笑顔の破壊力 lv.101
「ローズ、レアもレイル様も困っているよ。離しておあげよ」
ヴェルデが優しい声で言った。
「ごめんね! 二人に会えたのが嬉しくてつい!」
ローズは、私達を解放する。
「オルレア、ローズさんの隣に座りなよ」
「良いんですか……? では、お言葉に甘えさせていただきます」
私の提案にオルレアは嬉しそうに笑い、ローズと席に着いた。
ここでゼンが口を開いた。
「じゃあみんな揃ったね。会議を始めようか」
早く来たつもりだったが、私達が最後のようだ。
部屋を見回すと、アークも魔人達もダンもテーブルを囲み座っていた。
王様は今回も同席はしないようだ。
また、あの蓄音機のような魔道具で聞いているのだろうか。
私は空いている席に腰掛けた。
「とりあえず、ぼく達が集められる情報は全て集めたよ。じゃあまず、サモラ王国についてだね。首謀者は国王と王妃だったよ」
ゼンは、言葉は軽いが真剣な表情で言った。
「今回話を聞いたのは、タキ・サモラというサモラ王国の王子なんだ。王子といっても、水面下で反乱の同志を集めて王室を潰そうとしているんだけどね」
物凄い情報が飛び出した。
サモラ王国の王子は、両親のしている事を知っているのか、反乱を企てているらしい。
ゼンは王子にコンタクトを取り、サモラ王国の情報を聞き出した。
「もちろんタキに聞いた後にこちらでも調べて、証拠も揃えてあるよ。ここからは胸糞悪い話になるから、心して聞いてほしい」
ゼンによると、五人の精霊王を独占するオルカラ王国に、長い間憎しみを抱いていたサモラ王国は、オルカラ王国を落とし、精霊王も国も手に入れようとしたらしい。
だが、オルカラ王国が『無戦協定』を結んでいる事で、直接手を出す事は出来ない。
そこで、まず始めたのが、自国にある魔法師団の団員達の家族を人質にし、思い通りの研究をさせる事だった。
魔法の研究の為に組織されたはずの魔法師団員達は、家族の命を守る為に、国王の命令で黒魔術の研究をする事になる。
これが始まったのは百年以上前の話で、未だに人質は囚われたままらしい。
「百年以上前なら、五十年前の集団失踪とは関係ないんですね」
私が聞くと、
「それとこれとは別問題だよ。まあ、集団失踪もゴウカの件に関わってはいるけどね」
ゼンは悲しそうな顔をした。
「その集団失踪ですが、やはりサモラ王国は、生贄を捧げ、沢山の命を代償に、黒魔術により魔物を生み出していました」
ダンの声に少しの怒りが混ざる。
「そして、その魔物にオルカラ王国への攻撃命令だけを植え付け、ゴウカへ転移させて、五十年前の悲劇が起こった、という訳です」
ここまで話すと、ダンは深呼吸し、自身を落ち着け、またいつもの笑顔に戻った。
百年以上前から、魔法師団の人達を脅し研究させ、魔物召喚の黒魔術が完成すると、沢山の自国民を犠牲にして隣国に攻め入る。
そんな王の下に生まれた国民達が可哀想だ。
「そんな……集団失踪の原因が生贄だなんて……それは人……なんですよね……?」
オルレアが顔を青くして言った。
ローズが頷き、オルレアを抱きしめる。
「何の関係もない人達を、自分達の野望の為だけに生贄にしたって?」
アークは俯き、怒りで体を震わせている。
「オルカラ王国を落とす為だけに、サモラ王国の宝とも言える魔法師団を、脅して利用したのだよ。僕たち精霊王がそんな事で味方につくはずがないだろうにね」
ヴェルデが呆れたように言った。
「そんで、そのクズ共はどうすんだよ? まさか野放しにしてる訳じゃねえよな」
ジェットが大きな声で言うと、
「当初の予定通りだよ。既にこちらからサモラ王国に部隊を送り、この件に関わった者全てを拘束しているんだ。あの『お二方』には長い長い苦しみを味わってもらおう」
ゼンがニヤッと笑った。
何もない場所で数百年もの時間を過ごす。
食事も最低限のものを与えられるのだろう。
話し相手もいない1人だけの空間ならば、考える時間は腐るほどある。反省してくれたら良いのだが……。
