莉乃愛のいる生活
白風あげはさんの中の人、中里雪菜さんから相談されてから数日。
俺は、雪菜さんの上達に触発されて、自分がおろそかにならないようにしないとと思い、ソロでランク配信をやったりした。
そのおかげか女性配信者の皆様のおかげか、10,000人以降も登録者数は増え続けている。
そして今日、相談に乗って以来初めてのコーチング配信の終わりに、あげはさんから少し話したいと言われた。
「おつかれさまですあげはさん。」
「おつかれさまです! アークさん今日もありがとうございました!」
「いえいえ! ショットガンも少しずつうまくなってますよ!」
「そうですかね…まだまだ接近戦焦っちゃうんですよね…」
「まぁそこは慣れなんで、今度練習しましょう!」
「了解です! それで、お話ししたいことなんですが」
「はい、なんでしょう?」
「……白風あげはは転生してナナイロ所属になることになりました!!」
「おーーー!! おめでとうございます!!」
「ありがとうございます!」
「でも、転生なんですねぇ。それもそうなのか。転生以外で移籍的なの見たことないし」
「いや、それなんですが、活動中の人の引き抜きは初めてだと事務所の方は仰っていて、転生になったのは同じあげはという名前の人がいるからってのが理由なんですよ」
「あー、なるほど。確かにがっつり活動中の人の所属移動って見たことないかも。そもそも炎上したとか、伸び悩んだとかそんな流れになるから転生するのか」
「詳しいことはよくわからないですが、ただ私今そこまで伸び悩んでいなくて、炎上もしてなくて、転生する理由がないんですよ。」
「確かに、いわれてみたらそうですね。でも同じ名前は流石にどうしようもないですね…」
「そうなんです、それで、ナナイロの人に一つお願いしたんです。白風あげはの最終配信で転生を告知したい!って。それでオーケーがでたんです!!」
「おー、なんというか斬新ですねーー。転生の告知、転生の告知…ぶふっ」
「なんで笑うんですかーーー」
「いやだって想像してくださいよ。よくあるアニメで転生するときって、魔法陣とかで連れてかれるじゃないですか? あれが、「私今度転生して〇〇になりますー! ××日だよ!」みたいな感じになるとうけませんか? なんて都合のいい魔方陣だと…(笑)」
「いや、それを言われれば、ふふ、面白いんですが、私の場合は純粋にリスナーさんをだましたくないだけなんです!」
「わかってますよー! あげはさんのリスナーさんいい方ばっかりですもんね!」
「そうなんです!」
「あげはさん優しいですし、きっと皆さん受け入れてくれると思いますよ!」
「そうだといいんですが、少しドキドキです!」
「そりゃそうですよねー」
「また、詳しいことが決まりましたらお伝えしますので、アークさんも最終配信来てくださいね!」
「了解です」
「では、今日もありがとうございました!」
「ありがとうございましたー」
そう言って配信を切りゲームを切った。
あげはさんはナナイロとなると、いよいよ大物配信者に近づいていくんだろうなぁ。
俺ももっと登録者数伸ばすかなんかしないとなぁ。
俺は入室禁止のホワイトボードを下げて、お茶を取りにリビングに行こうとすると、ガチャっと莉乃愛の部屋の扉が開いた。
「あっくんゲーム終わったー?」
「あ、うん。うるさかった?」
「全然大丈夫だよー! お風呂どうする? 先はいる?」
「あ、りのあ先はいっちゃっていいよ」
「あ、本当? んじゃ先はいるねー!」
莉乃愛はそういうと部屋に戻っていった。
俺はリビングでお茶を取り、部屋に戻って勉強をしていると、部屋のドアが開いた。
「あっくんお風呂いいよ!」
と頭にタオルを巻いたお風呂上がりの莉乃愛が言った。
うー…。
莉乃愛のパジャマ姿はなんかこう凄い…。
ピンク色でなんか少しもこもこしたトレーナーみたいなのに、同じ色のモコモコしたショートパンツ。
スタイル良すぎでしょ…。
「あ、う、うん。わかった、ありがと」
「あーい!」
「あ、りのあノックしてね」
「あ、ごめん! 私物心ついてから、誰かと一緒に暮らすの久しぶりでさ!」
そう言うと、莉乃愛は開いている扉をノックして出ていった。
ノックの意味…。
そして俺はパソコンをスリープモードにして、パジャマのジャージとかを持って浴室に向かう。
俺は脱衣所で、着ていたTシャツを脱ぎ、すかさず洗濯物のカゴに放り込む!!
だってさ、普通にだよ? 莉乃愛の下着がポーンって洗濯物のカゴの上に置かれてるんだよ?!
莉乃愛の前にお風呂に入ればいいんだけどさ、俺が使った後に莉乃愛ってのもどうなの?!
本当正解がわからなくて、誰にも相談できないし、一旦は俺が後に基本的に入るようにして、俺の洗濯物をすぐに放り込み出来る限り見ないようにしている。
ネットの掲示板で相談でもしようかな…。
そしてお風呂から上がり、俺は部屋に戻り勉強の続きをする。
すると今度は珍しくノックされたので返事をすると莉乃愛が部屋に入ってきた。
「ねーねーあっくん、ちょっと来て! お母さんがさ録画した番組が見たいんだけど、見つからないんだって」
「えぇ…録画してないんじゃないの?」
「わかんない!」
「もう…」
俺は莉乃愛についてリビングに戻ると、リモコン片手に「うーん」ってなってる母さんがいた。
「ちゃんと録画したの?」
「したと思うんだよねー」
「どんなやつ?」
「韓国ドラマー」
「どれちょっと貸して」
俺はそう言って、レコーダーの録画リストを見るがない。
俺は次にテレビの方のリモコンを持って、そっちの録画リストを見る。
「これじゃないの?」
「あー!! それそれ!」
「テレビの録画機能使ったらこっちだって言ったじゃん…」
「あー、そうだったわ!」
「えー! テレビに録画機能なんてあるんだ!」
「最近のテレビは何でもできるよ? 動画だって見れるし」
俺はそう言うと、テレビのリモコンを操作して動画サイトを開いた。
「えー! 本当だー! あ、てか、お母さんこれ見ようよ! この人達面白いから!」
「そうなの?」
「そうそう!」
そう言って、莉乃愛は母さんの横に座り動画を再生しだした。
俺はとりあえず解決したし大丈夫だろうと思い部屋に戻った。
莉乃愛が家に来てから、莉乃愛だけじゃなく両親との会話も増えた。
莉乃愛はもう底なしにフレンドリーなので、親父も母さんもなんでも話していて、それに俺も巻き込まれていく。
これまでは、挨拶以外は一日に一度も親と会話しないなんてざらだった。
だって用事がない。
でも莉乃愛は用事がなくても話してる。
そして用事がなかったはずなのに話している中で用事が出来て、俺のところに来る。
なんか一気に生活が変わった。
別に喧嘩したり無視したりしてるわけじゃなかったけど、母さんの言うように明るくなったのは間違いない。
まぁ俺は嫌な気がしているわけじゃないし、何より両親ともに楽しそうだからその点は莉乃愛に感謝だ。
もうなんだか莉乃愛のいる生活が俺の当たり前なんだなーと、ゲーミングチェアに座りながらボーっと俺は思っていた。




