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お金の事

俺がそんなことを思っていると部屋がノックされたので返事をした。




「ねーねーあっくん」




莉乃愛が扉を開けて入ってきた。




「どうしたの? ってかノックするようになってきたよね」


「ふ! わたしだって学習するのだよ!」




莉乃愛はチッチッみたいな感じで、そのままベッドに座った・




「それで?」


「あ、田原のやつありがとね」


「うん、一回引き受けちゃったし、そんなに人集まるとも思えないし、まぁ大丈夫でしょ…」


「それでね、私さ、また文化祭みたいな感じでステージ出るんだけどさ、前回と同じでいいと思う?」


「いいんじゃないの?」


「だって雪菜の事、普通の人は知らないよ? 西の中里ってのも」


「あー確かに…」


「しかも、一応雪菜に大丈夫か聞いたら事務所の人に確認してもらうみたいだけど、今回一般の人だから、もしかしたら喋り声をカットしてもらうことになるかもって言っててさ」


「なるほどね」


「どう思う?」


「そうだねー…」




莉乃愛はモデルを隠しているわけでもないし別にいいんだろうが、確かに雪菜さんの動画は一般の人に見せるとなると少し怖い気もする…。


確かそういう制限は入ってないって雪菜さんからは聞いていたけど、ナナイロに所属した時と今じゃ有名度が段違いだもんな。


あ、俺もなのか…注意しなきゃ…。



しかもあの動画は「西の中里、東の菅谷」という言葉を前提として作っているので、それを知らないと盛り上がりにはかけるだろう。



俺は少し考えて、




「直人に相談してみなきゃだけど、今度は雑誌モデルにチェンジすれば?」




すると莉乃愛は驚愕した。




「ありだ…! あ、でもあのメイクわたしできない」




と、ドーンっと言った。




「あ、そうなの? 前雑誌見せてもらった感じ、あれはあれでかなり違ったからいいかと思ったんだけど…」


「だってあのメイクやってもらってるもん」


「そうなんだ…無理なの?」


「無理無理! どうやってるのかすら不明!」




莉乃愛は絶対に無理! みたいな感じで言った。


そういうもんなんだ…。


化粧なんてしたことないし、これからもすることないから全くわからない。




「でも、別に文化祭の時みたいに勝ち負けとかある感じじゃないのに、そこまでやる?」


「もち! 文化祭の時楽しかったから!」


「そ、そう…それじゃとりあえず直人に相談かな…雪菜さんの動画を無くして、りのあの動画の構成を変更して終盤に雑誌の映像とか、まぁ彩春ちゃんとか茜ちゃんにRinoはやばいみたいに言ってもらう感じにすればギャップはでるんじゃないかな…」


「んーーー、よくわからない! あっくんが言うならそうなんでしょう!」


「…。とりあえず直人に相談しようか」




俺はそう言うと、スマホをデスクに置いて直人に通話をかけた。




「どうしたー一応勉強中だぞー」


「あ、ごめん、今大丈夫?」


「あー、どうせやる気あんまりないからいいぞー」


「よ! 直人!」


「おぉ、りのあちゃんか…なんかこの流れ前もあったな」


「察しが良くて助かるよ直人」


「今度はどうしたのー?」




俺は直人に動画の作成を頼んだ時のようにいきさつを話した。




「もちやるぞ!」


「センター近いけどいい?」


「まぁそっちはお前も知っての通り余裕だろ。なんなら、りのあちゃんと雪菜ちゃんの動画作りきって、それがめちゃくちゃ面白かったからちょうど全体的にモチベ下がってたところだ」


「そっか」


「直人なんとかなるー?」


「そーだねー。学校のカットは前撮って使ってないやつとかもあるから、編集だけでなんとかなると思うけど、Rinoの所は新しく撮らないとだねー」


「そこは彩春ちゃんとか茜ちゃんに協力してもらえばいいかと思ったんだよね」


「あぁ、確かにな。後はメイクやらをどうするかだなぁ」


「わたしできないよ?」


「あぁ、メイクさんのメイクはできないよねぇ。ってかりのあちゃん、撮影の時メイクさんとかヘアメイクさんとかついてるんだね」


「そう!」


「洋服は?」


「え、準備してくれたの着てるよ?」


「それはもう、読モじゃなくてモデルだね…」


「そうなの?」


「一般的に読モの人は私物で自前が多いからさ。あってもちょこっと写真撮るときに直すぐらいだよ」


「へぇー。あーでも最初は確かにそうだったかも?」


「まぁ、りのあちゃんがいいならいいんだけどねー。んー、メイクさんは流石に雇わないとかなぁ」


「それは俺だすよ」


「いやいや、流石にわたし出すよ!」


「んじゃそれはそっちで決めてくれ。そしたら構成考えてまた連絡するからよろしくー」


「直人ありがとねー!!!」




そう言って通話は切れた。




「あっくん! わたし出すよ!!」




莉乃愛は両腕を組みながら言った。




「いやでも、俺最近、動画配信でそこそこ収入あるようになってきたからさ」


「それはそれ! これはこれ! わたしのことだから!」


「んー、でもりのあ、母さんからお小遣い断ってるんでしょ?」


「だって、流石にそこまでは悪いもん!」


「別にいいと思うけど…。もう母さん完全に娘だと思ってるし」


「それはそれ!」


「あー、それじゃあ今回の撮影代は親に出してもらう? 言ったら子どもの部活費みたいなもんでしょこれ?」


「え、あ、うん? そうなの?」


「そうそう。だから親に出してもらおう」




俺はそう言って莉乃愛の返事を聞かずにリビングに向かい、莉乃愛は後をついてきた。




そして母さんに一通り話したところ、もちろん快諾された。



莉乃愛は以外と言っちゃうとあれかもしれないが、お金の面は結構しっかりしている。


母さんに生活費を払うと言っていたらしいが、母さんはそれを拒否。


そして逆にお小遣いあげなきゃ! 母さんがと言い出し、莉乃愛はそれを拒否。



その押し問答が小さいことでもよく起こってる。



まぁ大体母さんが押し勝ってるけど…。




結局今回は俺が良くわからないロジックで押し切った感じだけど、日ごろの昼食代や、友達と遊んだりもするだろうに、そこまで高額な出費はきついだろう。



自分の生活費を自分で出してきてたから、お金はしっかりしたんだろうなぁと、母さんに「ありがとー!」と言っている莉乃愛を見ながら俺は思っていた。

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