視聴者との距離感
チームどうしよう…。
あれから数日悩んでいるが答えが全くない。
クリスマスプレゼントの方は、直人に相談したら二人で折半して一緒に買いに行こうということになりなんとかなりそうだが、イベントに参加するチームの方が解決しない。
ナナイロのゆきはさん達はまず無理だ。
個人勢の方々を誘うという手もあるが、個人勢ならなんでもしてくれると安売りされそうで怖い。
そのきっかけを作っちゃったのは俺なんだけど…。
本当にこれからは気をつけよう……。
他に知っている人はプロ選手やうまい人ばっかりだが、誰を誘うにしてもなんかしら問題が起こりそう…。
困ったな…。
そんなことを思いながら学校から帰りパソコンを立ち上げるとディスボにメッセージが来ていた。
goodさんからだ。
いい加減スマホのディスボをダウンロードしようかとは思っているのだが、面倒くさくて未だやっていない…。
『大会2/10に決まったから夕方以降あけておいてくれ』
goodさんダメだよな流石にー…。
そう思いつつも聞く事だけなら大丈夫だろうと聞いてみた。
『了解しました。ちょっと俺からもご相談があるんですが…』
『どうした?』
『音声いけますか?』
するとボイスチャットが開き、俺は慌ててイヤホンをつけてマイクを起動した。
「すいませんー」
「どうしたよ?」
「あのですね…俺今度リアルのイベントでOPEX講座やることになりまして」
「あー見た見た。なんかパン屋のやつだろ?」
「ですです」
「リアルの知り合いなんだろ?」
「あ、はい。それはそうなんですが、ちょっと予想以上の反響がありまして…」
「へぇ、どんなもんなん?」
「講座の希望者が昨日時点で250越えで、勝負は100ぐらいっす」
「やべーな。俺等のチームのイベントより集まってんじゃね…」
「それでですね、講座の方はなんかホールを貸してくれることになったらしいんですが、勝負の方が困ってまして」
「元々どういう予定だったん?」
「練習場で疑似でやろうかなと」
「終わらねーな(笑)」
「はい…(笑) それで、そのパン屋の息子さんと相談した結果、チームのVS方式にしてさばける人数増やせないかと…。できる限り多くのお客さんに来て欲しいそうで」
「あーーーなるほど。んでチームメンバーに困っていると?」
「はい…」
「てかお前それいくらで受けたん?」
「…む、無料です……」
「お前……気をつけろって言っただろうがーーー」
「すいません…今回でちゃんと自覚しました……」
「普段あんだけ冷静にプレーするくせによー」
「お恥ずかしい限りです…。最悪一人で参加人数を限定してもらおうと思ってるんですが、もしチーム組める人いたらそっちんほうがいいなとは思ってまして…」
「あーねー。普通じゃ絶対無理だけど、お前ならワンちゃんあんなー。ちとオーナーに電話してくるから待ってて」
「え…?」
そういうとgoodさんはディスボをミュートにした。
そして暫くすると、
「ちとオーナーもディスボ来るから待っといて」
「ええ?」
するとDMSKSオーナー_カッキーというアカウントが入ってきた。
「アークさんどうも初めましてー。ダマスカスオーナーの柿名です! カッキーさんでいいよー」
「あ、は、初めましてアークです」
「goodから聞いたよー。なんかうまい事理由つけてgoodとか参加させてもいいんだけど、一つ条件というかお願いがあるんだよねー。もう既に大会の解説激安で受けてもらっちゃってるけど…」
「は、はい」
「ちょっとさ、goodとか他のやつでもいいんだけどさ、ナナイロの子との配信に混ぜてくれない?!」
なるほどなぁ。
それできるのかなぁ。
通常状態だと難しいよなぁ。
「なるほどですね…」
「いやさ、ナナイロさんガード硬くてさぁ、なかなかコラボできないのに、なぜかアークさんだけはバンバンできてるじゃん?」
「そ、そうですね。日向ゆきはさんのお陰ですかね」
「だよねぇ。あの子一気に有名になったもんねぇ」
「そうですね…」
「だからなんとかなんないかなぁ? バーチャル界隈もOPEX結構やってるけど、バーチャル好きな人ってプロ選手の動画見ないんだよねぇ。まぁ逆も然りなんだけど…」
まぁ確かにそうかも。
俺もゆきはさんの動画以外は、プロ選手の動画しか見ない。
だってそっちの方が勉強になるから。
ま、同じような理由でバーチャルメインの視聴者さんはプロ選手の動画をそうそう見ようと思わないんだろうな…。
「俺もそこまでいつもナナイロの人とご一緒しているわけではないんですが、通常状態だと難しいかもしれません。ナナイロのマネージャーさんが参加者毎回調整しているので…」
「そっかぁ…」
「でも、半年ぐらい猶予がもらえるなら、どこかのタイミングでお呼びできるかもしれません。例えば…まりんさんをミスリルランクにする! とか」
「おお、なるほど!」
「なので、なにかそういうイベント的なものがあればできるかもしれません」
「本当?!」
「できないかもしれませんが…」
「まぁ了解! 既に激安で解説受けてもらってるし、今回は特別にいいよ! もう一人もうちのチームからでいい?」
「いいんですか?」
「その代わり機会があったらお願いね! アークさんいればgoodとかも話しやすいでしょバーチャルの人」
「そっすねぇ。バーチャルの人、距離感難しいんですよね。いや、違うな。バーチャルの人の視聴者さんとの距離感ですかねぇ」
あーーーわかるーーーー。
それ確かにめちゃくちゃ難しいんだよ。
だって怖いからね、バーチャル配信者さんの視聴者さん達!
「ま、まぁ、俺もそれは分かります。ただ、例えばゆきはさんとかだと、もう完全にゆきはさんもゆきはさんの視聴者さんも俺には慣れてるんで、うまくバランスはとれそうです」
「それ助かるわー」
「恐らくご一緒頂く一人目はどんなタイミングであれどう考えてもゆきはさんになると思いますし…」
「それはもう、実現したらうちとしては願ったりかなったりだよ! 彼女もう飛ぶ鳥を落とす勢いじゃん!」
「そうですね…。本当すごいと思います…」
「まぁそれじゃ、機会があったらそれもお願いするということで、今回はgoodとあと一人参加させるね! んじゃ細かいところはgoodと相談して!」
そういうとカッキーさんはディスボから抜けた。
「ま、そういうわけだ」
「いいんすかね」
「いいもなにも、前言ったろ? バーチャルのしかもナナイロの配信者に近しい外部の動画配信者なんてお前ぐらいしかいないんだって」
「ナナイロってすごいんすね…」
「まぁ後お前の有名になり方もよかったよなぁ。初戦でキルムーブして、最後に2位であの号泣。あんなドラマチックな展開作ろうと思っても作れねーもんなぁ」
「そうなんですかね…」
「んじゃとりあえず、設定ともう一人決まったら連絡すっからー」
「ありがとうございます!」
こうして、ベーカリーTAHARAのイベントに、ダマスカスからgoodさんともう一人も参加することになった。
ベーカリーTAHARA豪華すぎないか…。
俺はそんなことを思いながら、イヤホンを外して、スマホを見ると、直人から来週の放課後クリスマスプレゼントを買いに行くから、その日はプレゼントを買えるぐらいのお金を持って来いとメッセージが来ていた。




