【中里雪菜視点】私の想い
華蓮ちゃんに呼ばれて、事務所に行った。
なんでもりのあちゃんと3人で相談したいことがあるらしい。
そして、もしかして動画撮ってる?! みたいに二人が話し始め、私が身構えると普通に相談があるとのことだった。
それがまさかの湯月くんの事だった。
りのあちゃんが湯月くんのことを好きなことは分かっていた。
やっぱり湯月くんだけは完全に別枠って感じだもん。
でも、改めて本人からそう言われると、そうなんだー…と思ってしまった。
そして私はどうなんだと聞かれた…。
ど、どうしよう…。
私も湯月くんのことが好きだ。
あんまり好きって気持ちがわからないけど、湯月くんが知らない女の人と一緒にいたら嫌だなって思う。
りのあちゃんや華蓮ちゃんと一緒にいる分にはあまり思わないんだけど…。
いつからかなんてわからない。
いつも助けてくれて、支えてくれて、颯爽と解決していく姿はオンラインでもリアルでも格好いい。
好きなんだなって自分で認識できたのもつい最近だ。
脅迫事件の時に、湯月くんが調べてくれてるって聞いただけで安心した時。
全然解決なんてしてないのに、それだけで安心してしまった自分を振り返って、あぁ私は湯月くんのことが本当に好きなんだなって思った。
でも、湯月くんのことを好きだと言っているりのあちゃんにこのことを伝えたら、これまでの皆との関係が壊れちゃうかもしれない…。
それは嫌だ…。
湯月くんは特別だけど、りのあちゃんも華蓮ちゃんも直人くんも私にとってはもう十分に特別だ。
脅迫事件の時だって、皆それぞれの方法で私を支えてくれた。
もし皆が何かに困ったら今度は私が支えるんだ!
そう思ってる。
そんな今の関係を壊したくない。
私がそんなことを思いながら言い淀んでいると、りのあちゃんが続けて話してくれて、華蓮ちゃんも話してくれた。
そっか…。
皆同じ気持ちなんだ…。
そして、自分の想いを隠してちゃいけない。
二人の言う通りだ。
私は中学の時にそうだったから、高校でバーチャル始めたんじゃん!
そして私は意を決して言った。
そしてどうしようかりのあちゃんと二人で考えると、なんだか笑えてきた。
だって私達がどんだけ考えても、湯月くんは絶対そんな事考えてないんだもん(笑)
そしたらりのあちゃんも同じだったようで、二人でお互いこれまでどんなことを思ってたのかなんかも話せて、なんだかすごいすっきりした。
二人と友達で本当によかった。
きっと私だけだったら、壊したくないからって何もせずにそのままで、いつか中学の時みたいに思う時が来るかもしれない。
本当に二人の言う通りだ。
そしてその後、3人で今後の事を相談した。
「あの…今日は一体なにを…?」
会議室に恐る恐る入ってくる湯月くん。
完全に撮影を警戒してる。
「あっくん今日は撮影してないよ!」
「そ、そう言いつつ実は…みたいな…」
「本当だってー! ほら、あたしもカメラ持ってないから!」
「あ、新しいパターンですね…」
「いや、そう言うんじゃないって! ほら、雪菜!」
りのあちゃんがトンっと背中をたたいた。
私は一歩前に出ると、
「ゆ、湯月くん?」
「はい?」
「あのね…………………、私湯月くんのことが好きです!!!」
湯月くんはそれを聞いて固まった。
「アークさんも湯月くんも、本当頼りになるし、いつも甘えてばっかりで、本当私はダメダメだけど…好きなんです。湯月くんのことが…」
えーー!!
なんでか涙出てきたんだけど……。
「ちょ、ちょ! り、りのあ! これは流石に…!」
「いやだから撮ってないって」
「え?」
「あっくん、動画撮り過ぎて斜に構え過ぎだぞ」
「ええ?」
「ほ、本当だよ…。動画とかそういうんじゃないの…。本当に好きだから…」
「え、ちょ、え…ガチ?」
「ガチだよ! この前雪菜と華蓮と三人で話したんだ」
「りのあと雪菜があっくんのことどう想ってるかをね!」
「それで、わたしもあっくんのこと好きなのね?」
「え、あ? ええ?」
「でもね、雪菜もきっとあっくんのこと好きなんだろうなって思ってね」
「う、うん?」
「もしこれからこのままだと、わたしか雪菜か、もしかしたら直人や華蓮だってわからない。なんか今の皆の関係が壊れちゃう気がしたの」
「…なるほど」
「だから雪菜と話してはっきりさせたの!」
「う、うん…」
「わたしはね、あっくんのこと好きだけど、家族として好きなのか男性として好きなのかって聞かれるとちょっとわからないの。だって家族じゃん?」
「そ、そうだね…むしろ俺より両親には可愛がられてるよね…」
「うん! それで考えたんだけどさ、家族と奥さんってさ何が違うの??? エッチするかしないかぐらい??」
「……」
「って感じでよくわからないので、わたしはこれからもみんなと一緒にいたいし、変な感じなりたくない!」
ふぅ…りのあちゃんの話聞いてたら落ち着いてきた…。
三人で話していた時もそうだったけど、言われると本当にわからなかったんだよね…。
え、エッチ云々もあれだけど…。
わ、私もちゃんと話さなきゃ!
「な、なるほど…」
「わ、私もねみんなと一緒にいたいの。湯月くんには、なんで私がバーチャルで配信を始めたかって少し話したじゃない…?」
「う、うん…」
「りのあちゃんと華蓮ちゃんと話して、このままだと中学の時みたいになっちゃうかもって思ったの…だからね……」
「わ、私は湯月くんのことが好き!!!」
私は少し大きな声で、目を瞑って言った。




