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【中里雪菜視点】寿転生

「こんゆきー! 今日は皆さんに、本当に本当に重大なお知らせがあります」





湯月くんと婚約ということになってから、4年ほど経ち私は22歳になった。


湯月くんは、私が一方的に破棄できるような婚約締結書を弁護士さんに依頼して作ってきた。


破棄なんて絶対しないんだけどね…。


しかし、まさか契約書を持ってくるなんて思ってなくてびっくりしたけど、なんだからしいなと思って可笑しくなった。



事務所の人にもお父さんとお母さんにもちゃんと伝えて、時が来たら結婚するつもりだと話しておいた。


それまでは、彼氏彼女でもない。


だって、彼氏がいる状態だと私、多分日向ゆきははできない。


別に視聴者さん達は全員彼氏! とかそう言うんじゃないけど、視聴者さんはそういうのは求めてないと思う。


まだまだやりたいこともあったし、なんだか時代的にあり得るのか? とは思ったが、契約書があるから大丈夫ですよと湯月くんに言われ、本当にお付き合いはしていない。


たまに湯月くんにお弁当を作っていくが、本当それぐらいで、他は何も変わっていない。



直人くんが社長で、莉乃愛ちゃんがRinoで、私は日向ゆきはとYuki、そして華蓮ちゃんがマネージャー。



アークさんはもう最近はほとんど配信してない。


それこそ1年はしてないんじゃないかな?



