが、断られることは無いだろうと踏んでいた。
「もちろんで御座います。わたくしは、レイル様のお願いを断れる立場にありません。では、わたくしに着いてきてください」
そう言ってダンは私に背中を向け、歩き出した。
私は歩きながら、ブレスレットのことを思い出した。
「あの、これ返します。一瞬でここまで来られました。ありがとうございます」
ダンにブレスレットを渡そうと手を伸ばすと、
「返却は不要です。そちらは差し上げます。レイル様ならいずれまた、王宮に来る事になるでしょうから」
どういう事だろう。王宮に来る大層な用事ができる予定などない。
まあ、もし必要となった場合、便利なのは間違いないか。
「ありがとうございます。では、貰っておきます」
私は、ブレスレットをバッグに入れた。
オルレアと話した時、オルレアはダンの事を知っていた。
ダンの名前が出てきた事に驚いていた。私達には執事と言っていたが、裏の顔があるのかも知れない。
歩き出して、数分でダンの足が止まった。
「着きましたよ。ここが謁見の間です」
漫画で見た事があるような扉だ。
謁見の間の扉は、どこの世界も似たような装飾を施すらしい。
『入りなさい』
中から声が聞こえた。
ノックもしていないのにどうしてわかったのか。この扉にはセンサーでも付いているのだろうか。
扉が勝手に開いた。
「失礼します」
ダンに促され、謁見の間に入った。
謁見の間は、赤と白がバランス良く使われた広間だった。
何故か、中央に大きな白くて丸いテーブルと、テーブルを囲むように椅子が3脚置かれている。
奥には、王様が座るらしい豪華な椅子がある。
玉座というやつだ。
だが、王様がいない。こういう時、王様は玉座でふんぞり返っているはずなのだが……。
「よく来てくれたな。レイルよ。オルカラ王国は君を歓迎するぞ」
小さいお爺さんが目の前にいた。台詞と、王冠を被っている事から、このお爺さんが国王なのだとわかった。
国王は、小さくて丸かった。
金色の髪と目は、王家の特徴なのかもしれない。
申し訳ないが、頼りなさそうな王様だ。
「さあさあ、2人ともこっちに座ってお茶でもしようじゃないか」
先程から気になっていた丸テーブルに向かいながら王様は言った。
謁見の間でお茶をするだなんて、聞いた事がない。
「お招き頂きありがとうございます。私は……」
自己紹介をしようとすると、
「そんな堅苦しい挨拶は抜きにして、早くここに座りなさい」
王様は既に座っている。
私とルルは、王様に促されるまま空いている椅子に座った。
このまま王様のペースに呑まれたら、ちゃんと話が出来なさそうだ。
「あの、神託があったと聞きました。恐らく私に関する事だと思うのですが、オルカラ王国での私の扱いは今、どうなっているのか、教えて頂けますか?」
私は気になっている事を、単刀直入に聞いた。
王様は、わっはっはっと笑った後に、
「なんだ、そんな事を気にしていたのか。気になるのなら教えよう。今、オルカラ王国での君の扱いは、『未来の英雄』だ」
そう言って、私に向かって親指を立てた。
こんな事を王様に言わせるとは……。
神託で『神』は大神官に何を言ったのだろう。
「英雄ですか。それは凄いですね……。陛下にそこまで言わせるだなんて、神託でどんなお告げがあったのか気になってしまいます……」
私は恐る恐る言った。
「神託の事は大神官に聞いておくれ。余に聞いても細かい説明はできないからな。近々、席を設けるとしよう」
王様は楽しそうに言った。
すると、メイド長のジェイナが、紅茶と沢山のお菓子を持って来た。
ルルは目を輝かせ、今にもよだれが出そうだ。
この世界なのか、国なのかわからないが、お茶を楽しむ機会が多いように思う。
茶葉の種類も豊富で、魔道具で入れているからか、香りの広がりがすごく、とても美味しい。
私は紅茶も甘いものも好きだから問題ないが、どちらかが苦手な人は大変そうだ。
