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お誘い

「アークさんお疲れ様です!」


「ゆきはさんお疲れ様ですー」


「デスト帯のランクは疲れますね…」


「まぁチーターもいますからねぇ」


「それで、あの、ご相談というのは私ではなくですね…ナナイロの方からでしてお呼びしてもいいですか?」


「え…あ、大丈夫ですよ」




やばい、なんかやらかしたか?


そうしてしばらくすると、ナナイロ太田というアカウントが入ってきた。




「アークさん初めましてー! ナナイロのマネジメント部門の太田と申します! ゆきはさんの担当でもあります!」


「あ、はじめまして、アークです」


「ゆきはさんのコーチングだけじゃなく、非公式ですけど育成枠いつも本当ありがとうございますー! 今日もありがとうございました!」


「あーいえいえ、僕程度で良ければって感じではあるのですが。登録者も増えてますし嬉しい限りです…」


「それはもう! それでね、アークさんもしよければナナイロ所属しません?」




そっちかー!




「バーチャル配信者になりませんかってことですかね?」


「はい! ゆきはさんの相談にも乗られていたとのことですので、大体のことはおわかりかとは思うのですが」


「そうですね、大体はわかっていると思います」


「それでねー、OPEXはさみんなが皆うまいわけじゃないんだけど、今はやっぱり再生数も接続数も稼げるから、何とかしてあげたいんだけど、上手い方々は皆さんどこかに所属しているか個人で金銭を稼いでらっしゃってしがらみが…」


「まぁそうなんでしょうね…」


「アークさんが所属してくれたら、育成枠だけじゃなくコラボ配信する理由ができるから、うちの所属皆のOPEXのレベルをあげれるなぁと…」


「なるほど~……大変申し訳ないのですがお断りします」


「やっぱりかーーーー」


「ほらー、アークさん無理だと思いますって言ったじゃないですかー」




と、ゆきはさんが言う。




「本当すいません。僕は自分がバーチャル配信者としての細かな対応ができると思いませんし、まぁなんかこのまままったり続けられればいいなぁと思ってますので…育成枠は別にそれを続けることは問題ないですし」


