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笑顔の破壊力が物理的な破壊力!  作者: ぽこむらとりゆ


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23/57

笑顔の破壊力 lv.23

 食事を終えると、ルルはまた1人で出かけて行った。


「はあ……」


 私はお風呂に入りながら、今日は散々だったと、1日を振り返ってため息が出た。

 

 ゴウカか。あれほど砂漠地帯になっていると、もし、魔物を全部倒しても、街としての復興には相当な時間がかかるだろう。


 ということは、一刻も早く、戦いを終わらせなければならない。


 あの巨大な魔物を倒す。私がひとりで。


 不安だ。


 やはり、修行あるのみ。


 私は洗面所に行き、鏡に向かって笑顔を向けた。


 出来るだけ、いろんな角度で良い感じに笑えるように練習をする。


 地味だが、これは意外と大事だと思う。たぶん。


 この先、泣きたいのに笑わないといけない時がくるだろう。


 私は笑わないと、技が出せないのだ。


 いつでも笑えるように表情を作る。表情筋にはこの戦いが終わるまで頑張ってもらおう。


 すぐに神力が撃てるように、左目を閉じて指をさす練習もした。


 さすが身体強化。腕が疲れない。これなら問題なさそうだ。


 部屋に戻り、ベッドに寝転ぶ。


 いろいろな事が頭を回る。


 アーク。勇者になったんだな……。


 この世界の主人公はアークとオルレア……。


 私は……。


 などと考えているうちに眠ってしまった。


 朝になると、ルルに起こされ、植物達に水をやり、本を読み、食事をする。平凡そのものだった。


 ルルは忙しそうにしていたが、食事の準備や、家の掃除は完璧にこなしていた。


 平凡な日を堪能するのは、魔物を全て倒してからだ。と思い立ち、また、散歩がてらゴウカが見える距離まで歩いた。

 

 正直あまり近づきたくない。とにかく魔物の見た目が気持ち悪い。


 相変わらず、結界にへばりついている魔物も数体いる。


 足が4本だと、結界に張り付いている魔物が人型に見え、違和感と恐怖で気分が悪くなる。


 こんなのを、普通に暮らしている国民が見たら大パニックになるのではないか。


 ゴウカは結界で囲まれているだけで、目隠しがある訳ではない。


 国民が興味本位で覗いていてもおかしくはないのだ。


「これはトラウマになるでしょ」


 私は呟いた。


 少し近付いてみる。


 ガリガリッガリガリッガリッ。


 ゴリッゴリゴリッガリッガリッ。


 不快な音が聞こえる。何かを削っている?


 その音は、結界にへばりついている魔物の方から聞こえていた。


 これは……。


 私は走って家に戻り、ルルの帰りを待った。


 1時間程経つと、玄関の扉が開く音がし、足音が私の部屋まで来た後、ルルが部屋に入ってきた。


「ただいま戻りました! ご主人様が着ていくお洋服の生地が手に入りましたよ! 早速ルルがご主人様にぴったりのものを作りますね」


 ルルはご機嫌だ。


 そんなルルに私は話しかけた。


「ねえルル。結界って食べれるの?」


 私が言うと、


「どうしたのですか! ご主人様らしくないですね。そんなにお腹が空いているのですか? 結界は食べ物ではありませんよ! 結界が食べられる物なら【ゴウカの魔物】が出てきちゃうじゃないですか!」


 ルルは冗談まじりに笑って答えた。


 そうだ。結界を食べられる訳がない。


 でも、結界に張り付いていた【ゴウカの魔物】は食べていた。


 しっかり見た訳ではないが、絶対に食べていたと言い切れる。


 私が黙っているのを見て、ルルから笑顔が消えた。


「何かあったのですね? ルルに話してもらえますか?」


「信じてもらえるかわからないけど、【ゴウカの魔物】が、オルレアが張った結界を食べているのを見た」


 私が言うと、ルルの顔が青ざめた。


「ルルがご主人様の言葉を疑うはず無いじゃないですか! それは緊急事態です! 最悪な事が起きようとしている可能性があります! 少し早いですが、明日、王宮へ行きましょう」