「そんな奴らに与えられる罰が退屈だけなんて、人質や失踪者の事を考えると生ぬるいんじゃないですか?」
イシスはつまらなそうだ。
「退屈は退屈でも極度の退屈だからね。精神操作で1日を何倍も長く感じるようにするんだ。気が狂ったら意味が無くなるから、その前にまた精神操作をかけて正気に戻すのを繰り返すんだよ」
ゼンはニコニコしながら言った。
考えただけで恐ろしい。
死よりも辛い罰は存在するのだ。
「この罰は本当に恐ろしいんだろ? でも奴らに相応しいんだろ?」
グランがイシスに向かい言うと、イシスは満足そうに頷いた。
すると、ダンが後ろを向き動かなくなった。
恐らく誰かと思話で話しているのだろう。
数十秒程でこちらを振り向き、
「王室騎士団、副団長のケイから思話が届きました。囚われていた人々を見つけ、保護したそうです。ですが、百年以上も劣悪な環境に置かれ、衰弱しているので、大神殿で治療出来ないかとの事です」
ダンはゼンに向かい言った。
ゼンはニッコリと笑い、
「オルカラ王国にある神殿から神官を集めよう。大神殿には、囚われていた人達が快適に過ごせる部屋も用意しておくよ。カイデンに指揮をとらせるから、ケイにはカイデンに連絡するように言っておいてよ」
そう言うと、ゼンは指をパチンと鳴らし消えた。カイデンの元に行ったのだろう。
ダンはまた後ろを向き、ケイと思話を繋ぐ。
思話を繋いでいる間、目だけが動くのを見られたくない人は、後ろを向くというのはこの世界で当たり前なのだろう。
オルレアにも教えてあげなければ……。
人質解放を聞き、部屋の雰囲気が明るくなった。
ほぼ問題は解決したと言って良い。
しばらくすると、ゼンが帰ってきた。
「サモラ王国に関してはほぼ解決したね。後は、黒の精霊王ネロがどこに行ってしまったのか、だ」
ゼンが言うと、
「ネロ君の居場所なら知っているよ」
ヴェルデが驚きの事実を口にした。
『ええ!!』
部屋にいる誰もが驚いている。
魔人達はあまり状況が飲み込めていないようだが、リアクションはしていた。
「ヴェルデ! 今、ネロの居場所を知っていると言ったのかい? ぼくは今まで何度もネロの話を出したと思うんだけど、何で言わなかったのかな?」
ゼンはヴェルデに笑いかけているが、その笑顔が怖い。
確かに思い返してみると、ネロの話をした時に、ヴェルデは何かを言おうとしてやめた事があった。
それに、ネロなら大丈夫というような発言をしていたような気もする。
ネロが何処にいるかわかっていたからこその反応だったのだ。
「精霊王は皆、ネロ君の気配を感じられるからね。僕はネロ君が、ゴウカが無くなってしまったから、ずっといじけて一人で遊んでいるんだと思ってしまっていたよ」
ヴェルデは変な思考をしている。
「ヴェル! 少しでも気になる事があるなら、皆と共有しないとダメでしょ! そんな大事な話ならもっと早くにしなきゃ!」
ローズがヴェルデを叱りつけたが、全く迫力がない。
『強い女モード』で思い切り叱ってほしい。
ローズに叱られたヴェルデは、特に気にもしていないようで、ヘラヘラしている。
「まあ、ヴェルデを責めても仕方ないし、探す手間が省けたと思えば良いかな。それで、ヴェルデ。ネロの居場所を教えてくれるかな?」
ゼンが言うと、ヴェルデはニコニコとしながら、
「じゃあゼン、皆を外にワープさせてくれるかい?」
とゼンにお願いをした。
外にネロがいるのだろうか。
外に出てネロが見つかるのならば、今までだってすぐに見つけられたはずだ。
ゼンは不思議そうに首をかしげながらも、指をパチンと鳴らした。
気が付くと、私達は城の外にいた。
相変わらず浮遊感の無い、素晴らしいワープだ。
「ヴェルデ様、ネロ様の居場所とは何処なのでしょう? 見た感じ、ただ外に出ただけですが……」
ダンがヴェルデに言うと、ヴェルデは空を見上げ、上空を指さし、
「あそこだよ」
と言った。




