【中里雪菜視点】悩ましい
「それじゃあ自己紹介お願いしまーす!」
「こんゆきー! 前世の記憶がある転生者、日向ゆきはです! よろしくお願いします!」
「リアルに前世の記憶がある転生者って聞くとウケるねー(笑)」
「そこはあまり掘らないでもらえると嬉しいですー(笑)」
「あはは! んじゃ今日はナナイロで今話題の転生者日向ゆきはちゃんとOPEXやっていきたいと思いまーす!」
「よろしくお願いします!」
転生してから2週間程経った。
あれから、ナナイロの色んな先輩方にお誘いいただき、色んな方と毎日コラボ配信を行ってきた。
皆さん優しい方ばかりでよかった…。
転生して一つ大きく変わったのは、コラボ配信ではOPEX以外の他のゲームに呼んでいただく事も多く、一人でやっていた時よりゲームの幅が広がった。
おかげで新しく覚えなきゃいけないことが山盛りなんだけど…。
「ゆきはちゃんさー、ランクどこまで目指してるのー? あ、ここにライトあるよ」
「そうですねー。プラチナまでと思ってたんですが、最近伸び悩んでますね。 あ、いただきます!」
「あれ、転生前にやってたやつはやらないの?」
「プラチナ道ですか?」
「そうそう」
「どうなんでしょう。最近コメントもよくいただくんですが、事務所のルール的なものがあまりわからず…。あ、ここ敵います」
「まぁあたしもあんまりわかってないんだけどねw それやろっか!」
「オッケーです! どうなんでしょうかねぇ」
最近OPEXは少し伸び悩んでしまっている。
コラボ配信で色んなゲームをやれているのはいいことなのだが、OPEXにさける時間がその分減っており、この前ランク配信をしたときは配信を始める前よりポイントが下がってしまったぐらいだ。
こんなときに教えてアーク先生があると、綺麗に方向修正してくれるんだけど、今はそれがない。
非常に難しい。
OPEXのランク配信を増やせば、色々前教えてもらっていたことに気づいたりもするのだろうが、今はナナイロの先輩方と一緒に何かやるのがいいタイミングな気もする。
だってこんなに誘ってもらえるのは、きっと今だけだ。
私が転生告知で話題になったからってだけだと思う。
登録者数は先輩方のおかげで一気に10万人を突破している。
んー…。私が悩みながらOPEXをプレイしていると、私のコメント欄では、
『ゆきはちゃん、今の先に移動じゃない?』
『教えてアーク思い出して!』
「あーー! そうだったー!」
「どうしたの?」
「あ、いや、コメント欄で今のところは先に移動じゃないかって言われて」
「へぇ、そっちの方がいいの?」
「あの場所は右下から敵が来やすいから、よほどじゃない限りは先に移動して丘上に行きたい。って言われてたんでした!」
「あぁ、なるほどね!」
そのまま2時間ほど配信を行って、その日のコラボ配信は終了した。
私はお茶を一口飲むと、今度はオンラインMTGのURLを開いた。
転生してもう一つ大きく変わったこと。
それは事務所の人との打合せ!
「ゆきはさんお疲れさまー!」
「お疲れ様です! 夜になってしまってすいません!」
「全然問題ないよー! それでデビュー記念の相談なんだけど、ボイスは難しい?」
「私、声優とかじゃないので、ちょっと自信ないんですよね…」
「そっかー、ボイスがやっぱり視聴者さん一番喜ぶんだよねぇ」
「そうですよね…。皆さんやられてますもんね…」
「んーそうなんだけど、無理もさせれないから、何か他の物にしようか? マグカップとか」
そう。
転生告知で話題にもなったので、デビュー記念に何か出さないか? と相談されたのだが、ボイスが第一候補で、ものすごく悩んでいるのだ。
だって、シチュエーションボイスなんてできる気がしない…。
あと、すごく恥ずかしい…。
でも視聴者さんはそれがいいというのもわかっている。
だからすごく悩んでしまい、今まで決定できずにいた。
「流石にそろそろ決めないと、日が経ち過ぎちゃうからさー」
「そうですよね…」
「本当無理しなくていいよ?」
「そ、そうですか…。すいません今回は他の物でお願いできますか…?」
「オッケー分かったよ! マグカップとアクリルキーホルダーだとどっちがいい?」
「…マグカップですかね?」
「わかったよー! 今日はそれを決めて欲しかった感じだからありがとね!」
「あ、はい、すいません! ボイスは覚悟出来たらお伝えしますので!」
「はい、わかりました! そんな悩み過ぎないようにね!」
「ありがとうございます」
「あ、そうだ、コメント欄とかでも結構言われてるしさ、教えてアーク先生やってもいいよ?」
「え、本当ですか?!」
「うん、アークさん限定ね! それでさ、もしよかったら残り1枠他の配信者いれてもらってもいい?」
「いいですけど??」
「本当ーー!!! いやーOPEX教えてくれてしがらみない人探してたんだよねー!!!」
「そうだったんですね!」
「しかも、アークさん話し方も優しいし言葉遣いも綺麗だから、配信者の視聴者さんも荒れることないだろうし!」
「それは確かにそうですね!」
「同時配信OKする代わりに、タダってわけにはいかないかな…?」
「聞いてみないとわかりませんが、多分大丈夫だと思いますよ! なんかお金もらったらふざけたりできなくなって、楽しくなさそうだから嫌だって前言ってましたし」
「そっかー! ちょっと聞いてみて!」
「了解しました!」
「じゃあ何かわかったらLIMEで連絡してー」
「はい、お疲れ様です!」
「お疲れさまー!」
そう言うと、太田さんはMTGルームから退出した。
やったー!
教えてアーク先生ができるのは凄くありがたい!
今の配信状況でプラチナを狙えるかもしれない!
なんかアークさん頼りみたいな感じだけど、正直まだまだFPSというゲームジャンルへの理解が高いとは思えないから、もう少し教えて欲しい。
私も前より登録者多いし、アークさんにもきっとメリットあるはず!
どうしよう断られたら…。
ダメだダメだ!
こんなところで後ろ向きになってちゃいけない!
とりあえず相談してみるしかない!!
私はLIMEで湯月くんに連絡した。
『湯月くん、お久しぶりです! ちょっとディスボードでご相談したいのですがどこかでお時間いただけませんか?』




