返答
一体俺にどうしろと…。
華蓮さんに話しがあるからと呼ばれて会議室に向かうと、莉乃愛と雪菜さんと華蓮さんがいた。
また幼馴染チャンネルか?
と身構えたら、違うと言って雪菜さんから好きだと伝えられた。
かれこれ半年ほどドッキリさせられてるので、まだ疑ってしまったがどうも違うようだ…。
そう思うと、俺は雪菜さんになんて失礼な態度をとってしまったんだ…。
その後莉乃愛からいきさつを聞いて、さらーっと莉乃愛にも好きだと言われるし…。
そして、再び雪菜さんに好きだと伝えられた。
本当どうしたらいいのこれ…。
雪菜さんのことが嫌いなのかと聞かれたら、そうではないと即答できる。
反対に好きなのかと聞かれると、回答できない。
莉乃愛についても同じだ。
そもそも俺と同じ世界の人だと思ってなかったからな…。
俺が好きだの嫌いだのなんておこがまし過ぎて、考えたこともなかった…。
OPEXとプログラムのことしか考えてなかったというのもあるけど…。
しかし、どうも本当に幼馴染チャンネルではなく、本当にこれから先もみんなで一緒にいるために必要なことだと思っての事のようだ。
たしかに、か、仮に二人が俺のことを好きだと仮定して、俺が今まで通りそれを知らないとすると、色んなタイミングで二人は思っていることを言わないことになる。
そういうのは消えずに積み重なっていくから、確かに莉乃愛や雪菜さんの言うように、どこかで壊れる可能性が高い。
しかも、積み重なった量によっては、完全に修復不能になるだろう。
しかし、それも二人が俺のことを好きだったらと仮定したらの話だが…。
考えたこともなかった…。
まじでこれどうしたらいいの………。
「あっくん、固まってないでなんかないの!」
「え、あ、うん…俺二人の事そういう風に見たことなかったから…」
「知ってる!」
「知ってるよ…」
「えっと…その…」
「あっくん、女の子がここまでちゃんと言ってくれたのにうやむやにするはなしだよ!!! そしたら結局いつかダメになるでしょ!」
「今回は引き分けはありません! 屁理屈もダメ!」
莉乃愛と華蓮さんがそう言った。
んー…。
でも、もしそうだとすると、三人が言うことも言われてみればわかる。
「ご、ごめんね、困らせちゃって…」
少しうつむき加減でそういう雪菜さん。
ダメだよな。
ここで逃げちゃダメだよな多分…。
「お、俺、そもそも雪菜さんや莉乃愛が、同じ世界に住んでる人だと思ってなかったのね…?」
「え…?」
「なんだろ。なんかこう、ほら俺陰キャじゃん?」
「最近は違う気もするけどね…」
「それは思う…。で、でもね、やっぱり二人ってか華蓮さんや直人もなんだけどさ、ちゃんとした光のあるところで生きてて、俺はこう暗い洞窟で生きてる感じだと思ってたの。今でも思ってはいるんだけどね…」
「そ、そんなことないよ…いっぱい助けてくれたじゃん…」
「だからね、好きとかそういうの考えたこともなかったから…もちろん雪菜さんのことは嫌いじゃないけど、好きかって聞かれるとわからないんだよ…」
「うん…だと思ってた」
「それにプログラムばっかりで、生活もまともにできない。とりのあに怒られてます」
「知ってる…」
「それでもいい?」
「…うん。私はそんな湯月くんもそんなアークさんも好きだから…」
「そっか…ありがとう」
「結婚しよう雪菜さん」
俺がそう言うと、一瞬会議室の空気が止まった。
そして、
「えーーー?!?!?!?!?! なんでいきなりそこ?!?!?!?!」
と莉乃愛が言い、
「いやいやー!!!!!! 物事には順序が!!!!!!!!!!!!!」
と華蓮さんが言った。
え?
どういうこと??