ジェイナが紅茶をカップに注ぎ、全てのお菓子を並べ終えてその場を去ると、ルルは早速食べ始めた。
私は紅茶を一口飲んでから、
「陛下、お話があります」と王様に声を掛けた。
王様は少し驚いたような顔をした後に、にっこりと笑って、「聞こうか」と言ってくれた。
「【ゴウカの魔物】が、聖女の結界を食べているようです」
私が言うと、王様の表情が固まった。
すると、ルルが口を開いた。
「ルルはご主人様からそのお話を聞き、魔物のその行為を『取り込み』だと判断しました。恐らく魔物共は、『聖女の結界』を少しずつ削り、魔力を吸収して、自身の力として取り込んでいます、そして削られた分、聖女の結界は弱くなっているでしょう」
ルルは真剣な表情で王様に訴えた。
「そんなことが……我が国が50年間やって来た事が裏目に出たというのか。魔物が、聖女の結界を破り外に出てくる前に、早急に手を打たねば」
王様は、扉の前で待機していたダンを呼び、耳打ちをすると、ダンは笑顔ではあったが、表情に焦りを滲ませて謁見の間を出て行った。
「メイド長。椅子をあと2人分用意してくれ」
王様はジェイナに言うと、
ジェイナは「かしこまりました」といい、何もない所から椅子を出現させた。
魔法がある世界だとわかっていても驚いてしまう。
そして、空いているスペースに2脚の椅子を置き、ジェイナは下がって行った。
私と王様の間、そして私とルルの間に椅子が置かれている。
「この話は【ゴウカの魔物】の討伐に関わる全員が聞かなければならない話だ。レイルの他に、2人参加させようと思っている。ルル様は参加されないとの事で、3人での討伐になる事を覚悟しておいてくれ」
そう言うと、王様は紅茶のカップを持った。先程の話を聞いた焦りからか緊張からか、カップを持つ手が少し震えている。
王様といっても、普通の人間なのだ。
自分が納める国が、危機に瀕しているとわかれば、責任感と恐怖で押し潰される思いだろう。
ん?今、ルル様って言った?
確かに王様は、ルルに『様』をつけた。
私は呼び捨てだったのに……。
何故だろう。気になる。
「さすがに、私1人であの数の魔物を相手にするのは厳しいので、他に2人も仲間がいるのは心強いです。ところで、今ルル様って言いましたよね? なぜルルに『様』をつけられたのか聞いても良いですか?」
私は王様に聞いた。
国の頂点である王様が、私のお世話係であるルルに敬称をつけた。
気になって、聞く以外の選択肢はない。
「ああ、それは当たり前だ。ルル様は神の子。本来、私達には手の届かない存在であられるのだから」
ルルの正体が判明した瞬間だった。
確かにルルは、夜な夜な思話で話している相手を父親だと言っていた。
それが神である事はなんとなく気付いていたが、本当に父親だったとは。
建前上、父親と言っているだけではなかったらしい。
「ルルって神の子だったんだ。すごいね」
私が言うと、ルルは驚いたような表情になり、
「それだけですか? 神の子って聞いて何か他にないのですか? ルルに興味がないのですか……?」
最後はしょんぼりして悲しそうな表情で言った。
正直、細かく説明を求めたい。
だが、この話を広げる場所はここではない。
ルルがどのような存在であろうと、私とルルの関係が変わらない。
確実に話が長くなるのがわかっていて、わざわざ王様の前でする話でも無いだろう。
「気になるけど、今その話すると長くなるでしょ? 【ゴウカの魔物】との戦いが終わってから聞くことにするよ。だから、ルルは直接戦闘に参加しない事。わかった?」
ルルが消えてしまったら、話をすることもできない。
「わかりました! ルルは後方支援にまわりますね!」
ルルは嬉しそうだ。
そんな話をしていると、
「到着されました」
とダンが言った。どうやら、残りの2人が来たようだ。
ゆっくりと謁見の間の扉が開いた。




