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夜の海

バーベキューがひと段落したところで、直人が事前に準備しておいた花火を出してきて、俺以外の皆は浜辺で花火をした。


俺はもう疲れたので動く気になれず花火は断固としてパスした。



そして花火も終わり、生物などの後片付けを終えて家の中に入ると、俺と直人は一人でビールを飲んでた直人の親父さんに少し絡まれ、女子たちはシャワーに入りに行った。



莉乃愛が最後にシャワーから出てきて、




「んじゃ二人ともまた明日ねー!」




と言って二階に上っていった。


俺らもシャワー浴びて寝るかーと、シャワーを浴びて、一人で晩酌している直人の親父さんを置いて、1階の小さめの畳の寝室に布団を敷いて寝た。




俺がこんなリア充っぽい生活を送ることになるとは。


帯同はしているが、リア充っぽい生活を送れているかどうかはわからないが…。


しかし、莉乃愛も雪菜さんもみんな楽しそうだったし、なんだかんだよかったのかもしれない。


そんな風に思っていると、横からは直人の寝息が聞こえてきて、それを聞いていたら俺はなんか逆に寝れなくなり、外の空気でも吸おうかとリビングに向かいテラスから外に出た。


ちなみに直人の親父さんはリビングのソファーで寝ていた…。




テラスから外に出ると、昼間とは違って少し過ごしやすい気温になっていて、なんだか静かで波の音がやけに大きく聞こえた。


俺、海は夜の方が好きだな。と思いつつ、浜辺の方に歩いていき、浜辺に大きめの岩があったので座って海を眺めた。


よく考えたら、夜の方が好きなのは海だけじゃなくすべてだわ…。


そんなことを思っていると、ふいに後ろから、




「湯月くん」




と声をかけられた。




「おわ…ゆ…雪菜さんかびっくりした…」


「ご…ごめんね驚かせちゃって」


「いやいや全然大丈夫」


「他の子たち寝ちゃったんだけどなんだか寝れなくて」




という雪菜さんは学校の運動着だった。


俺もジャージだしみんなそんなもんか。


でも、雪菜さんだと学校の運動着でも美人なのがすごい。






「俺も、直人は寝ちゃったんだけど、なんか寝れなくて」


「隣、いい?」


「あ、どうぞ…」




そう言って俺は岩の端の方に移動した。


雪菜さんは岩の空いたスペースに腰かけると、




「昼間も楽しかったけど、なんかこういう夜の海もいいね~」


「俺は断然夜の方がいい…」


「あはは、湯月くんらしい(笑)」


「やっぱり陰キャ生活長いからね…」


「あはは、私もあんまり変わらないんだけど、でもやっぱり皆でこういうところ来るのは楽しいね」


「まぁ皆すごい楽しそうだったね」


「湯月くんは?」


「んー、楽しいと言えば楽しいけど、なんか未だに自分がこういうところにいることに実感がわかない感じかな…」


「筋金入りだね(笑) にわかの私とは比べ物にならない!」


「あはは、でも日向ゆきはのリスナーさんにこんな場面を見られたら、俺多分もう死んでるね(笑)」


「ど…どうだろう…。まぁ、でも、あるかも? (笑)」


「こわいこわい」


「でも湯月くん本当色々ありがとね」


「いやいや、海は直人のおかげだよ」


「うんん。海じゃなくてこれまで」




雪菜さんはそういうとニコッと首をかしげてこっちを見た。


波の音が聞こえ、月明かりに照らされた雪菜さんはそれそれはもう幻想的だった。


俺があまりの美しさに言葉を失ってると、




「ど、どうかした?」


「あ、いや、あまりに神秘的なほど美人で…」




と俺が言うと、雪菜さんは下を向いて小さな声で言った。




「あ、ありがと…」


「あ、いえ…。雪菜さんはどうして、バーチャル配信者を選んだんですか? 準備とかも考えると、実写の方が圧倒的に簡単じゃないですか?」


「あのね、私昔から可愛いって言われることが多くて…」


「あぁ…気にしなくて大丈夫ですよ? 変な風に思ったりしませんし、実際美人ですしね!」




と俺が言うと、雪菜さんは顔をあげた。




「それでね、中学まではいつも周りに女の子がいっぱいいて、それはそれで悪くはなかったんだけど、なんか私じゃなくて可愛いが重要視されているように思えちゃって」


「あー…なるほど…。俺中学から男子校なんでわかりませんけど、確かに普通の学校だと「あの可愛い女の子私の友達だから!」とかありそうですね」


「そうなんです。それでなんか、容姿じゃなくて、本心で話せるような感じに憧れて」


「なるほどー、確かにバーチャルだと中身の容姿がいくら良くても、話がダメだとどうにもならないですもんね」


「はい。運にも恵まれてここまでこれました…。最近は、バーチャル配信者も多くて全然登録者増えない人とかも多いので…」


「雪菜さんは声も言葉も優しいですからねぇ。視聴者さんも穏やかな人が多くて、いい雰囲気ですよね」


「はい、本当バーチャル配信者やっててよかったです! こうやって湯月くんとも会えたし!」


「俺も雪菜さんのお陰で、こうやって動画配信が収益化しました!」


「私の今があるのはアークさんのお陰でもあるので、だからありがとうって」




雪菜さんはそう言うと、優しくニコッと笑った。




「いえいえ雪菜さんの努力の賜物ですよ」


「でもやっぱりアークさんにOPEXを教えてもらってから、色々私の環境も変わっていったしさ」


「まぁでも、役に立てたならよかったです。プラチナも行けましたしね!」


「まぁちょっとまぐれみたいな感じでもあったけどね(笑)」


「運も実力のうちですよ(笑)」




そう言って二人で、海の上に浮かぶ月を見ながら「あはは」と笑った。

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