「ゆ、湯月くん…ほ、本気???」
「あ、うん。雪菜さんが良ければだけどね?」
「え、う、うん…」
「だってりのあは家族でしょ? 法律とかそういう話は置いといて、精神的に家族だってことだよね?」
俺が莉乃愛にそう聞くと、
「あ、う、うん? まぁそんな感じ?」
「それで、二人とも俺のことを好いてくれてるから、このままだとどこかで壊れてしまうかもしれないと。それは二人とも嫌で皆と一緒にいたいと」
俺は雪菜さんを見た。
「うん…」
「だから俺と雪菜さんが結婚して家族になれば、法律上は違うけど精神的には皆家族的な? え? 違うの???」
と、俺が言うと、三人はきょとんとした。
そして、暫くすると、
「どこまでいってもあっくんだったわ……」
「本当湯月くんらしい………」
「流石にびっくりしたけど、あっくんなら納得だわ………」
と三人は呆れたように納得した感じで言った。
そして三人は笑い出した。
「いやーあっくんはまじあっくん!」
「本当、なんかいつも斜め上だね!」
「まさか結婚とは思ってなかったわー!」
と三人は言って、話をつづけた。
「いや、普通はさ? 俺も好きですとかさ? 付き合おうとか?」
「なんかこう、好きだよって言われた返答なんてそんなもんじゃない?」
「もしそうじゃなかったとしても、少し時間が欲しいとかね…?」
「え、でもそれじゃあ解決しなくない?」
「いやまぁそうなんだけどさ? いきなりそこ突っ込んでくる人もいなくない?!」
「でもだよ? 雪菜さん付き合うって無理じゃない? りのあも。視聴者さんに隠し事はしない主義でしょ二人とも」
「あ…」
「確かに…」
「それにさ、今じゃないにせよ付き合うってなんか曖昧じゃない? それこそ付き合って別れでもしたら、また壊れる危険じゃん?」
「ま、まぁ…」
「だったら法的に縛った方がよくない? 俺は雪菜さんのこと嫌いになるなんて一生あり得ないし。そっちの方がなんかすっきりするし」
俺がそう言うと、見る見る雪菜さんは顔が赤くなって下を向いた。
「あっくんだわー。でたよ、この攻撃」
と華蓮さんが言った。
「でもさ、結婚したとも言えなくない?」
「まぁ、それは婚約的な? だから雪菜さんがいいかもって時を迎えたら、結婚するって感じでいいんじゃないかと思ったんだけど…雪菜さんがその時にそれでもよければね」
「付き合ってもないのに婚約するの?」
「婚約することの条件に付き合うってないと思うんだよね」
「な、なるほど…雪菜だそうだけども…」
莉乃愛が雪菜さんに聞くと、雪菜さんは少し莉乃愛の方を見て、
「り、りのあちゃんはどう思ってる…? わ、私はりのあちゃんの事も好きだから…」
「んーー! お正月が楽しそう!!!」
「わかるー!!!! えー! あたしも加わりたいそのお正月! あっくん養子連れてきて!!!」
「そんなめちゃくちゃな…」
「そ、そっか…」
「ふふふ! 雪菜言ったじゃん! わたしはもう他の人は絶対になれないあっくんの家の家族なんだって。お父さんとお母さんの事をお義父さんお義母さんって呼ばなくていい唯一なんだよって」
「うん…」
「わたしとあっくんは家族だからね! だから雪菜もこれからも一緒だね!」
「そっか…。うん、そうだね!」
雪菜さんは俺に向き直ると、
「ま、まだやりたいこととかあるから…い、今すぐは無理だけど…いずれよろしくお願いします」
そう言ってお辞儀した。
「あ、はい…こちらこそ…」
「あっくん浮気禁止だよ!!!!」
莉乃愛がそう言うので、
「しないよ…。え、浮気の定義ってなんだろ?」
俺は不安になって雪菜さんを見ると、
「え? んー…私が嫌だって思ったら浮気かな!」
と、莉乃愛みたいに腕を組んでドンッとした感じの仁王立ちで言った。
「りょ、了解しました…」
「えー、雪菜今のりのあっぽーい!!!!」
「まじ? わたしあんな感じ?」
「もう少しどやってるけどね~」
そうしてそのまま三人が楽しそうに話しているのを俺は見ていた。
わからないけど、雪菜さん本当にいいのだろうか…。
だって俺だよ?
まぁもう今更それを疑うのも失礼か…。
楽しそうに話している三人の姿を見ていると、よかったのかなと俺は思った。




