雪菜さんらしいなぁ
次の日俺が起きてリビングに向かうと、莉乃愛は朝ごはんを食べていた。
「おっはよー」
「おはよう」
「あっくんも朝ごはん食べればいいのにー」
「いや、俺は今何か食べれるような感じじゃないから…てか、いつも思うけどりのあ朝から凄いね」
莉乃愛はご飯のおかずに鮭を食べつつ、デザートにパンという布陣。
よく見る莉乃愛の朝ごはんだ…。
「んー、普通にお腹すかない?!」
「いや全く…」
「やっぱり朝はご飯とパンだよねー!」
と莉乃愛は言っているが、到底理解できない…。
ご飯とパンはどちらも主食じゃないのか…。
俺はそんな莉乃愛を横目で見つつ、コーヒーもらう。
「あっくん、明日は10時出発ね!」
「あ、うん…」
やっぱりデートと言われたやつは生きているのか…。
「ごちそうさまー! んじゃ明日よろしくねー!」
そう言って、食べ終わった食器をキッチンに持っていき、莉乃愛は自分の部屋に行ってしまった。
デートなんて本当どうしたらいいんだよ…。
特にどこに行くか考えておけとかは言われていないから、莉乃愛が活きたい所に行くんだろうけど…。
でも、ああなった莉乃愛は止められないし、もうなるようになるしかない。
俺はコーヒーを飲み終えると、部屋に戻りパソコンを起動した。
今日は特に予定もないので、ソロのランク配信をしよう。
そんなことを思いながら、ネットを見て自分の配信アーカイブのコメントなんかを見ていると。白風あげはさんの動画がレコメンドされていた。
そう言えば、あげはさんの動画、しっかりみたことあんまりなかったな。
そんなことを思って、目についた動画を見だした。
『やっほー!白風あげはです。今日は昨日に引き続きメインクラフトでお城づくりを続けていきたいと思いますー。よろしくね』
動画に巫女さんっぽい衣装の可愛い女の子が映っており、そのアバターが動いてる。
『それでね、学校の友達がさ、元彼と同じところ行くぐらいならって、無理やり今の学校に変えたんだって。すごくない? 普通それだけで学校決めちゃうかな?!』
そんな友達がいるんだ、あげはさん…。
なんだか莉乃愛みたいな行動力の人だな…。
コメント欄では、
『まぁ高校で超高偏差値とかじゃないならありえる』
『あげはちゃんはなんで今の学校?』
『何の勉強してるの?』
と言われている。
『何の勉強してるかは秘密でーす!』
と、あげはさんはそう言いながら、アバターがニコッと笑った。
『あ、そう言えば私ついにOPEXダウンロードしたんですよ!』
と、言うと、コメント欄は、
『お、ついに?』
『FPSやったことあるの?』
『初心者にはきつい』
と書かれている。
『FPSやったことないんで、初心者になるから、皆に見せれる日が来るかは、正直定かではないんですけど、あまり期待せずに楽しみにしててください!』
なるほど。
この頃から少しずつやってはいたのか。
でもFPS初心者の子に、OPEXは中々ハードだよなぁ…。
スマホで操作できる、簡易FPSとかのやつとかで始めた方がいいとは思うけど、でもそんなことわからないもんなぁ…。
そんなことを思いながらボーっとあげはさんの配信を見ていた。
雪菜さんの時は、もっとなんかお淑やかな感じが全面に押し出てるけど、あげはさんの時は、あのままの優しい声で元気に話すって感じだ。
しかも雪菜さんが努力家であまり隠し事をしていない感じだからか、視聴者さんとの一体感もすごく高い。
あげはワールドだな。
なんだかあげはさんの動画に積極的に参加している人は、ゆっくりとした優しい空間に連れていかれているようなそんな感じだ。
雪菜さんらしいなぁ。
俺もOPEX教えていても、雪菜さんは優しい。
回線落ちしちゃった野良の人をずーっと待っていたりもするし、あげはさんのことを知っている人にゲームのチャットでコメントされると、しっかり全部返してる。
SS撮りたいと言われれば、キャラで一緒に映ったりもしてる。
これはきっと雪菜さんがあげは用に作った性格じゃなくて、本当にこういう性格なんだろうな。
それであの美少女で、スタイルもいい。
もう顔バレなんてしたら、どうなるんだろ…。
声優でもないから、SNSでミスとかしない限り、そうそうバレなそうではあるけど、視聴者さんもあげはさんの性格大好きだろうから、悪い方に転ぶと犯罪が起きそうだな…。
良い方に転ぶと、そっちも犯罪の可能性が…。
莉乃愛もそうだけど、美人って本当に大変なんだな…。
まぁナナイロに移籍すると恐らくもう一緒にゲームとかはできないだろうけど、俺はこれからもできることで応援していこう。
OPEXもナナイロへ移籍するまでになっちゃうだろうけど、出来る限りの事は教えてあげたい。
プラチナは流石に無理だろうなぁ…。
俺はそんなことを思いながら、あげはさんの動画を閉じ、ソロ配信の準備をして、ランク配信を開始した。
そして次の日、起きて一応外に出れるように着替えて、コーヒーを飲みながらパソコンで色々調べたりしていたら、
「あっくんいくよー!」
と、莉乃愛が言いながら、バンッとドアが開いた。
莉乃愛は、多分ノックをすることは出来ない仕様になっているんだろう…。
これ、俺さ、それこそ変なことコソコソやったりできないよね……。