「そうですかーー。ゆきはさんに話したら、「絶対無理だと思いますよー!」って言われてたんですよねー(笑)」


「だって、なんかアークさんがアバター動かして喋ってるイメージわかないんですもん(笑)」


「まぁそれは俺もわかないね…(笑)」




そう話していると太田さんが、




「まぁダメ元だったんで全然いいんですけど、気が変わったらいつでもゆきはさんに言ってくださいね! 飛んできますから!」


「あ、はい、わかりました、ありがとうございます」


「それでは、私はここら辺で失礼しますねー。ありがとうございました!」


「ありがとうございました~」




そう言うと、太田さんはディスボードから抜けていった。




「なんか元気な人ですねー」


「そうなんです! 色々気遣ってくれて助かってるんです! アークさんお時間ありがとうございます」


「いえいえ、全く問題ないですよ」


「事務所の方々も、配信者の皆さんのOPEXのレベルをあげることに結構困ってるみたいなんですよねー」


「他の事務所所属やプロチームとかとやるにも、何か理由がないとどこかに角が立ちそうですもんねー」


「そうみたいです。私はアークさんが無所属で本当運がよかったです!」


「そう言ってもらえると嬉しいです。是非プラチナ行ってくださいね」


「はい、ランク配信見に来てくださいね!」


「了解です、では俺はこれでー」


「はい、ありがとうございました!」




そう言って、ディスボードを抜けた。


窓の外では、夜だというのにまだセミが鳴いており、俺は高校最後の夏休みに入った。





夏休み。


ソロ配信を終えて、俺は部屋の扉のホワイトボードをとり、コーヒーをとって部屋に戻った。


夏休みは結構時間があって、配信も勉強もできるしいいな~なんて思っていると、部屋の扉がノックされた。と思ったら、いつも通り開いた。




「りのあ、もうノックと同時にドアは開けるもんだと思ってるでしょ?(笑)」


「えー、ノックはしたよ?」




と言いながら莉乃愛は、部屋に入ってきて俺のベットに座った。




「ねーねーあっくん」


「んー? なに?」




俺はそう言いつつ、再びパソコンの画面を見ていた。




「わたし補講なくなったじゃん?」


「うん、そうみたいだねー」


「夏じゃん?」


「うん、そうだね」


「暑いじゃん?」


「まぁ部屋はエアコンあるから涼しいけどね」


「海じゃん?」


「……」


「行くじゃん?」


「どうぞ…」


「あーーーー、そう言えば前に、あっくんの買い物付き合ったお礼が残ってた気がするなーーーーー」


「…いや、それは何か欲しいものを……」


「わたし何かお礼に物を買ってとはいってないもん!」


「……確かに」


「海じゃん?」


「…」




俺が莉乃愛の方へ振り替えると、ニヤニヤして莉乃愛はあぐらをかいて座っている。




「…海はまじできつい……」


「なんで?」


「暑い。パソコン使えない」


「そもそも海に行ってパソコン使う発想を無くしなよ」


「それは難しい…」


「あーーーー、そう言えば前に、あっくんの買い物付き合ったお礼が残ってた気がするなーーーーー」




再び莉乃愛がそう言った。




「ぐ…………わかりました…」


「イエーイ!」


「二人で行くの?」


「んー海とか人数多い方が楽しそうだし、友達呼ぼうよ」


「この前の?」


「あいつらいたら楽しいんじゃない?」


「いやいや、それは無理すぎる! もうテンション高そうすぎて俺死んでしまう」


「まー確かにあの鬼テンションはあっくんにはきついか。んじゃどうする? 絶対人数多い方が楽しいってー」


「ぐ……わ…わかった。俺が直人に相談して調整する」


「それ、あり! んじゃよろしくねー!」




そう言って、親指を突き立て、莉乃愛は部屋から出ていった。




『直人、夏休み暇だろ』

『一応受験勉強はしてるけど暇っちゃ暇だよ』

『毎年誘ってくれてるあれに今年は乗ろうかと』

『あれ…? ま…まさか、別荘のやつ?』

『そう』

『海だぞ?』

『理解している』

『一体どうした?』

『りのあが貸しの代償に海に行きたいと』

『そーれーはーーーーー! お前は神か!』

『りのあは大人数の方がいいというが、りのあの友達は陽キャ過ぎて俺が無理すぎる』

『なるほど、んじゃ他にも呼んだ方がいいのか』

『そうなるが、俺はお前以外喋れない』

『んー確かになぁちょっと考える』

『すまない』




次の日、直人から連絡がきた。




『考えたんだがお前が喋れるというフィルターをかけると、ほぼ誘える人がいないんだが』

『知ってた』

『そこで俺は思いついた』

『ほう?』

『茜を誘う→彩春ちゃんを誘う→雪菜ちゃんを誘う』

『そ…それは…』

『いや、もうこれでお前が喋れる人を限界まで探しての結果だ』

『しかし…』

『これが実現すれば、なんて眼福な会に…!! お前が友達いないのが悪い』

『それは確かにそうなのだが…』

『ということで、しばし結果を待たれよ』




いや、確かにそうなんだけどさ。


それ実現したら莉乃愛になんて話せと。

 

西の中里と東の菅谷が一緒に海って…。







そんなことを思いつつも直人にお願いしているので、俺が何かを言える立場にもないので、いつも通り配信と勉強の夏休みを過ごした。





直人に相談してから数日後、珍しくドアがノックされたので返事をすると莉乃愛が部屋に入ってきた。




「あっくんー、海の話進んでる?」


「うん、まぁ一応」


「華蓮に話したらさー、華蓮も絶対行くって言っててさ、華蓮覚えてる?」


「あ、うん、三好さんでしょ?」


「そうそう、んで、一緒に行けなかったらあっくんの個人情報を闇業者に販売するって言ってるんだけど、華蓮だけ連れてってもいい?」




いやいや、俺の個人情報安売りされすぎじゃない……。


しかも闇業者ってなに……。




「あ、うん、多分大丈夫だと思う」


「おっけーさんきゅー」




そう言うと、手を振って莉乃愛は出ていった。


 

これは無かったことにはできないな…そんなことを思いつつ、日向ゆきはさんの配信のアーカイブを開いた。



つい先日ゆきはさんは、その日マッチした野良の方々が結構うまい方が多く、運もあったがプラチナ道の集大成として、プラチナランクへ到達した。

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