 そう言うと、ルルは自室へ行き、明日の準備を始めた。


 しばらくしてルルが私の部屋に来た。


「ご主人様! ご飯を食べて、明日に備え今日は早く寝ましょう」


 そう言うと、また私を起き上がらせてくれた。


 ルルと一緒に夕食をとり、この日は同じ布団で眠った。


 次の日、朝食をとった後、


 私はルルが昨日作ってくれたピンクのワンピースを着て、バッグを肩にかけ、軽く髪をセットしてもらった。


「ご主人様かわいすぎます! ドレスは大袈裟ですので、淡い色のワンピースにしました! 所々にあるレースで上品に仕上げています! ご主人様はピンクがお似合いなので、ルルは大満足です!」


 ルルは興奮気味に言った。


「ありがとうルル。かわいい色で嬉しいよ。良い話をしに行くわけじゃないけど、出かけるのが楽しみになった」


 私は鏡の前で言った。自分じゃないみたいで、少し照れ臭かった。


「じゃあそろそろ行こうか」


 私は、バッグからダンに渡された、ブレスレットを取り出した。


「はい! ご主人様」


 ルルが言ったタイミングで、私はブレスレットのボタンを押した。


 一瞬、浮遊感があったものの、すぐに、地面に足が着いた。


 顔を上げると、大きな門の前だった。


「すごい」思わず声が出た。


 王宮は、一言で言うと壮大だった。


 門が閉まっている。どうしたものか。


 門番らしき男が2人、門の両脇に立っていた。


「あの。ここを通していただきたいんですけど、王様に呼ばれてて」


 私は、封筒に入っていたカードを見せた。


 門番は顔を見合わせ、背筋を伸ばした。


「どうぞお入りください」


 そう言って門を開けてくれた。


「ありがとうございます」


 私はルルと門を通り抜けた。


 さて、ここからどこに行けば良いのか。


 あまりにも広すぎて、道に迷ってしまいそうだ。


 とりあえず目の前にある、1番大きな建物を目指す事にした。


 もっと、ダンから王宮の詳細を聞いておけば良かった。


 と思ったけれど、指示や命令をする事ができなかった為、ここに行けと言えなかったのかもしれない。


 少し歩いたら、恐らく敷地内で1番大きな城の前に辿り着いた。


 門の前には誰もいない。勝手に入っても良いのだろうか。


「入っちゃいましょう。待っていても埒があきません」


 ルルが城の大きな扉を開けた。


「お待ちしておりました。レイル様。ルル様」


 執事とメイドがずらっと並んでいる。なぜ私達が来たのがわかったのだろう。


 いつ行くか教えてもいなければ、門番に名乗ってもいない。


 心当たりがあるとしたら……。ブレスレットか。


 恐らく、あのブレスレット型の魔道具は、ボタンを押した瞬間に、ダンに通知のようなものがいくのだろう。


 GPSのように、居場所がわかるものでなければまだ許容範囲だ。

 

 私とルルは、メイド長だという『ジェイナ』に、私達のために用意されたらしい部屋へ案内された。


 部屋は広く、豪華絢爛であった。


 その光景に呆気に取られる私の目の前で、ルルはベッドで跳ねている。まるで子供だ。


 私はあまりに早い展開についていけず、しばらく立ち尽くした。


 はっと我に返り、ここに来た目的を思い出した。


 もちろん王様に呼ばれていた、という理由はあったが、それよりも【ゴウカの魔物】について、話さなければならない。


 ルルを見ると、既にベッドで跳ねるのをやめていた。


「行きますか?」


 ルルが言った。


「うん。王様に会いに行こう」


 私は答えた。



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― 新着の感想 ―
ルルさん何ベッドで跳ねてるんですか! 相変わらずの天然ポンコツ(優秀)ぶり! 聖剣抜けなくて良かったんじゃないかと思っちゃいました。 何故なら笑顔のウインクで戦って欲しいからです!(^_−)−☆バチ…
あああれ、結界を食べてたのか 食べてた……!?たべてた!?? やばいじゃん。やばいじゃん。やばいじゃん。
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