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夜の業界の教育

翌朝起きると、莉乃愛はもう起きていて、




「おはよー」




と、挨拶してきた。




「お…おはよう」




と、挨拶を返すと、




「あら? あらた挨拶できるんじゃん~」




と、母さんが話しかけてきたので、




「り…りのあだから…」


「あらあら~~~? りのちゃんじゃなくてりのあになったの~~~~???」


「ふふーん! 敬語禁止、普通に喋る、りのあと呼ぶって昨日約束したんです!」




と、莉乃愛がドヤっとしながら言った。




「ふふふ、それはよかったわ~」




母さんはそんなことを言いつつ、ニコニコしながら朝食を作っていた。




「あ、あらた。明日土曜で休みでしょ? 予定なんか何もないと思うけど空けておいてね? 部屋の残りの掃除はお母さんとりのあちゃんでやるから、明日家具買いに行くから」


「う…まぁ予定はないけど、それ、おれ必要??」


「なにいってんのよ。こういうサイズとか空間的なことあんた得意でしょ。わたしとりのあちゃんは好みを選ぶだけ。サイズを考慮し問題ないかを考えるのはあんたの仕事。 当然でしょ~」




と、一体何が当然なのかわからないが、決定事項のようだ。


確かに空間把握は立体パズルみたいなもんだから、得意は得意だけども…。




「…わ…わかったよ……」




配信どうしよう…。


そもそもりのちゃんがいるときに配信できるのか???



ま…まずい! 今日あげはさんとのコーチング配信の日じゃん!!


俺はどうすべきか…と考えながらコーヒーをもってダイニングテーブルに座った。


すると、親父が、




「あらたー、りのあちゃん、昨日遅くまで片付けしてたから話せなかったけど、どうするかが決まったよ」




話しかけてきた。




「おお、そうなんだ。どうするの?」


「まぁ結構簡単な感じで…」




と親父が話した流れはこうだ。




1.まず事前に、莉乃愛のお兄さんのお店の店長さんが、お兄さんを呼び出し、事情を説明しこっちの味方にする。

2.お兄さんから、今回の問題のホストの人に、まぁなんだ。要は妹がいるときに家に連れていくからやっちゃっていいから、売上を回してほしい。という取引を持ちかける。

3.恐らく100%乗るはずなので、乗ったらしかるべき日に家にそのホストと一緒に帰る

4.莉乃愛はもう少しで帰ってくるということにし、家で待ってもらう。

5.そして、店長さんや副店長さん、他のグループのお偉い人や、例の会長さんが家に行き、あとは店へ連れて帰り教育する。




と、いうことだ。


莉乃愛がいないところで何かをやろうとしても逃げられる可能性があるし、始めから店だと知らぬ存ぜぬでしらを切る可能性があり、家に入ったという現行犯的な感じでやった方がダメージは大きいだろう、ということでこういう流れになったらしい。



でも、本当にそんな取引にのるのか? 莉乃愛のお兄さんが身内を売るような話なのに、不信がらないのか?



と親父に質問したところ、悪知恵の回るタイプだから、自分のお客さんの連れとかを紹介して、紹介したことにするはず。


そもそもどんなお客さんかとかどんな売上をとかを指定してなかったはずだと考え、タダでやれると考えるはずだと。


そして、家族云々はそのホストは何も不審がることはないと、会長さんは言っているらしい。



なるほど。


でも、教育って何するんだ…。


夜の業界の教育こわ…。




「おれじゃない」とかごねられても困るから、その現場に莉乃愛も来て欲しいということだそうだ。



一連の流れを聞いた莉乃愛は、




「問題ありません。いきます」




と、親父に回答した。




「朝から物騒な話でごめんねー。んじゃ、具体的な日が決まったら教えるね。もちろん新も来るんだぞ?」


「ああ、流石にそれはわかってる」


「あっくんありがとう」




そうニコッと、莉乃愛は笑いかけてくれた。



いやー、やばいって。おれリアルはわからないから、本当一般論がわからないけど、衝撃的な美人が間近で笑いかけてくれるって破壊力高すぎでしょ。


その、背景から出てるキラキラオーラで失神する人いるって絶対。




その後、コーヒーを飲み終わると、俺はいつも通りカップをシンクに置いて、部屋に戻り着替えて学校に行った。








そしてその日の帰り道、100均でホワイトボードを買ってきた。


配信中は、ホワイトボードに入室禁止と書いてドアにかけておく。


これなら流石に莉乃愛も入ってくることはないだろう。





そして先に夜ご飯を食べて、あげはさんと予定の時間になったので、俺はディスボードにinした。


しばらくするとあげはさんも入ってきて、




「アークさんお疲れ様ですー」


「お疲れ様ですー」


「今日もよろしくお願いします!」


「はい」


「そろそろ接近戦の練習しなきゃかなぁと思うのですが…」


「そうですねぇ、少しだけやってみましょう! でもいつもの立ち回りも忘れないでくださいね!」


「はい! それじゃあ配信付けますね!」


「はい、俺も配信します」


「あ、アークさん、配信終わったら少し時間ありますか?」


「はい、大丈夫ですが?」


「少しご相談したいことがあって!」


「わかりました」


「じゃあ配信開始します!」




そう言って二人で配信を開始した。

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