復活
ソロのランク配信をして、少し勉強していると雪菜さんからメッセージが来た。
『湯月くん、お久しぶりです! ちょっとディスボードでご相談したいのですがどこかでお時間いただけませんか?』
『お久しぶりです。大丈夫ですよ。いつがいいですか?』
『えっと、明日の21時以降とかだといかがですか?』
『何時でも大丈夫ですよ』
『じゃあ、明日の21時でもいいですか?』
『了解です!』
『ありがとう(スタンプ)』
何かあったのかな?
雪菜さんが中の人をやっている、白風あげは日向ゆきはに転生した。
雪菜さんの転生告知は結構話題になり、色んな切り抜きも投稿されて、日向ゆきは一躍時の人となり、最近ナナイロの方とコラボ配信を続けて行っていた。
それにしても雪菜さんの転生告知は凄かった。
何も投稿されていない日向ゆきはのチャンネル登録者は8万人を一気に超えて、白風あげはを一日にして上回ってしまった。
雪菜さんの努力のおかげでもあるけど、ナナイロの力も凄いなぁ。
雪菜さんは、一気に手の届かない雲の上の人になってしまったなーなんて思いながら次の日学校に行くと直人が、
「聞いてくれ。妹に雪菜さんの連絡先を教えてもらう交渉がいよいよ大詰めだ」
「へー、あの妹さんをよくそこまで引っ張れたね。箸にも棒にもかからなそうだったのに」
「ふっ、なめてもらっちゃ困る。おれはこの為に、投資していた株を一部売却した」
「交渉ってか買収じゃんそれ」
「買収も交渉の一つだ」
「んで大詰めってことは話が進んで来たってことなの?」
「うむ。最初俺からの提示は、絶対欲しがっているであろうベレンシアガのバックだ。」
「うわー、いきなり攻めたな…」
「そう…意表をついて一発着地で決めようと焦った結果で、これはよくなかったと後悔したが、後悔してもしょうがないのでおれはそのまま突き進んだ」
「アホだな…」
「妹はいきなりの一手にビビってたが、どうもおれの予算に余裕があると踏んだらしく、追加でボーバリーのワンピースとベレンシアガの帽子を要求してきた」
「兄弟でなにやってんだよ…」
「流石のおれもびっくりしたが、背に腹は代えられんと悩みに悩んだ末に了承した。そうしたところ、なんと妹がまさかの変化球をもう一球投げてきやがった」
「もうそのまま現金渡せばいいじゃん…」
「「あ、そういえば彩春ちゃんも欲しいものあるって言ってたなー? 雪菜さんって彩春ちゃんのことすっごい信頼してるんだよなー」と」
「お前の妹頭良くないかそれは。兄貴の金で友情の醸成まで図りに来てんじゃん」
「おれはもう負けを悟り、一つだけ何が欲しいか聞いてくれ…と伝え今日にいたる…」
「まぁわかったことはお前がバカだってことだわ。それ総額いくらかかるの?」
「正直40万ぐらいかかるかもしらん…」
「それで手に入るのが雪菜さんの連絡先だけって、なんかもはや不幸だな」
「いや! 雪菜さんの連絡先にはそれぐらいの価値がある!!」
「いや、俺にそう言われても…俺知ってるし…」
「ぐあああああ、むかつくぅーーーー!」
「まぁご愁傷様です」
「東の菅谷はなんかこう、相変わらずうまくはぐらかされているが、俺は東西攻略する!」
「頑張ってくだされ」
バカだなぁと思いつつ、その日学校から帰った後直ぐにソロ配信を行って、遅めの晩御飯を食べて、雪菜さんと話す予定の時間になったので、俺はディスボードを起動した。
ディスボードを起動して暫くすると、日向ゆきはさんからフレンドが飛んできた。
承認すると、サーバーに招待されたので入室した。
「お久しぶりです、アークさん!」
「おひさしぶりです、そして初めましてゆきはさん」
「あ、確かにゆきはでは初めましてですね!」
「しかし、日向ゆきは凄い勢いですね」
「本当、色んな方に呼んでいただいて、ありがたい限りです」
「無理しすぎないようにしてくださいねー」
「ありがとうございます!」
「事務所の方はどうですか? 何か困ったこととかないですか??」
「今のところ大丈夫です! 担当の方がすごくよくしてくれて、前より配信のことを考えることができるんです~」
「おお、それはいいことですね」
「はい、なのでよかったです!」
「それは俺も安心しました~。それで今日はいったい?」
「あ、えっとですね、アークさんまた一緒にOPEXのコーチング配信やってくれないですかね?」
「いや、俺は全然いいですけど、事務所さんがいいって言いますかね? 俺がそこそこの配信者ならいいってなるかもしれませんが」
「それなんですが、私転生以降もOPEX配信やっているんですね」
「はい、俺もいくつかみましたよ!」
「ありがとうございます! それで最近OPEXの配信をしていると、ランクの伸びが著しくないのも理由ではあるんですが、昔から応援してくれてる人たちが、『教えてアーク先生は廃止なの?』とか、『アーク呼ぼうよ』みたいな感じで、結構コメントを貰うことが多くなって…」
「ああ、そうだったんですね…なんかすいません…」
「あ、いえいえ! 私は全然いいんですが、流石に難しいかなと思っていたんですけど、担当さんが、視聴者さんも仰ってますし、アークさん呼んでみても大丈夫ですよ? って言ってくれてまして」
「おお、そうなんですね。 俺はゆきはさんがいいなら全然いいですよ!」
「本当ですか? やった! そしたら、教えてアーク先生シリーズ復活させよっと! あ、それで担当の人が、もしアークさんが良ければあと1枠を他のナナイロの配信者をいれるから、その人にもOPEX教えてあげて欲しいって言ってまして…」
「ああ、それは全然いいですよ! ゆきはさんもプラチナまで見る約束でしたしね!」
「今まで通り無料でいいんですか?」
「もちろんです! 同時配信できるだけで相当メリットありますし、お金なんてもらえませんよ!」
「それならよかったです! あ、そうだ、私一応設定があったので、どういう設定にしようかな…」
「えーっと、確か前世の記憶が完全にある別の人間の設定なんですよね?」
「そんな感じです!」
「そしたら、前世の記憶を頼りに前世の時の師匠を探したら、その師匠はまだ生きていて、感動の再会を果たした的な感じでいいんじゃないですか?」
「あ、いいですね! 担当の人にそう言う設定で大丈夫か聞いてみます!」
「わかりました。ただ一つ、問題があります…」
「な…なんでしょう?」
「その設定に合わせた演技を俺が果たしてできるのかが非常に怖いです」
「あはは(笑) アークさん頭いいしきっと大丈夫!」
「アークならできるのか……?」
「あはは(笑) やっぱりアークさんと話してると安心します!」
「それならよかったです! 俺もゆきはさんと話していると、落ち着くのになんだか元気になります」
「え…あ……えっと…あ、ありがとうございます…」
「ではちょっと担当の方に聞いていただいて、結果はLIMEあたりで教えてくださいー」
「あ、はい、了解です! ありがとうございました!」
「ありがとうございましたー」
そう言って、ディスボードを終了した。
そうして、次の日『オッケーだそうです! あと他の配信者の件もありがとうございますと言っていました!』と雪菜さんからメッセージが届いたので、『了解です』と返した。
こうして、白風あげは時代の「教えてアーク先生!プラチナへの道」は、転生後の日向ゆきはが引き継ぎ復活することなった。