今とりかかってる、なんかアニメみたいなディスプレイが実現してしまいそうだと、もうそれの事ばかり。



アークとしての配信のことどころか、私のことだってそのことを考えている時は頭の片隅にもない。


まぁ、お弁当を持って行って、その姿を横から見ているだけでも、ちょっと幸せなんだけど…。




そして先週、湯月くんと斎藤教授は世界初のホログラムディスプレイの基礎理論が完成したと湯月くんから連絡があった。


後は並行していて進めていた、企業向けの開発パッケージの準備だけということらしい。




それを聞いて私はいよいよその時が来たかと決意した。







「こんゆきー! 今日は皆さんに、本当に本当に重大なお知らせがあります」




『ゆきはちゃんまさかだよな!』

『いやだー!!!!!!!!』

『聞きたいような聞きたくないような…』




3日前から配信を終わりにして、今日のお知らせ配信のリマインダーを設定した。


私は今日、日向ゆきはを引退します。


半年ほど前に、バーチャル配信者としてやりたいと思っていたことは全てやって、やりきったから、湯月くんのキリがいいタイミングで結婚したいと皆に相談した。


そしてそれが、ホログラムディスプレイの基礎理論が完成したらと言うタイミングだった。




「長い方はもう6年強でしょうか。その間色んな事がありました。動画配信の右も左もわからない頃から、OPEXの初配信で失敗して、ゆきはに転生して…」




『まじで辛い』

『あったなぁそんなこと』

『やばい泣けてきた』




思い出したらどんどん涙が出てきた。


本当にいろんなことがあった。


そして本当にこの視聴者さん達に支えられた。




「OPEXの大会に出て、ゴースティングと戦ったり…ズッ。事務所のいざこざで事務所が変わったり…Yukiって公表して事件が起こったり……ズッ」




『知ってるよ俺等も知ってる!』

『やばいまじで涙出る』

『ゆきはちゃんー!!!!!』




本当に皆自分の事のように笑ったり怒ったり悲しんだりしてくれて、本当に暖かい人達だった。




「本当に、本当に、本当に…ズッ………。本当に皆さんに支えられてきました…ズッ…。皆さんがいなければ、ここまで頑張ってこれなかったと思います…」




『涙出てきたから電車降りた…』

『涙涙』

『本当まだ一緒に遊ぼうよ……』




日向ゆきはは現在登録者103万人。


Vゲージで3番目に登録者の多いバーチャル配信者になった。




「本当に皆さんには感謝…しています…ヒック……ズッ…。ですが、皆さんにお知らせいたします…ズッ」




『うわああああああああ』

『どうすればいいんだああああああ』

『涙が止まらんwwwwwwwww』





『私日向ゆきはは、本日この配信を持ちまして……………………バーチャル配信者を引退します。皆さん本当に本当に今までありがとうございました!!!』




『無理だああああああああああああああああ』

『ゆきはちゃん涙』

『頼むうううううううううううう』




もうさっきから涙が止まらない。


これまでのバーチャル配信している時に励まされた皆さんのコメントも涙であんまり見えない。


本当に色々あったな…。


楽しいことばかりじゃなかったけど、本当にバーチャル配信者やってよかったな。


もうやりきった。




「…ズッ……これからは…Yukiとしての活動を多少は継続するつもりではありますが……基本は……結婚して表舞台には立たなくなると思います!!!」




『まさかの結婚?!?!?』

『あれだけ配信してて彼氏いたの??????』

『結婚?!?!?!?!?!』




「いえ、お付き合いしている人はもちろんいません。皆さんにそんな嘘はつきません…。だから、全然そういうことは高校の時から今日までしてきませんでした。」


「ですが、私が、全てをやり切ったと思って、もしその時に私が結婚してもいいと思ったら結婚してもらう約束はしました」




『まさかの婚約?!?!』

『今の時代にそんなガチ目な婚約ある?!』

『ええええええええ?!』




「ですので、私日向ゆきはは、結婚するのでバーチャル配信者を引退します!! 皆さんにそれを隠して日向ゆきはをやることは私にはできません。私は皆さんには嘘をつきたくないんです!」




『まさかの寿でリアルへ転生www』

『寿転生wwww』

『おめでとう!!!!!!!』




「本当に皆さんありがとうございました! 日向ゆきは今日で終わりですが、Vゲージには今では多くのバーチャル配信者さんが所属してくれています!!! 是非これからも皆を応援してあげてください!」




『寿転生は新しすぎるwwwwwww』

『悲しいけどおめwwwwwww』

『最後までゆきはちゃんだなwwww』




「これまで皆さんと一緒に過ごせて楽しかったです!!!!! 本当にみんな大好き!!!!」




『俺達もだ!!!!!』

『気が向いたら誰かの配信出てよ!!!!』

『てか相手誰????』




「…えっとですね……お相手はですね……お呼びしましょうか…?」




『やべーー誰かわかったかも』

『あいつしかいねーな』

『まじか…』




「…一応繋ぐかもとは言ってあるんですが……」




『まぁ一応確認しようぜお前ら』

『言いたいこと言おうぜ』

『間違いねぇ』




「…えっと、ではお呼びしますね…? お手柔らかに……」




私はそういうと、ディスボのチャンネルにアークさんを招待した。




「皆さんお久しぶりです。アークです」




『やっぱりお前かwwwwwww』

『アークお前ゆきはちゃん泣かせたらまじで〇すからな!!!』

『浮気とかすんなよ!』




「あ、え、えっと、色々もちろんです。ゆきはさんがお話ししていた通り、本当にお付き合いはしていませんでしたから、なんか今の時代に似つかわしくない流れになってしまったのですが…」




『その誠実さは許す』

『俺達のゆきはちゃんおおおおおおお! おめでとおおおおおおおおお!』

『まじで泣かすなよ?』




「あ、はい…皆さんが励ましてくれた日向ゆきはさんは、責任をもって俺が次のステージ支えます!!!」




『お前言ったからな?』

『まじでちゃんとやれよ?』

『男に二言はない』




私はそのやりとりを見ていて、ちょっとからかいたくなってしまい、




「でも、この前私の誕生日忘れてましたよね…別にお付き合いしてるわけじゃなかったですからダメってことはないですけどね……」


「なっ! ちょ! ゆきはさん!!」




『お前早速やってんなwwww』

『表出ろやwwwww』

『おいwwwww』




「え、あの! もうないようにするんで! 本当に!!」


「ふふふ、皆さんありがとうございます。本当に本当にありがとうございました。配信は今日で最後なのですが、Yukiが出ていた幼馴染チャンネルの方で、日向ゆきはのアバターで一曲だけ、3人で練習してきた歌を最後に出しますので、もしよければ聞いてください」




『絶対見る!』

『本当おめ!!!!!』

『寿転生!!!!!!!!!!!!』

『いつでも戻ってきていいからね!』

『アークなんて捨ててもいいよ!』

『ぼろ雑巾用に使ってやれ!』

『卒業会場が結婚式会場にwww』

『ゆきはちゃんお疲れ様!!!!!!!!!』





と、もう画面いっぱいにコメントが流れた。


アークさんはもうボイスチャットをミュートしている。




「本当に、本当に、ありがとうございました!!!!!! 本当に楽しかったです! 皆今までありがとーーーーーーーーーーーー!!!!!!! とうっ!!」





私は最後の特別仕様の今までのアーカイブの切り抜きエンディングに切り替えた。



いっぱい涙が出たけど、悲しい涙じゃない。


この涙は皆との大切な想い出だ。


私は涙を袖で拭い、胸の所でぐっと手を握って目を瞑った。

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